ロイちゃん

泉蒼

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場面5

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「見たか、テレビ?」
「おれ、うつってた! ついにゆうめい人だぜ」
 おととい、山でそうなんしたスズ子たちは、真っ暗な森でぶじに救出されていた。
 帰ってこないスズ子たちに、先生や親たちが、けいさつにそうさく願いをだしたのだ。
「ヘリコプターって、すごい音するんだなー」
 けいさつだけでなく、助けられたスズ子たちのまえには、新聞記者のすがたがあり、空にはヘリコプターまでが飛んでいた。
 おかげで、「小学生が遠足でそうなん!」といった、朝のちょっとしたニュースにまでとりあげられてしまったのだ。
 ガラガラ。
「オハヨーさん。みんな、元気かー?」
 朝いちばん、教室にはいってきたきん肉ムキムキの先生は、白いクルクルのかみの老人をつれていた。
「こちらは、ロイちゃんをつくった、安東博士だ」
「外国にいってるあいだ、落としたロイコのめんどうを見てくれて、どうもありがとう」
お礼を言いにやってきたのは、世界的に有名な科学者の、安東博士だった。
「博士は、ニュースで井上のスマホを見かけたってわけだ」
「わたしがつくったロイコのせいで、みんなにめいわくをかけてしまったようだ」
安東博士は、遠足のそうなんじけんをしって、むねをいためているようだった。
シーン。
教室がしずまりかえると、
「ざんねんだが、今日でロイちゃんとはお別れだ。井上、そしてみんなもいいな?」
ときん肉ムキムキの先生が悲しそうな目をむけた。
「へ、へぇ……」
 スズ子は、つくえのうえでスマホをぎゅっとにぎりしめた。
 じゅう電ぎれのロイちゃんは、今日も一言もしゃべらなかった。
 そんなスズ子を見つけて、
「これからはロボットの時代。いろんな機械がロボットになっていくだろう。だからこそ、わたしはみんなに愛されるロボットを作ろうと思ったのじゃ」
 と博士がかたをおとしながら、スズ子の席へとやってきた。
 ドキドキ。
「だが、ロイコは失敗作じゃった」
 そう言って手をさしだす博士に、スズ子は口をもごもごさせた。
――ロイちゃんが、失敗?
「井上スズ子さん。ロイコを、かえしてくれるね?」 
「あ、あのぉ……」
博士のことばに、スズ子のむねはズキズキといたくなった。
「そ、そのぉ……へ、へぇー」
「みんなに好かれる、人なつっこいロボットを作ったつもりが、はんたいに、みんなのめいわくになってしもうた」
 博士がスズ子の席から、みんなに頭をさげた。
 パッ。
「あ、あぁ……」
 そうして博士は、スズ子の手からロイちゃんを、つかみとってしまったのだ。
 ガラガラガラ、ピコーンピコーン!
「おせわになったみんなへ、プレゼントを」
 そのとき、いちだいのロボットが、教室のなかへと入ってきた。



「すっげー、自分で歩いてるぞ!」
「頭のうえが、ピカピカ光ってるわ」
ざわざわ、ガヤガヤ。
クラスのみんなは、やってきた新しいロボットを見て、さっそくきょうみをもちはじめていた。
博士は黒板のまえにもどると、
「これは最新ぎじゅつでつくったロボット、アンドーシュウサイだ。こんどは、クラスのみんなの役にたつんだぞ」
 とシュウサイの頭をポンとたたいた。
そのしゅんかん、スズ子のクラスからはロイちゃんが消えて、かわりにアンドーシュウサイが、新しいなかまとしてくわわったのだ。
「みなさん、そんなことをしては、イケマセンヨ!」
 けれどシュウサイは、まったくおもしろくなかった。
「ろう下を走っては、イケマセンヨ」
「宿題をわすれては、イケマセンヨ」
「赤井さんのランドセルに、鼻くそを飛ばしては、イケマセンヨ」
 くる日もくる日も、アンドーシュウサイは、みんなに注意をしまくった。
「きん肉は、コツコツと、どりょくしてきたえるのデスヨ」
「なまけていると、大人になって、大変なことにナリマスヨ」
シュウサイの言うことは、たしかにそのとおりだった。
「女子には、やさしい言葉をかけなさいよっ」
でもシュウサイは、やっぱりかわいくなかった。
「ルールはやぶるためにあるんだって!」
「きん肉は、気合いとホルモン、そしてアミノさんだ、わっはっは!」
「もう、おまえとはしゃべりたくない!」
そうしてアンドーシュウサイは、一週間もたたないうちに、クラスのきらわれものになってしまった。
シーン。
もうだれも、シュウサイとしゃべろうとはしなかった。
そんなある日、ついにじけんがおきてしまったのだ。
「うるさいな、シュウサイ!」
 教室で野球ボールをなげようとした男子に、シュウサイがまた注意をしたのだ。
「あっちいけって!」
そしてふいに、シュウサイをはらいのけようとした男子の手が、ロボットの頭をなぐってしまった。
 バキッ!
「ああ、ピコーン……ボールを、なな、な、げては」
 そのしょうげきで、なんとロボットの首がとれてしまった。
「ちゅ、注意ばっかするから、お、おまえがわるいんだ!」
「……ピコーン、イケマセン、イケマセン、ヨヨヨヨ……」
 プシュー。
「……ピコーン……ピコーン……イケマ……セン……ヨォ」
 首からけむりをあげたシュウサイは、まるで頭のもげた雪だるまのように、その場でカチコチにかたまってしまった。

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