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第1話 結菜、33代目の夢使いに
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「んんん、なあ~にがっ、夢使いよ! 私が真剣に悩んでいるってのに! まったくぅ……、こんな時はストレス発散するしかないわねっ」
結菜はベッドの上で、スマホから流れるダンスミュージックに身体を委ね始めた。
次々と頭の中に閃いてくるダンスの動きに、自然と身体の動きも合わさっていく。
「よっと! ここでキメのポーズにつなげて、えい!」
そして、結菜がくるりと華麗にターンしたその時だ。
バタン!
いきなり、部屋の扉が開かれた。
「踊ってる場合じゃないぞ。結菜、予知夢で人助けをするんだ!」
部屋に入ってきたのは、おでんを煮込むお玉を手に持った父だ。
(これって!)
結菜は、ふと今日学校で見た夢を思い出してスマホの音楽を止めた。
そう。夢に父が出てきて、結菜がダンス部に入ることに反対したのだ。
「……い、言っとくけど! 私は夢使いなんて信じないし、私の心には未来のJC(女子中学生)ダンサー結菜の輝く姿がはっきりと描かれてるんだからね!」
結菜はマジメな顔で父に釘をさす。学校一モテる、という偉大な野望は絶対に邪魔されたくない。
だが。
「聞いてくれ」
扉の前で、父もマジメな顔で腕組みした。
「そんなこと言って、また面白くない冗談言うんでしょ」
「一刻を争うんだ」
「えっ……」
結菜は父の深刻そうな声に一瞬たじろぐ。しかし、このあと夢で父に首根っこをつかまれたことを思い出し、結菜は警戒して壁ぎりぎりのところまで移動した。
「お父さんの仕事って、警備会社の社員じゃ、なかったの?」
「そうだ」
父はそう答え、結菜の学習机まで行き椅子に座る。
「だが、それはあくまで表の顔だ」
まだ言うつもり?
「誰にも言えない秘密の仕事なんて、信じないよ!」
結菜は父と向かい合うようにベッドの上で座った。父がおでんを煮込むお玉を学習机に置いているのが気になるが、今はそれどころではない。
「一部の人しか知らないが、『夢使い』はちゃんと日本国で認められている秘密の職業なんだ。その稼ぎで俺は、結菜をここまで育ててきたんだ」
父はそう説得するように言った。そして、こっちの興味をそそるように天井を指さした。
「結菜、見えるか?」
へっ?
「見えるって、何が?」
父の質問に、結菜は思わず首をかしげる。
「何にも、見えないけど……」
結菜はとまどいながら答える。
「バクさんがいるんだ」
「えっ? バクっ?」
「そうだ。人の悪夢を喰って生きる、鼻がゾウみたいに長い四つ足の動物だ……」
「バクって、あの伝説の生き物の? 夢占いとかに出てくる獏がいるってこと?」
結菜は身を乗り出しながら聞いた。
「そうだ。しかし、ここにいるバクさんはちょっと違う」
父はそこまで言うと、机に置いたお玉を握って娘に向けた。
「実は、獏は獏でも見た目がちょっと……」
「ねえ、見た目は何なのっ? そこまで聞いたら気になるじゃない!」
結菜は急に黙り込んだ父にそう突っ込む。獏の見た目が気になって仕方がない。
しかし。
「自分で会って、確かめなさい」
父はそう言っておもむろに椅子を立った。
「ちょっと待って! 会って確かめるって、どうやって?」
結菜は、部屋を出ていこうとする父を必死に呼び止める。
すると。
「バクさんは夢使いの使者で、俺の相棒だ。ちなみに、名前はバクじゃなく、バクさんだ。結菜が予知夢を見始めた以上は、間もなくバクさんが姿を現してくれるだろう」
父は背中を向けたままそう言って、ドアノブに手をかけた。
バタン!
「ちょっと、お父さん!」
結菜はしんと静まり返った部屋で、ひとりきょろきょろと首を回す。
本当に自分の部屋には今、伝説の獏がいるのだろうか。
間もなく、ずっと父の相棒だった夢使いの使者がやってくる?
………………。
(まさか、嘘でしょ)
そう。これもきっと、父のつまらない冗談に違いない。
(きっと、そう……)
結菜は、どうしてもまだ父の言葉が信じられずにいるのだった。
結菜はベッドの上で、スマホから流れるダンスミュージックに身体を委ね始めた。
次々と頭の中に閃いてくるダンスの動きに、自然と身体の動きも合わさっていく。
「よっと! ここでキメのポーズにつなげて、えい!」
そして、結菜がくるりと華麗にターンしたその時だ。
バタン!
いきなり、部屋の扉が開かれた。
「踊ってる場合じゃないぞ。結菜、予知夢で人助けをするんだ!」
部屋に入ってきたのは、おでんを煮込むお玉を手に持った父だ。
(これって!)
結菜は、ふと今日学校で見た夢を思い出してスマホの音楽を止めた。
そう。夢に父が出てきて、結菜がダンス部に入ることに反対したのだ。
「……い、言っとくけど! 私は夢使いなんて信じないし、私の心には未来のJC(女子中学生)ダンサー結菜の輝く姿がはっきりと描かれてるんだからね!」
結菜はマジメな顔で父に釘をさす。学校一モテる、という偉大な野望は絶対に邪魔されたくない。
だが。
「聞いてくれ」
扉の前で、父もマジメな顔で腕組みした。
「そんなこと言って、また面白くない冗談言うんでしょ」
「一刻を争うんだ」
「えっ……」
結菜は父の深刻そうな声に一瞬たじろぐ。しかし、このあと夢で父に首根っこをつかまれたことを思い出し、結菜は警戒して壁ぎりぎりのところまで移動した。
「お父さんの仕事って、警備会社の社員じゃ、なかったの?」
「そうだ」
父はそう答え、結菜の学習机まで行き椅子に座る。
「だが、それはあくまで表の顔だ」
まだ言うつもり?
「誰にも言えない秘密の仕事なんて、信じないよ!」
結菜は父と向かい合うようにベッドの上で座った。父がおでんを煮込むお玉を学習机に置いているのが気になるが、今はそれどころではない。
「一部の人しか知らないが、『夢使い』はちゃんと日本国で認められている秘密の職業なんだ。その稼ぎで俺は、結菜をここまで育ててきたんだ」
父はそう説得するように言った。そして、こっちの興味をそそるように天井を指さした。
「結菜、見えるか?」
へっ?
「見えるって、何が?」
父の質問に、結菜は思わず首をかしげる。
「何にも、見えないけど……」
結菜はとまどいながら答える。
「バクさんがいるんだ」
「えっ? バクっ?」
「そうだ。人の悪夢を喰って生きる、鼻がゾウみたいに長い四つ足の動物だ……」
「バクって、あの伝説の生き物の? 夢占いとかに出てくる獏がいるってこと?」
結菜は身を乗り出しながら聞いた。
「そうだ。しかし、ここにいるバクさんはちょっと違う」
父はそこまで言うと、机に置いたお玉を握って娘に向けた。
「実は、獏は獏でも見た目がちょっと……」
「ねえ、見た目は何なのっ? そこまで聞いたら気になるじゃない!」
結菜は急に黙り込んだ父にそう突っ込む。獏の見た目が気になって仕方がない。
しかし。
「自分で会って、確かめなさい」
父はそう言っておもむろに椅子を立った。
「ちょっと待って! 会って確かめるって、どうやって?」
結菜は、部屋を出ていこうとする父を必死に呼び止める。
すると。
「バクさんは夢使いの使者で、俺の相棒だ。ちなみに、名前はバクじゃなく、バクさんだ。結菜が予知夢を見始めた以上は、間もなくバクさんが姿を現してくれるだろう」
父は背中を向けたままそう言って、ドアノブに手をかけた。
バタン!
「ちょっと、お父さん!」
結菜はしんと静まり返った部屋で、ひとりきょろきょろと首を回す。
本当に自分の部屋には今、伝説の獏がいるのだろうか。
間もなく、ずっと父の相棒だった夢使いの使者がやってくる?
………………。
(まさか、嘘でしょ)
そう。これもきっと、父のつまらない冗談に違いない。
(きっと、そう……)
結菜は、どうしてもまだ父の言葉が信じられずにいるのだった。
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