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第四章 対決と真実の暴露
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断罪の翌日、結界の修復が始まった。
場所は王都の中心、大聖堂の尖塔。王都の結界はここを起点に全方位に展開される。百年前に最後の聖女が張った結界も、この場所から生まれた。
尖塔の最上階は吹きさらしの展望台になっており、王都全体を見渡すことができた。冬の風が容赦なく吹きつける中、リーゼは手袋をはめた両手を天に向けた。
オルトヴィンが見守り、アルヴィンが傍らに立っている。尖塔の下には、国王をはじめとする重臣たちが見上げていた。
「準備はいいか」
アルヴィンが訊いた。
「はい」
リーゼは目を閉じた。
体の奥底にある光の泉。北方で見つけ、育て、制御することを学んだ力。その全てを、今ここで解き放つ。
深く息を吸い、意識を泉に沈める。
光が溢れた。
掌から放たれた光は、最初は小さな球だった。だがそれは急速に膨張し、尖塔全体を包み込んだ。
「これは……」
オルトヴィンが息を呑んだ。測定器の数値が振り切れている。
光の球はさらに広がった。尖塔を超え、大聖堂を超え、王宮を超えて、王都の街並みの上を覆い始める。
地上では人々が空を見上げていた。
白銀の光が天蓋のように広がっていく。薄い虹色を帯びた光の膜が、王都全体を包み込んでいく。美しかった。朝日のように温かく、月光のように清らかな光。
「結界だ……」
「結界が戻ってきた!」
「聖女様だ! 聖女様が結界を!」
歓声が波のように広がった。
リーゼは目を閉じたまま、力を注ぎ続けた。王都全体を覆うだけでは足りない。この結界を大地に根づかせ、自律的に維持される恒久的なものにしなければならない。
北方の境界壁で学んだ技術を応用する。古い結界の骨格に新しい力を流し込み、大地と繋げる。王都の下に眠る古代の魔力線と接続すれば、リーゼがいなくなった後も結界は維持される。
だがその作業は、想像を絶する負荷だった。
体中の力が絞り出されていく。視界が白く染まり、耳鳴りがする。手足の感覚が遠くなっていく。
あの夜と同じだ。境界壁で倒れた時と。
だが今回は違う。あの時より力の扱いを知っている。限界を知っている。そして、限界を超えた先にあるものも。
「リーゼ!」
アルヴィンの声が遠くに聞こえた。
もう少し。あと少しだけ。
魔力線との接続が完了した。結界が大地に根を下ろし、自律的な脈動を始めた。
リーゼは手を下ろした。
王都の空に、白銀の天蓋が輝いていた。百年前の聖女が張ったものと同じ、いやそれ以上の結界が、王都を包んでいる。
リーゼの足が崩れた。だが今度は地面に倒れる前に、腕が受け止めた。
アルヴィンだった。
「倒れるなと言っただろう」
声は怒っているようで、安堵に満ちていた。
「すみません。でも今回は、ちゃんと意識があります」
リーゼは笑った。疲労で視界がぼやけているが、目の前のアルヴィンの顔ははっきり見える。
「やりました」
「ああ。やり遂げた」
地上から万雷の歓声が響いてきた。王都の民が泣き、笑い、抱き合っている。
結界が戻った。百年ぶりの聖女の奇跡。この日は後に、エルステリア王国の歴史書に刻まれることになる。
尖塔の階段を降りると、待ち構えていた人々に囲まれた。
オルトヴィンが深く頭を下げた。国王が目を潤ませて感謝を述べた。重臣たちが口々にリーゼを称える。
だがリーゼの耳に最も響いたのは、尖塔の外で待っていたエルザの声だった。
「リーゼ様、無事でよかった。本当に……」
エルザは泣いていた。ハインリヒでさえ、普段の飄々とした表情を崩して安堵の息をついていた。
「ご心配をおかけしました」
「心配しないわけがないでしょう。公爵様なんか、尖塔の上でリーゼ様が力を使い始めてからずっと拳を握りしめていたんですよ」
ハインリヒの言葉に、アルヴィンが「余計なことを言うな」と低く唸った。
だがリーゼにとって最も大切だったのは、歴史に名を残すことではなかった。
腕の中で支えられながら、リーゼはアルヴィンの胸に額を預けた。
「帰りましょう。北に」
「ああ。帰ろう」
その約束だけが、今の自分に必要な全てだった。
場所は王都の中心、大聖堂の尖塔。王都の結界はここを起点に全方位に展開される。百年前に最後の聖女が張った結界も、この場所から生まれた。
尖塔の最上階は吹きさらしの展望台になっており、王都全体を見渡すことができた。冬の風が容赦なく吹きつける中、リーゼは手袋をはめた両手を天に向けた。
オルトヴィンが見守り、アルヴィンが傍らに立っている。尖塔の下には、国王をはじめとする重臣たちが見上げていた。
「準備はいいか」
アルヴィンが訊いた。
「はい」
リーゼは目を閉じた。
体の奥底にある光の泉。北方で見つけ、育て、制御することを学んだ力。その全てを、今ここで解き放つ。
深く息を吸い、意識を泉に沈める。
光が溢れた。
掌から放たれた光は、最初は小さな球だった。だがそれは急速に膨張し、尖塔全体を包み込んだ。
「これは……」
オルトヴィンが息を呑んだ。測定器の数値が振り切れている。
光の球はさらに広がった。尖塔を超え、大聖堂を超え、王宮を超えて、王都の街並みの上を覆い始める。
地上では人々が空を見上げていた。
白銀の光が天蓋のように広がっていく。薄い虹色を帯びた光の膜が、王都全体を包み込んでいく。美しかった。朝日のように温かく、月光のように清らかな光。
「結界だ……」
「結界が戻ってきた!」
「聖女様だ! 聖女様が結界を!」
歓声が波のように広がった。
リーゼは目を閉じたまま、力を注ぎ続けた。王都全体を覆うだけでは足りない。この結界を大地に根づかせ、自律的に維持される恒久的なものにしなければならない。
北方の境界壁で学んだ技術を応用する。古い結界の骨格に新しい力を流し込み、大地と繋げる。王都の下に眠る古代の魔力線と接続すれば、リーゼがいなくなった後も結界は維持される。
だがその作業は、想像を絶する負荷だった。
体中の力が絞り出されていく。視界が白く染まり、耳鳴りがする。手足の感覚が遠くなっていく。
あの夜と同じだ。境界壁で倒れた時と。
だが今回は違う。あの時より力の扱いを知っている。限界を知っている。そして、限界を超えた先にあるものも。
「リーゼ!」
アルヴィンの声が遠くに聞こえた。
もう少し。あと少しだけ。
魔力線との接続が完了した。結界が大地に根を下ろし、自律的な脈動を始めた。
リーゼは手を下ろした。
王都の空に、白銀の天蓋が輝いていた。百年前の聖女が張ったものと同じ、いやそれ以上の結界が、王都を包んでいる。
リーゼの足が崩れた。だが今度は地面に倒れる前に、腕が受け止めた。
アルヴィンだった。
「倒れるなと言っただろう」
声は怒っているようで、安堵に満ちていた。
「すみません。でも今回は、ちゃんと意識があります」
リーゼは笑った。疲労で視界がぼやけているが、目の前のアルヴィンの顔ははっきり見える。
「やりました」
「ああ。やり遂げた」
地上から万雷の歓声が響いてきた。王都の民が泣き、笑い、抱き合っている。
結界が戻った。百年ぶりの聖女の奇跡。この日は後に、エルステリア王国の歴史書に刻まれることになる。
尖塔の階段を降りると、待ち構えていた人々に囲まれた。
オルトヴィンが深く頭を下げた。国王が目を潤ませて感謝を述べた。重臣たちが口々にリーゼを称える。
だがリーゼの耳に最も響いたのは、尖塔の外で待っていたエルザの声だった。
「リーゼ様、無事でよかった。本当に……」
エルザは泣いていた。ハインリヒでさえ、普段の飄々とした表情を崩して安堵の息をついていた。
「ご心配をおかけしました」
「心配しないわけがないでしょう。公爵様なんか、尖塔の上でリーゼ様が力を使い始めてからずっと拳を握りしめていたんですよ」
ハインリヒの言葉に、アルヴィンが「余計なことを言うな」と低く唸った。
だがリーゼにとって最も大切だったのは、歴史に名を残すことではなかった。
腕の中で支えられながら、リーゼはアルヴィンの胸に額を預けた。
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