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24 それはハジメテの屈辱(アミィ視点)
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「ここならあたしとふたりきりよ」
灰眼の男……異国の大使であるジルを部屋へと押し込んだ。後ろ手に扉を閉めるがあえて鍵はかけない。いつでも誰かが入ってくるかもしれないというスリリングな状況の方が興奮するし、相手への脅しにも使えるからだ。あたしのひと声でどうにでもなるとわからせるためでもある。だって、あたしは誰よりも尊い存在なんだもの。
それにしても名前を聞いたらすぐに教えてくれたし、大切なはずの聖女を置き去りにしてまであたしの言うがままについてきたし、異国の大使とは言えあたしにかかれば男なんてやっぱり簡単な生き物だと実感する。
「……外にいる騎士は?」
「あぁ、あの青髪?あれはあたしの護衛よ。あなたが何かしてあたしが叫ばない限りは中には入ってこないわ。……でも、あたしの機嫌を少しでも損ねたらどうなるかわからないけどね?うふふ」
クスクスと笑いながらそう言ってやれば、ジルはにこりと微笑みながら「なるほど……」とあたしの髪を指先に絡ませ始めた。あら、もうその気になったの?なぁんだ、もしかしなくてもとっくにあたしの事を狙ってたってわけね!あぁ、隠しルートもこんなに簡単だなんてちょっと拍子抜けだわ。でも、やっぱりあたしって正真正銘のチートヒロインなのね!ごめんね、聖女サマ?あんたの立場はもうすぐあたしのものよ。
「ねぇ、ジルはあたしの事をどう思う?」
「美しい方だと思いますよ。ですがアールスト国の王子の婚約者が、他の男と部屋でふたりきりになるのはあまりよくないのでは?」
「うふ、そんなの大丈夫よ。あたしが言わなければバレないもの。この世の男はねぇ、みぃーんなあたしの言いなりなんだから!ねぇ、わかってるのよ。あたしが欲しいんでしょう?だったらあたしの望みを叶えてくれればいいわ。それだけよ。そうすれば、極上の世界を見せてあげるわ……」
ジルは指先に絡ませた髪に唇を寄せ、すん。と匂いを嗅ぐ。その行為に“これで堕ちた”と確信した。特に今日は念入りに“あの香り”を纏わせているのだから当然か。
あたしに興味を見せた男は、必ずあたしに夢中になると知っているから。あたしの美しさにとことん堕ちるがいいんだわ。
「……望みとは?」
「うふ。あたし、聖女になりたいの。あんな冴えない不気味な女なんか今すぐ切り捨てて、あたしを新たに聖女にしてよ。この美しいあたしが聖女になった方が異国の連中だってだってきっと喜ぶわ。ねぇ、お願いよ……」
そう言ってこれまで関わって来た男たちがうっとりと見惚れてきた笑みを浮かべてやると、ジルは腕を回してあたしの体を抱き寄せた。大サービスであたしからも腕を背に回してやる。男なんて、これだけ密着すればもうあたしから離れられなくなるに違いないもの。
するとジルがおもむろに首筋に顔を埋めてくる。見境いのない猿な男共と同じくもう発情してキスでもしてくるつもりなのだろうと鼻で笑っていたら……鼻をすんすんと鳴らして、何度も繰り返し匂いを嗅いできたのだ。それはもう、何度も何度も。
……あれ?さっきも匂いを嗅いでいたのに……ちょっとしつこくない?いつもの簡単な男達なら、1度嗅いだらすぐに行動しだすのに……。
「へぇ……聖女になりたいんだ?」
「……………っ!」
首筋から、さっきの微笑みからは想像がつかないような低い声が聞こえた。その声色と生暖かい息に背筋がゾクリとして思わず離れようとしたが、ジルの腕があたしを離さなかった。そしてなにかを確かめるようにさらに鼻を鳴らし出すのた。
「そ、そうよ。だって美しくて完璧なあたしの方が聖女と言う呼び名に相応しいでしょ?だから、これは異国の為を思って言ってあげて……」
くんくん。くんくん。くんくん。
え、なに?なんでさっきからあたしの体の匂いを嗅ぎまくってるの?こいつ変な性癖でもあるのかしら。やだ、怖い。もしかして変態なの?さっきの声色といいちょっとヤバい奴なのかも…………。
「ね、ねぇ、さっきから何をーーーー「くっさ」なぁっ……?!」
そう言ってジルは自分の鼻をつまみ、パッとあたしから距離を取った。そして眉根を歪め不快な顔つきを見せたのだ。ーーーーまるで、汚物を見るかのような視線をこちらに向けて。
「あー臭い臭い。あんた、とんでもなく臭いね。とんでもない悪臭だなぁ」
こ、こいつ……何を言ってるかわかってるの?!この絶対的ヒロインに向かって臭いですってぇ?!
それは生まれて初めての屈辱の始まりだったのだ。
灰眼の男……異国の大使であるジルを部屋へと押し込んだ。後ろ手に扉を閉めるがあえて鍵はかけない。いつでも誰かが入ってくるかもしれないというスリリングな状況の方が興奮するし、相手への脅しにも使えるからだ。あたしのひと声でどうにでもなるとわからせるためでもある。だって、あたしは誰よりも尊い存在なんだもの。
それにしても名前を聞いたらすぐに教えてくれたし、大切なはずの聖女を置き去りにしてまであたしの言うがままについてきたし、異国の大使とは言えあたしにかかれば男なんてやっぱり簡単な生き物だと実感する。
「……外にいる騎士は?」
「あぁ、あの青髪?あれはあたしの護衛よ。あなたが何かしてあたしが叫ばない限りは中には入ってこないわ。……でも、あたしの機嫌を少しでも損ねたらどうなるかわからないけどね?うふふ」
クスクスと笑いながらそう言ってやれば、ジルはにこりと微笑みながら「なるほど……」とあたしの髪を指先に絡ませ始めた。あら、もうその気になったの?なぁんだ、もしかしなくてもとっくにあたしの事を狙ってたってわけね!あぁ、隠しルートもこんなに簡単だなんてちょっと拍子抜けだわ。でも、やっぱりあたしって正真正銘のチートヒロインなのね!ごめんね、聖女サマ?あんたの立場はもうすぐあたしのものよ。
「ねぇ、ジルはあたしの事をどう思う?」
「美しい方だと思いますよ。ですがアールスト国の王子の婚約者が、他の男と部屋でふたりきりになるのはあまりよくないのでは?」
「うふ、そんなの大丈夫よ。あたしが言わなければバレないもの。この世の男はねぇ、みぃーんなあたしの言いなりなんだから!ねぇ、わかってるのよ。あたしが欲しいんでしょう?だったらあたしの望みを叶えてくれればいいわ。それだけよ。そうすれば、極上の世界を見せてあげるわ……」
ジルは指先に絡ませた髪に唇を寄せ、すん。と匂いを嗅ぐ。その行為に“これで堕ちた”と確信した。特に今日は念入りに“あの香り”を纏わせているのだから当然か。
あたしに興味を見せた男は、必ずあたしに夢中になると知っているから。あたしの美しさにとことん堕ちるがいいんだわ。
「……望みとは?」
「うふ。あたし、聖女になりたいの。あんな冴えない不気味な女なんか今すぐ切り捨てて、あたしを新たに聖女にしてよ。この美しいあたしが聖女になった方が異国の連中だってだってきっと喜ぶわ。ねぇ、お願いよ……」
そう言ってこれまで関わって来た男たちがうっとりと見惚れてきた笑みを浮かべてやると、ジルは腕を回してあたしの体を抱き寄せた。大サービスであたしからも腕を背に回してやる。男なんて、これだけ密着すればもうあたしから離れられなくなるに違いないもの。
するとジルがおもむろに首筋に顔を埋めてくる。見境いのない猿な男共と同じくもう発情してキスでもしてくるつもりなのだろうと鼻で笑っていたら……鼻をすんすんと鳴らして、何度も繰り返し匂いを嗅いできたのだ。それはもう、何度も何度も。
……あれ?さっきも匂いを嗅いでいたのに……ちょっとしつこくない?いつもの簡単な男達なら、1度嗅いだらすぐに行動しだすのに……。
「へぇ……聖女になりたいんだ?」
「……………っ!」
首筋から、さっきの微笑みからは想像がつかないような低い声が聞こえた。その声色と生暖かい息に背筋がゾクリとして思わず離れようとしたが、ジルの腕があたしを離さなかった。そしてなにかを確かめるようにさらに鼻を鳴らし出すのた。
「そ、そうよ。だって美しくて完璧なあたしの方が聖女と言う呼び名に相応しいでしょ?だから、これは異国の為を思って言ってあげて……」
くんくん。くんくん。くんくん。
え、なに?なんでさっきからあたしの体の匂いを嗅ぎまくってるの?こいつ変な性癖でもあるのかしら。やだ、怖い。もしかして変態なの?さっきの声色といいちょっとヤバい奴なのかも…………。
「ね、ねぇ、さっきから何をーーーー「くっさ」なぁっ……?!」
そう言ってジルは自分の鼻をつまみ、パッとあたしから距離を取った。そして眉根を歪め不快な顔つきを見せたのだ。ーーーーまるで、汚物を見るかのような視線をこちらに向けて。
「あー臭い臭い。あんた、とんでもなく臭いね。とんでもない悪臭だなぁ」
こ、こいつ……何を言ってるかわかってるの?!この絶対的ヒロインに向かって臭いですってぇ?!
それは生まれて初めての屈辱の始まりだったのだ。
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