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場面4
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「ロイちゃんに、井上だ!」
「オハヨー、まってました」
パチパチパチ。
リュックをせおって教室にはいると、スズ子はみんなにはくしゅでむかえられた。
「へ、へえぇ、やだぁ」
ドキドキ。
みんなのし線を一気にあつめ、スズ子の顔は真っ赤になった。
まもなく、きん肉ムキムキの先生が、
「みんな、おかしは二百円までにしただろうな。ちなみに、バナナもおかしだぞ、わっはっは!」
とだれよりも、でっかいリュックをしょってとうじょうした。
「それじゃあ、遠足にしゅっぱつだー」
ブーンっ。
ワイワイ、きゃっきゃっ!
バスは、赤とオレンジ色にそまった山道を走っていった。
カシャッ、パシャッ!
スズ子がロイちゃんを、バスのまどにむけると、カーブをまがるたびにフラッシュが光った。
「スズちゃん! ほら、ちゃんとかまえて。あたし、山ははじめてよ!」
「だよねぇ、でもぉ、よってきたよぉ」
もちろん曲がりくねった道のせいもあるが、スズ子が動くたびにみんなから見つめられ、おかげでスズ子はゲロゲロと気もちがわるくなってしまったのだ。
キ、キィー、ガタンっ。
「はー、やっとついたぁ」
「ほらスズちゃん、緑よ! ほら、たくさん鳥が飛んでるわ!」
すぅー、はぁー。
ようやく新せんな空気をすって、スズ子はホッとした。
「たすかったぁ、あとすこしで、ゲロゲロバーだったぁ」
クラスのみんなも、山を見ながらなんども深こきゅうをした。
そこへバスからおりてきた先生が、
「よし、お昼までは遊んでいいぞ! ボールをけるもよし、しばふでゴロゴロするもよし。ただし、肉は焼くなよ、わっはっは!」
と言って、しばらくのあいだ自由時間があたえられた。
ワイワイ、ガヤガヤ。
「スズちゃん! あたし、キバナコスモスが見たいわ!」
「へええぇ、へー、でもロイちゃん、もみじはぁ?」
まだむねがスッキリしないスズ子は、もみじを見ながらしばふにねそべっていようとかんがえていた。
「ここは山よ! ゴロゴロしてたら、ヒグマにバレて、ぶっ飛ばされちゃうわ!」
「へえぇ、へー、それはやだよぉ」
「ね、スズちゃん、だったらいっしょに、黄色のひらひらした花、さがしましょう!」
すると、そこへクラスのなんにんかがやってきた。
「井上さん、わたしたちもつれてって!」
「へ、へえぇぇ、へー」
きのうから、山でひとりでボーっとしようとたくらんでいたのに、気がつけば、スズ子の予定は、どんどんくるっていくのだった。
ザッザッザッ。
「みんな、岩に気をつけて! 転ぶと、グッバイしちゃうわよ!」
ぎゃははは!
「ねえ、ロイちゃん。あんまりおくにいくと、あぶないよぉ」
「GPSがあるから、まいごになんてならないわ! キバナコスモスは、きっと山ちょうにあるはずよ!」
ワイワイ、キャッキャッ!
ふりむくと、なんとスズ子のあとには、十人もの生徒がついて山を登ってきていた。
「ひぃ、ひー。リーダーは、にがてなのにぃ」
ロイちゃんにんきのおかげで、いつのまにかスズ子は、大スターの道をかけのぼっていたのだ。
「おい、黄色のひらひらだ! 僕はじめてだ」
「見て、キバナコスモスよ! 私もはじめて」
いったいどれだけ山を登ったのか、うっそうと木々がしげる森のなかで、スズ子たちはようやくキバナコスモスを発見した。
「ロイちゃーん、ひぃー、もー、だめぇ」
「やったわ! みんなのおかげよ!」
もくてきの花を見つけて、ロイちゃんは大よろこびだった。
「さあ、写真をとりましょう」
カシャッ、パッ、ピー……。
「へ、へぇぇ、ちょっとぉ、ロイちゃーん」
ところが、花の写真をとったとたん、ロイちゃんはうんともすんとも言わなくなってしまったのだ。
「へえぇ、じゅ、じゅう電だぁ……さっきの写真で、パワーつかいはたしだんだぁ」
もうスマホの画面は、真っ暗になっていた。
「へ、へええぇ、こっちもだぁ」
気がつくと、空にはもう夕やみがせまっていた。
ザッザッザッ。
「ひぃ、ひー、ど、どうしようぉ」
いざとなればスマホがあると、ロイちゃんに心をゆるしていたスズ子たちは、ようやくそうなんしたことに気がついた。
「つかれたよぉ」
「まいごだぁ」
もっていたおべんとうとおかしでおなかはみたせたものの、森がどんどん暗くなるにつれて、みんなの気分はどんよりしていった。
「ひ、ひぃー」
ザッザッザッ。
歩いても歩いても、先生とバスのすがたは、いっこうに見えてはこなかった。
「だめだぁ、こりゃあ、だめなやつだぁ、あーあー」
「オハヨー、まってました」
パチパチパチ。
リュックをせおって教室にはいると、スズ子はみんなにはくしゅでむかえられた。
「へ、へえぇ、やだぁ」
ドキドキ。
みんなのし線を一気にあつめ、スズ子の顔は真っ赤になった。
まもなく、きん肉ムキムキの先生が、
「みんな、おかしは二百円までにしただろうな。ちなみに、バナナもおかしだぞ、わっはっは!」
とだれよりも、でっかいリュックをしょってとうじょうした。
「それじゃあ、遠足にしゅっぱつだー」
ブーンっ。
ワイワイ、きゃっきゃっ!
バスは、赤とオレンジ色にそまった山道を走っていった。
カシャッ、パシャッ!
スズ子がロイちゃんを、バスのまどにむけると、カーブをまがるたびにフラッシュが光った。
「スズちゃん! ほら、ちゃんとかまえて。あたし、山ははじめてよ!」
「だよねぇ、でもぉ、よってきたよぉ」
もちろん曲がりくねった道のせいもあるが、スズ子が動くたびにみんなから見つめられ、おかげでスズ子はゲロゲロと気もちがわるくなってしまったのだ。
キ、キィー、ガタンっ。
「はー、やっとついたぁ」
「ほらスズちゃん、緑よ! ほら、たくさん鳥が飛んでるわ!」
すぅー、はぁー。
ようやく新せんな空気をすって、スズ子はホッとした。
「たすかったぁ、あとすこしで、ゲロゲロバーだったぁ」
クラスのみんなも、山を見ながらなんども深こきゅうをした。
そこへバスからおりてきた先生が、
「よし、お昼までは遊んでいいぞ! ボールをけるもよし、しばふでゴロゴロするもよし。ただし、肉は焼くなよ、わっはっは!」
と言って、しばらくのあいだ自由時間があたえられた。
ワイワイ、ガヤガヤ。
「スズちゃん! あたし、キバナコスモスが見たいわ!」
「へええぇ、へー、でもロイちゃん、もみじはぁ?」
まだむねがスッキリしないスズ子は、もみじを見ながらしばふにねそべっていようとかんがえていた。
「ここは山よ! ゴロゴロしてたら、ヒグマにバレて、ぶっ飛ばされちゃうわ!」
「へえぇ、へー、それはやだよぉ」
「ね、スズちゃん、だったらいっしょに、黄色のひらひらした花、さがしましょう!」
すると、そこへクラスのなんにんかがやってきた。
「井上さん、わたしたちもつれてって!」
「へ、へえぇぇ、へー」
きのうから、山でひとりでボーっとしようとたくらんでいたのに、気がつけば、スズ子の予定は、どんどんくるっていくのだった。
ザッザッザッ。
「みんな、岩に気をつけて! 転ぶと、グッバイしちゃうわよ!」
ぎゃははは!
「ねえ、ロイちゃん。あんまりおくにいくと、あぶないよぉ」
「GPSがあるから、まいごになんてならないわ! キバナコスモスは、きっと山ちょうにあるはずよ!」
ワイワイ、キャッキャッ!
ふりむくと、なんとスズ子のあとには、十人もの生徒がついて山を登ってきていた。
「ひぃ、ひー。リーダーは、にがてなのにぃ」
ロイちゃんにんきのおかげで、いつのまにかスズ子は、大スターの道をかけのぼっていたのだ。
「おい、黄色のひらひらだ! 僕はじめてだ」
「見て、キバナコスモスよ! 私もはじめて」
いったいどれだけ山を登ったのか、うっそうと木々がしげる森のなかで、スズ子たちはようやくキバナコスモスを発見した。
「ロイちゃーん、ひぃー、もー、だめぇ」
「やったわ! みんなのおかげよ!」
もくてきの花を見つけて、ロイちゃんは大よろこびだった。
「さあ、写真をとりましょう」
カシャッ、パッ、ピー……。
「へ、へぇぇ、ちょっとぉ、ロイちゃーん」
ところが、花の写真をとったとたん、ロイちゃんはうんともすんとも言わなくなってしまったのだ。
「へえぇ、じゅ、じゅう電だぁ……さっきの写真で、パワーつかいはたしだんだぁ」
もうスマホの画面は、真っ暗になっていた。
「へ、へええぇ、こっちもだぁ」
気がつくと、空にはもう夕やみがせまっていた。
ザッザッザッ。
「ひぃ、ひー、ど、どうしようぉ」
いざとなればスマホがあると、ロイちゃんに心をゆるしていたスズ子たちは、ようやくそうなんしたことに気がついた。
「つかれたよぉ」
「まいごだぁ」
もっていたおべんとうとおかしでおなかはみたせたものの、森がどんどん暗くなるにつれて、みんなの気分はどんよりしていった。
「ひ、ひぃー」
ザッザッザッ。
歩いても歩いても、先生とバスのすがたは、いっこうに見えてはこなかった。
「だめだぁ、こりゃあ、だめなやつだぁ、あーあー」
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