妹なんだから助けて? お断りします

たくわん

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三ヶ月が過ぎ、婚礼の日が近づいてきた。

王宮は準備で大忙しだった。両国の友好を象徴する盛大な式にするため、あらゆる手配が進められている。

「エリーゼ様、ウェディングドレスの最終確認です」

侍女たちに囲まれ、エリーゼは純白のドレスに袖を通した。

鏡に映る自分を見て、息を呑んだ。

繊細なレースと真珠の装飾が施された、夢のようなドレス。これを着て、アレクシスと永遠の誓いを交わすのだ。

「お美しい……」

侍女たちが感嘆の声を上げた。

「まるで天使のようですわ」

「ありがとう」

エリーゼは微笑んだ。胸が高鳴っている。

ドアがノックされ、ソフィアが入ってきた。

「お姉様! わあ、本当に綺麗!」

「ソフィア」

「兄様、きっと感動して泣いちゃうわ」

「まさか」

「いいえ、絶対泣くわ。だって、あんなに嬉しそうな顔、今まで見たことないもの」

ソフィアは笑いながら、エリーゼの手を取った。

「お姉様、幸せになってね」

「ありがとう、ソフィア」

婚礼の前日、エリーゼは一人で礼拝堂を訪れた。

静かな空間で、母のペンダントを手に取る。

「お母様、明日、私は結婚します」

小さく呟いた。

「あなたが教えてくれたこと、全てが今の私を作ってくれました」

涙が溢れた。

「見ていてください。私、幸せになります」

「エリーゼ」

振り向くと、アレクシスが立っていた。

「明日、花嫁に会うのは縁起が悪いと言われましたが、どうしても来たくなって」

「アレクシス様……」

アレクシスはエリーゼの元に歩み寄った。

「泣いているのですか」

「いえ、これは嬉し涙です」

「そうですか」

アレクシスはエリーゼの涙を優しく拭った。

「明日、僕たちは永遠の誓いを交わします」

「はい」

「どんな時も、あなたを愛し、守ります」

「私も、あなたを愛し、支えます」

二人は抱き合い、そっと口づけを交わした。

「明日が楽しみです」

「僕もです」

婚礼の朝が来た。

エリーゼは早くから起こされ、準備が始まった。

髪を結い上げ、化粧を施し、ドレスを着る。全てが完璧だった。

「エリーゼ様、準備ができました」

侍女が告げた。

鏡を見ると、そこには見違えるような花嫁がいた。

大聖堂には、両国の王族、貴族、そして多くの民衆が集まっていた。

荘厳な音楽が流れる中、エリーゼは赤い絨毯の上を歩いた。

祭壇の前には、正装したアレクシスが待っている。

エリーゼの姿を見た瞬間、アレクシスの目が潤んだ。

(やはり、泣いたわね)

エリーゼは心の中で微笑んだ。

祭壇の前に立つと、司祭が厳かな声で語り始めた。

「本日、ここに、アレクシス・フォン・ヴェルディアとエリーゼ・フォン・アルトハイムの結婚を祝福するため、我々は集いました」

会衆が静かに聞き入っている。

「アレクシス・フォン・ヴェルディア、あなたはエリーゼ・フォン・アルトハイムを妻とし、喜びの時も悲しみの時も、富める時も貧しき時も、健やかなる時も病める時も、死が二人を分かつまで、愛し、慈しみ、敬うことを誓いますか」

「誓います」

アレクシスの声は、力強かった。

「エリーゼ・フォン・アルトハイム、あなたはアレクシス・フォン・ヴェルディアを夫とし、喜びの時も悲しみの時も、富める時も貧しき時も、健やかなる時も病める時も、死が二人を分かつまで、愛し、慈しみ、敬うことを誓いますか」

「誓います」

エリーゼの声も、確かだった。

アレクシスが指輪をエリーゼの指にはめる。

「この指輪を、永遠の愛の証として」

エリーゼも、アレクシスに指輪をはめた。

「この指輪を、永遠の愛の証として」

「では、ここに二人は夫婦となりました。新郎は、新婦に口づけを」

アレクシスはエリーゼのヴェールを上げ、優しく口づけをした。

大聖堂中に、拍手と歓声が響き渡った。

「王妃様万歳!」

「お幸せに!」

民衆の祝福の声が、二人を包み込んだ。

式の後、盛大な披露宴が開かれた。

王宮の大広間には、両国の要人たちが集まった。豪華な料理、美しい音楽、華やかな装飾。全てが、この日のために用意されたものだった。

エリーゼとアレクシスは、来賓たちに挨拶をして回った。

「おめでとうございます、エリーゼ王妃」

「ありがとうございます」

エリーゼは優雅に応じた。もう、誰も彼女を軽んじる者はいなかった。

その時、会場の隅に見覚えのある顔があった。

継母、ロザリンド、クラリッサ。そして、父も来ていた。

彼らは招待客の中でも、最も目立たない席に座らされていた。

継母は惨めそうな顔をしていた。かつての豪奢な装いは影を潜め、質素なドレスを着ている。

ロザリンドは悔し涙を流していた。自分が着るはずだった、と思っているのだろう。

クラリッサだけは、静かにエリーゼを見つめていた。その目には、祝福の色があった。

エリーゼはアレクシスに促され、彼らの元へ向かった。

「エリーゼ……いえ、王妃陛下」

継母が震える声で言った。

「おめでとうございます」

「ありがとうございます」

エリーゼは穏やかに答えた。もう、恨みはなかった。

父が前に出てきた。

「エリーゼ……いや、陛下。本当に、おめでとう」

「ありがとうございます、父上」

「私は……」

父の声が詰まった。

「私は、お前に酷いことをした。継母に騙され、お前の苦しみを見ようともしなかった」

「もう、過去のことです」

「許してくれとは言わない。ただ、幸せになってくれ」

父は深々と頭を下げた。

エリーゼの目に涙が浮かんだ。

「父上。あなたも、お元気で」

「ありがとう……」

父は涙を流した。

ロザリンドは俯いたまま、何も言わなかった。

クラリッサが前に出てきた。

「エリーゼ、本当におめでとう」

「ありがとう、クラリッサ様」

「あなたの幸せを、心から願っているわ」

「ありがとう」

二人は抱き合った。

「いつか、許してもらえるかしら」

「いつか、ね」

エリーゼは微笑んだ。

完全に許すには、まだ時間が必要だった。だが、いつかその日が来るかもしれない。

披露宴は深夜まで続いた。

音楽が奏でられ、人々は踊り、祝福の言葉が飛び交った。

エリーゼとアレクシスは、何度も踊った。

「疲れましたか」

「いいえ、幸せです」

「僕もです」

二人は見つめ合い、微笑んだ。

宴が終わり、二人は新婚の寝室に向かった。

部屋には、薔薇の花びらが撒かれ、ロウソクが灯されていた。

「ようやく、二人きりですね」

アレクシスが言った。

「はい」

エリーゼはドレスを脱ぎ、白いナイトガウンに着替えた。

アレクシスが近づき、優しく抱きしめた。

「愛しています、エリーゼ」

「私も、愛しています、アレクシス」

二人は深く口づけを交わし、そしてベッドに横たわった。

優しく、愛情を込めて、二人は結ばれた。

全てが、夢のようだった。

苦しみの日々を経て、ようやく掴んだ幸せ。

エリーゼは、アレクシスの腕の中で、深い安らぎを感じていた。

「幸せ?」

「とても」

「ずっと、この幸せが続きますように」

「はい」

窓の外では、星が祝福するように瞬いていた。

二人の新しい人生が、今始まった。

愛に満ちた、幸せな人生が。
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