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第22話 水氷と世臣の初対面
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と、いうわけで。
私たちは男装して後宮を抜け出した。
男装とはいえ中身は女の子だから、やっぱり女の子みたいな顔の少年になってしまっているが。
「それで、巫……じゃなくて氷水様。これからどういたしますか?」
家麗さんの不安そうな顔が私を振り返ってくる。
私は、そんな彼女に微笑みかけた。
「とにかく『後宮を嗅ぎ回っている怪しい人物』を捜しましょう。私たちの目的はそれなんだし」
「そうですわね。でもいったいどうしたら……」
「案外簡単だと思うわよ。あっちにしてみれば私たちは肉屋に吊された上等な干し肉みたいなものなんだし」
「……なんですか、それは?」
「見ただけでよだれが出てくるってことよ。必ずあっちから接触してくる。よだれを拭きながらね」
「は、はぁ……」
家麗さん、いまいちピンと来ていないみたい。例えが庶民的すぎたかしら?
「とにかく人の多そうなところに行きましょう。それで私たちの顔を売って回るのよ。そうすれば、今日は無理かもしれないけど、そのうち噂が回って『後宮を嗅ぎ回っている怪しい人物』の耳に届くはずよ。女の子みたいな少年が宮廷内に出没している、ってね」
「本当に罠を張るのですね……。ちょっと怖いですわ。でも、後宮のみんなを守るため、ですものね」
瑞泉さんは拳を握りしめながら言った。
「わたくしも、頑張りますっ」
「その調子、その調子。とりあえず宮廷内を案内してもらえる? 私、この宮廷内のことほとんど知らないのよね。この機会にいろいろ知っておきたいの」
後宮に籠もらされてて外に出してもらえないからね……。
「かしこまりました。では参りましょう」
家麗さんが先頭に立って歩き出す。
……この機会に宮廷内の地理を把握しておくのは我ながら悪くない作戦よね。
暗殺の作戦に使えるだろうから。
******
私たちは渡り回廊が曲がりくねって続く静かな場所に来た。……玖雷国の王宮を思い出す風景だ。
「こちらの先には賛珠宮がございます。賛珠宮は龍帝陛下がお休みになられる場所ですわ」
「なるほど」
龍帝陛下の寝所ってことね。もしかしたら、そこで暗殺ってことになるかもしれない。詳しい場所を確かめよう。
「あっ、氷水様。これ以上は……」
家麗さんに止められるまでもなく。
「おっほん」
見張りに立った衛兵がわざとらしく咳払いをして私を制してきたのだった。
「……なるほどね」
これ以上は行ってはいけない、と。警備が厳重になってきてるってことは、やっぱりこの先が龍帝の寝所なんだ。
「行きましょう、氷水様。太龍殿をご案内いたします」
「太龍殿?」
「明日、巫貴妃様が龍帝陛下に伺候なさる場所でございます」
「……そう」
思わず目が光ってしまう。明日、龍帝陛下に会う場所。……それは確かに下調べしたほうが絶対にいいわね。
「分かった。行ってみましょう、家麗……じゃなくて家君さん」
「はい、こちらでございます」
私は家麗さんの後に続いて歩く。
そしてまた別の回廊に出ていくのだった。
******
「思ったより大胆な方なのですね……」
太龍殿への曲がり角から私たちを出迎えたのは、背の高い男性だった。
眼鏡をしていて紙を後ろになでつけている。腰の剣を見るに武官だろう。
「誰?」
私は鋭い視線を彼に向けた。
「失礼いたしました。自分は龍帝陛下の御前随身をしております、趙世臣というものです」
「せっ、世臣様っ!? 本物っ!?」
家麗さんの声が裏返る。
「はい。本物です。どうぞお見知りおきくださいませ」
世臣さんが頭を下げる。
ふーん。この人が私たちを捜していた怪しい人物ってこと?
どうやら面白い人が罠に引っかかったみたいね……。
私たちは男装して後宮を抜け出した。
男装とはいえ中身は女の子だから、やっぱり女の子みたいな顔の少年になってしまっているが。
「それで、巫……じゃなくて氷水様。これからどういたしますか?」
家麗さんの不安そうな顔が私を振り返ってくる。
私は、そんな彼女に微笑みかけた。
「とにかく『後宮を嗅ぎ回っている怪しい人物』を捜しましょう。私たちの目的はそれなんだし」
「そうですわね。でもいったいどうしたら……」
「案外簡単だと思うわよ。あっちにしてみれば私たちは肉屋に吊された上等な干し肉みたいなものなんだし」
「……なんですか、それは?」
「見ただけでよだれが出てくるってことよ。必ずあっちから接触してくる。よだれを拭きながらね」
「は、はぁ……」
家麗さん、いまいちピンと来ていないみたい。例えが庶民的すぎたかしら?
「とにかく人の多そうなところに行きましょう。それで私たちの顔を売って回るのよ。そうすれば、今日は無理かもしれないけど、そのうち噂が回って『後宮を嗅ぎ回っている怪しい人物』の耳に届くはずよ。女の子みたいな少年が宮廷内に出没している、ってね」
「本当に罠を張るのですね……。ちょっと怖いですわ。でも、後宮のみんなを守るため、ですものね」
瑞泉さんは拳を握りしめながら言った。
「わたくしも、頑張りますっ」
「その調子、その調子。とりあえず宮廷内を案内してもらえる? 私、この宮廷内のことほとんど知らないのよね。この機会にいろいろ知っておきたいの」
後宮に籠もらされてて外に出してもらえないからね……。
「かしこまりました。では参りましょう」
家麗さんが先頭に立って歩き出す。
……この機会に宮廷内の地理を把握しておくのは我ながら悪くない作戦よね。
暗殺の作戦に使えるだろうから。
******
私たちは渡り回廊が曲がりくねって続く静かな場所に来た。……玖雷国の王宮を思い出す風景だ。
「こちらの先には賛珠宮がございます。賛珠宮は龍帝陛下がお休みになられる場所ですわ」
「なるほど」
龍帝陛下の寝所ってことね。もしかしたら、そこで暗殺ってことになるかもしれない。詳しい場所を確かめよう。
「あっ、氷水様。これ以上は……」
家麗さんに止められるまでもなく。
「おっほん」
見張りに立った衛兵がわざとらしく咳払いをして私を制してきたのだった。
「……なるほどね」
これ以上は行ってはいけない、と。警備が厳重になってきてるってことは、やっぱりこの先が龍帝の寝所なんだ。
「行きましょう、氷水様。太龍殿をご案内いたします」
「太龍殿?」
「明日、巫貴妃様が龍帝陛下に伺候なさる場所でございます」
「……そう」
思わず目が光ってしまう。明日、龍帝陛下に会う場所。……それは確かに下調べしたほうが絶対にいいわね。
「分かった。行ってみましょう、家麗……じゃなくて家君さん」
「はい、こちらでございます」
私は家麗さんの後に続いて歩く。
そしてまた別の回廊に出ていくのだった。
******
「思ったより大胆な方なのですね……」
太龍殿への曲がり角から私たちを出迎えたのは、背の高い男性だった。
眼鏡をしていて紙を後ろになでつけている。腰の剣を見るに武官だろう。
「誰?」
私は鋭い視線を彼に向けた。
「失礼いたしました。自分は龍帝陛下の御前随身をしております、趙世臣というものです」
「せっ、世臣様っ!? 本物っ!?」
家麗さんの声が裏返る。
「はい。本物です。どうぞお見知りおきくださいませ」
世臣さんが頭を下げる。
ふーん。この人が私たちを捜していた怪しい人物ってこと?
どうやら面白い人が罠に引っかかったみたいね……。
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