龍使いの姫君~龍帝の寵姫となりまして~

卯月八花

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第26話 少年の正体:瑞泉視点

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 俺はにやつく頬を隠しきれなくなっていた。

 まあいいか、皇帝仕事は休憩中なんだし。
 いつまでも感情を抑えたしかめっ面なんかしていられるかっての。

 ついに、ついにあの少年のことが分かるんだ……!

「でかした世臣。でっ、何が分かった!?」

「正体が分かりました」

「……なにっ!?」

 展開早すぎだろ! こいつやっぱ有能かよ!!!
 ますますにやつく顔を押さえきれない俺だ。

「……調べてみて分かったのですが……。なかなかの剛胆でございますな、あの少年・・は」

「まあな。俺が見込んだ少年だからな……」

 チンピラ二人に絡まれて組み伏せられていたのに震えてすらいなかったからな。肝が据わっているのだろう。

「それに確かに、女子がごとき柔和なる顔ではありました。……陛下の似顔絵にも似通った箇所もございました。目が合って鼻がありましたよし

「うるさいなほっとけ。それよりお前あの少年に会ったのか!? 羨ましい奴め!」

「会った、というかおびき出そうとしたらおびき出されたといいますか」

「なんだそれは?」

「言葉の通りのでございます。……つい先ほどのことでございますよ」

「なっ――」

 ガタッ、と椅子から荒っぽく立ち上がった。

「いっ、いまどこにいる。俺も会いに行くぞ!」

「もういませんよ」

「そうか。事前の目算どおり商人の従者だったのか? だとすれば商売は忙しかろうよな」

 それにしてももうちょっとくらいゆっくりすればいいのに……。

「いいえ、陛下。あの少年はいない・・・のです。この世のどこにも存在などしておりません。彼は幻です」

「なっ……、何をいっているんだ、世臣。彼に会ったのだろう?」

 呆然とする俺に、世臣は言った。

「彼は……」

 世臣は周囲を鋭い目で見回してから声を落とす。

「女性です、陛下。あの少年は女性が男装していたのです。女の子みたいに可愛らしいのもむべなるかな、彼の正体は女の子です」

「なっ……」

 俺は言葉を失った。

 なんだってぇ!?

「ど、どういうことだ! 女が男装!? 女が男装女が男装……いや、男装するのだから男ではないことは明か、女が男装というのは二重の意味になってしまうしな頭痛が痛い的な。ええ……どういうことだよ、男装が女の格好をしてるのか?」

 いかん。
 混乱して自分でも自分が何を言っているのか分からないぞ!

「落ち着きなさいませ、陛下。とにかくご報告いたします。彼の正体は巫貴妃様です」

「ふ、巫貴妃……!? 巫貴妃って、あの巫貴妃?」

「そうです、さきほど話題にも出たあの巫貴妃様です。兄御あにごが不穏な、あの巫貴妃様です」

「そんな馬鹿な」

 まずまっさきに頭に浮かんだ感想がそれだった。



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