それはもう愛だろ

ゆん

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NARESOME

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 リビングのローテーブルに山と積み上げられたおいしんぼうと、ソファに座ってその中の一冊を読む俺……と、佐野さん。ソファは一人暮らし用にしては大きいけど、それでも男ふたりで座ると結構存在感感じる近さ。

 俺がソファの左端に座って読み始めたら佐野さんが自分も1冊取って右端に座って読み始めたんだから、この距離になったのは俺のせいじゃない。

 BGMがある訳でもなく、テレビもついてない深夜。部屋の中はシーンとしてて、ページをめくる音がやけに耳につく。時折佐野さんが身じろぐとソファが軋んで全神経がそっちに向いて、正直、マンガの中身に全然集中できない。

 あー……これが ”そのつもり” のゲイ同士なら、もう一杯酒でも引っかけていい雰囲気になってイチャイチャするとこなのに……コーヒー片手においしんぼう……不毛……それでも、1時間くらいは頑張ってた。せっかく佐野さんが、俺のために用意してくれた訳だし。

 時刻が11時を回る頃、佐野さんがトイレに席を立って戻ってきた時、「風呂、入る?」と訊ねながら自分のと俺の中身のなくなったカップを持ってキッチンへ行った。

 風呂……これは、チャンス??お互いに風呂に入ってリラックスしたら空気も変わるかも。一緒に夜更かししてさ、昔の恋バナで盛り上がったり。

 そんで距離は心身共に近くなり、不意に合う目線、目と目の了解……やがてふたりの唇はゆっくり近づき……とかさ!わーー!そうなったらどうしよーー!

「まだマンガ読むか?」
「や、入る」
「ん。洗面所に着れそうな服と下着と歯ブラシ、置いとくから」
「はーい」

 そうそう。おいしんぼうなんか読んでる場合じゃねえよ。このチャンスを有効活用しねぇと……俺は静かに奮起して、読みかけのマンガを山に戻し、風呂に入りに行った。

 いつもより念入りに頭と体を洗い、湯に浸かりながら誘惑のイメトレ。佐野さんはどういうタイプが好きなんだろうとか、妄想を広げて……

 それから風呂から上がって佐野さんが畳んだであろうバスタオルで体を拭いた。この連想はやばくて、佐野さんの大きな手で体に触れられてるように感じて、危うく反応しかけた。

 洗濯機の蓋の上に乗せられてた着替え。佐野さんの……案の定かなりデカい。上のTシャツは肩の線が完全に落ちてるし、スエットは裾を1回まくって、ウエストをヒモでギュッと絞る。鏡に映った自分は大きい服を着てるぶん華奢に見えて、なんか学生みたいだった。

「お色気大作戦のはずが……」

 納得はいかないけどこれしかないんだから仕方ない。俺は不満顔を鏡に映しながらドライヤーで髪を乾かし、脱いだ服を畳んでリビングに戻った。

 ソファでマンガを読んでた佐野さんが気づいてこっちを振り向くと、俺を見るなりふ、と吹き出した。

「やっぱデカいな」
「うん、まぁこうなるよね」

 佐野さんは優しい笑い方で俺をキュンとさせて立ち上がり、

「なんか飲みたかったら適当にやれよ。冷蔵庫とか好きに探していいから」

 と、自分も風呂に入りに向こうに行ってしまった。むぅ……佐野さん、無反応。つか笑われたし。やっぱり湯上りの俺ドキドキ作戦は諦めるしかない。こうなったらほろ酔い加減の俺ドキドキ作戦に切り替えて……

 もはや意味があるのか分かんねぇけど、うん、半分はノリで?だって佐野さんとどんどん親しくなれてってるのは確かだし、佐野さんのプライベート空間で、佐野さんの服を着て、明日は休みで、なんて幸せ過ぎじゃん。

 冷蔵庫にあった缶チューハイを1本拝借。佐野さんがいなくなって、やっとおいしんぼうの内容が頭に入ってきた。

 ソファを背もたれにしてラグの上に脚をぎゅっと折り畳んで座り、ローテーブルの上に置いた缶チューハイをチビチビやりながら読んでたら、3話ほどで佐野さんが出てきて……

 俺と同じくTシャツにスエットだけど、なんか違う!まだ濡れたままの髪……いつもはオルバだけど今は前髪が降りててちょーセクシー……ずりぃよ……それは俺の作戦のはずだったのに……



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