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第八章
嫉妬が向けられる①
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同棲を始めてから、初めての二人で過ごした週末――
幸せなひとときが終われば日常が始まる。
週明け、蒼空さんはいつもより早めに出勤して行った。私はいつも通り家事をしてからマンションを出る。
ところが、マンションを出たところでいつもと違うことが起こったのだ。
「あれ? 凛花先輩?」
「え⁉」
突然名前を呼ばれたことに驚いて、声の主を探してキョロキョロしてしまう。
「あっ、梨乃ちゃん」
私のことを呼んだのは、後輩の梨乃ちゃんだった。
「先輩のおうちってこの辺でしたっけ?」
「え⁉」
梨乃ちゃんと、私の住んでいるマンションの話をしたことはないと思うが、どうしてそんな質問をされたのかがわからない。
「梨乃ちゃんはこの辺だったんだ」
「実家に住んでいたんですけど、半年くらい前にこの先のマンションに引っ越してきました」
「そうなんだ」
確かに私も今はここに住んでいるが、それは蒼空さんの住んでいるマンションであって私の部屋とは言えない。ここで下手な発言は避けたいと、話題を変えた。
「片桐部長もこの辺に住んでるんですよ」
「え⁉」
突然、蒼空さんの名前が出てきて驚いた。なぜ梨乃ちゃんが、蒼空さんのマンションを知っているのだろう。もちろん、人事が個人情報を社員に漏らすはずもなく、この辺りで見かけたのだろうか。
「先輩、遅れるから行きましょう」
「う、うん……」
出社前でのんびり話をしている時間はない。この状況にモヤモヤするが、問い詰めるわけにもいかない。
梨乃ちゃんは至って普通で、いつも通りだ。私の考えすぎなのだろうか……
会社の近くのマンションで、同じ方向だと見掛けることもあるだろうと、自分を納得させた。林先輩がいなくなってから、露骨にアピールしている風花とは違い、特に蒼空さんに対する態度も変わっていないのだ。蒼空さんのことをどう思うかと、質問された時に感じたモヤモヤもすっかり忘れている。
その日から、なぜか毎朝梨乃ちゃんと遭遇するようになった。まるで、私がマンションから出てくるのを、待っていたかのようなタイミングで現れる。蒼空さんと一緒に出勤することはないが、出入りには気をつけた方がいいだろう。
幸せなひとときが終われば日常が始まる。
週明け、蒼空さんはいつもより早めに出勤して行った。私はいつも通り家事をしてからマンションを出る。
ところが、マンションを出たところでいつもと違うことが起こったのだ。
「あれ? 凛花先輩?」
「え⁉」
突然名前を呼ばれたことに驚いて、声の主を探してキョロキョロしてしまう。
「あっ、梨乃ちゃん」
私のことを呼んだのは、後輩の梨乃ちゃんだった。
「先輩のおうちってこの辺でしたっけ?」
「え⁉」
梨乃ちゃんと、私の住んでいるマンションの話をしたことはないと思うが、どうしてそんな質問をされたのかがわからない。
「梨乃ちゃんはこの辺だったんだ」
「実家に住んでいたんですけど、半年くらい前にこの先のマンションに引っ越してきました」
「そうなんだ」
確かに私も今はここに住んでいるが、それは蒼空さんの住んでいるマンションであって私の部屋とは言えない。ここで下手な発言は避けたいと、話題を変えた。
「片桐部長もこの辺に住んでるんですよ」
「え⁉」
突然、蒼空さんの名前が出てきて驚いた。なぜ梨乃ちゃんが、蒼空さんのマンションを知っているのだろう。もちろん、人事が個人情報を社員に漏らすはずもなく、この辺りで見かけたのだろうか。
「先輩、遅れるから行きましょう」
「う、うん……」
出社前でのんびり話をしている時間はない。この状況にモヤモヤするが、問い詰めるわけにもいかない。
梨乃ちゃんは至って普通で、いつも通りだ。私の考えすぎなのだろうか……
会社の近くのマンションで、同じ方向だと見掛けることもあるだろうと、自分を納得させた。林先輩がいなくなってから、露骨にアピールしている風花とは違い、特に蒼空さんに対する態度も変わっていないのだ。蒼空さんのことをどう思うかと、質問された時に感じたモヤモヤもすっかり忘れている。
その日から、なぜか毎朝梨乃ちゃんと遭遇するようになった。まるで、私がマンションから出てくるのを、待っていたかのようなタイミングで現れる。蒼空さんと一緒に出勤することはないが、出入りには気をつけた方がいいだろう。
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