JCダンサーは夢使いをやめられない!

泉蒼

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第1話 結菜、33代目の夢使いに

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結菜の頭がボーっとする中、声が聞こえた。
「――ねえっ! 花咲さんっ!」
「んんん……」
 何故か眼下にはウェーブがかった艶のある黒髪に、たれ目がちな瞳の少年がこっちを見上げて寝転がっていた。
「――――ああっ!?」
そこで結菜は、いろいろと一気に思い出して、あわてて立ち上がる。
「やっぱりだわ……」
 結菜は、辺りを見回して頭を抱えてしまった。
 歩道に散らばっているガラスの破片、その先に荷台の付いたトラック、さらにその向こうには、入り口が大破したコンビニエンスストアが。
(ぬあ~っ、また夢が現実になったのねぇ……っ)
 眼前に、夢で見たまんまの光景が映っている。
 あらかじめ夢で何が起きるか知っていたから、そのおかげでクラスメイトの命は救えた。
 だけど!
 これで結菜の予知夢が100%当たると確定したのだ。
(超っ、迷惑! そんなの超超超っ、迷惑なんだけど!)
 いったい、誰がこんな能力を自分に授けたのだろうか。
 まさか7日前にこの世界に悪魔が降臨し、結菜に予知夢を見させて危険を回避できるかどうか試して遊んでいるのだろうか!?
「そんなの、貴族の遊びじゃんっ……いや、神々の遊び……じゃなく、悪魔のお遊戯っ」
 両手をグーにし、結菜がそれをぐりぐりとこめかみに当てながら叫ぶ。
「……貴族の遊び? それより、花咲さんのおかげで助かったよ」
 山岸は、野次馬だらけの事故現場を見てぼう然とつぶやいた。
 誰かが通報したのか、遠くからサイレンも聞こえてきた。
「お店の入り口はぐちゃぐちゃになってるけど、幸いケガ人はいないみたいだね。サイレンは救急車なのかな、それともパトカーかな?」
「どっちでもいいわよっ、悪魔って趣味が悪いわっ、ホント最悪ぅ……」
いくら危険を回避できても、結菜は自分の予知夢が怖くて仕方がない。
「超超超っ、迷惑だわ~っ! 予知夢なんて怖くないなんて言わせないわ~っ! 怖い物は怖いのよ~っ!! 何なのよこの能力は~っ?? 私が何をしたっていうのよ~っ!?」
 結菜が再び両手をグーにし、自分のこめかみに当ててグリグリしようとしたその時。
(私の、おかげ? 私の、お・か・げ??)
 心の中でそう呪文のように唱えた結菜。
 さっきまで頭にわんさか湧き上がっていたネガティブな感情を一時停止し、山岸が差し出す手を黙ってぎゅっと握った。
「えっと、その……、大丈夫?」
 山岸が眉をひそめながら聞く。
 結菜は「ええ」と頷き、頭の中で少しだけ時間を巻き戻して、彼がさっき自分に言った言葉を思い返してみた。
「山岸君! たしかさっき、私のおかげって?」
「う、うん」
「……ふふふ、ぷぷぷぷっ! うっふふぷぷぷっ! そんな~、もうっ! 私のおかげだなんて、山岸君ってば! 超大げさなんだから~っ!」
結菜は、人からありがたがられるのがこの上なく好き。ことさら、人が自分を祀ったり崇めたり拝んだりすれば、もうヨダレを止めるのは至難の業だ。
「見たところ、山岸君にケガがなさそうで、ホッとしたな~」
 結菜は上機嫌で彼と同じ目線に立って言う。だがすぐ、結菜は少し屈んで上目遣いに。
「ホッとしたな~」
これは計算。相手も多感な年頃の男の子だ。自分の方の背を低く見せることで、彼をたてることになって、そんな奥ゆかしい行動をする自分が好印象に映るだろうと考えたのだ。
思った通り。
「大げさじゃないよ、さっきは助けてくれてありがとう。キミってすごいんだね!」
山岸は顔を赤くし、どこか照れくさそうに答えた。
「たまたまね~、たまたまダンスを習っててね~」
「えっ、花咲さんもダンスを?」
 突然、山岸が目を輝かせた。
「じゃ、じゃあダンス部に入りなよ! 僕、ダンス部なんだ! そうそう、花咲さんも部のみんなが呼ぶみたいに、僕のこと、昴、って呼んでよ」
 だが、山岸はすぐに我に返ったように目を泳がせた。
「あっ……ご、ごめんっ! なれなれしかったよね……ダンスのことになるとつい興奮しちゃって。いきなり部に勧誘なんかされたら、花咲さんだって困るよね」
「ううん! そんなことないよ!」
 結菜は、イケメンからの勧誘も嬉しく感じ、ブンブンと首を横に振る。
 その時、ふたりはまだお互いの手を握っていたことに気付いてあわてて手を離した。
「ごっ、ごめんね! でも、私もダンス部に興味あるから考えとくね……それにしても、山岸君が無事で良かったな~、先に夢で知れてて良かったな~」
 結菜は、どこか気まずい空気をかき消そうとつい口走った。
すると。
「夢で?」
山岸が驚いた顔で聞き返す。
「あ、その」
だが――。
少し迷った結菜は、予知夢なんてまさか信じてもらえないだろうと考え、
「ううん! な、何でもないの! じゃ、じゃあっ、先に学校に行くね!」
と、その場を立ち去ることにしたのだった。
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