魔樹の子

クラゲEX

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ハクチ編

タイザイニン

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血で線を描く。
描いて、描いて、やっと外に辿り着いた。

中からサイレンが鳴り響く。
どうやら間一髪、
すんでのところで脱出出来たようだ。

しかし、脱出に成功したわけで、
逃げ切れたわけではない。

想像以上に消耗している。

「____ハハハハ!」

韻踏んでる!

無性に笑いが込み上げる。
痛みと疲れと緊張が思考回路を起爆させた。

笑って更に疲れて、
声で発見される可能性だって大いにあるのに、
その場に倒れ込んでしまった。

手を引いてくれる連れは居ない。
狂神的なイマジナリー故人もついさっき消えた。

ついに、全てにおいて一人となった。

目標も夢も希望も元通り一人分。

ただ元に戻っただけなのにこの喪失感。

もはや村を出た頃には、軌道修正不可能だ。

それでも。
ここでこのまま捕まるのは、
あの最期に口を聞く暇すら無かったけど、
多分アイツも悲しむだろうし。

誰かに死ぬなと言われた気もするし、

何よりここで死んでいい理由にはならない。

動きたくない矛盾を折って、老骨に鞭を打つ。


音は外に出てきている。
喧しい声と警笛、サイレンが近づく。

ピーピーワーワープープー。

人殺しは勿論、罪に問われる。
星の秩序の体現者に手をかけたなら尚更。
死罪は免れない。

だからって、
ハリスを庇ったあの選択を悔いることはない。

自分のこれからの道に絶望することもしない。

世間一般的に排されるとしても、
せめて全てやりきってから排されたい。

「魔法使いになってから、殺してくれ。」

包帯を外して、姿を隠して歩き続ける。
日陰者となった俺には最適の魔術だ。


いのちからがら。
大罪人はまた一つ、罪を重ねて國を去った。





逃亡から二日後。

9:50。


襲われてから拾う余裕も無かったので、
一文なしの着の身着のまま。
どこで死んだっておかしくない。

水は出せるからいいとして、
食料はそう簡単にいかない。

魔獣でも狩って食うか?
そもそも狩れるか?
単体で徘徊している珍しい個体とかなら…


などと考えていると、
目の前にお誂え向きの盗賊四人。

取り敢えず殴った。
腕で弾けば魔術は霧散するので、
結構呆気なく終わった。

凶器を持ち出せられずに済んで良かった。
魔術よりよっぽど対処しづらい。

食料と金が手に入り、ホクホクな懐。
対照に、包帯を見て更に震える盗賊たち。


これでは、どちらが盗賊か分からない。
何故包帯を見て震えるのか。

問い詰めると、
各國がここ二日の間に張った
手配書に載っていた。

特徴と、一致しているからと言う。

左腕と両脚。厄介な特徴を捉えられた。
魔術で擬態しようにも、
魔術を弾いてしまい上手くいかない。

なので、
盗賊から、着ぐるみ剥がして上から隠した。

これも天の恵みだろうか?
有益な情報に多量の物資。至れり尽くせり。


魔獣を狩る必要が無くなった!



20:10。

嘘だ。生きるために必要は無かったが、
先に行くために必要となった。

手前に臨戦態勢の獣三匹。

気づかれる前に迂回も出来たが、
今の俺ならいけるのでは?

慢心そのままに挑んでみる。


最初に足を奪おうと穴を作るも避けられる。

魔術は腕で防いで、攻撃。

回避。攻撃。防御。攻撃。回避……


21:10。

一時間。猛烈に時間がかかったものの、
刈り取られることも、深傷もなく
事なきを得た。

確かに強くなった。自分の実力はよく分かった。

「もう二度としない。これからはいつも通り
遠回りだ遠回り。」

満身創痍さながら、
身体の主導権を疲労に握られ、
強制的に眠らされた。


それから三日後。

飽食のシガル。
その門前に到着した。
ハクチのように明確にやるべき事は
決まっていないが、
まあ、取り敢えず入國した。










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