手のひらサイズの無限の世界〜初恋と青春は鍵付きで〜

せいとも

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第十章

夏休み明けの騒動④

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「竹内さん、北川さん、まずは先生のところへ話に来てくれてありがとう」
「いえ……。私達ではどうすることもできなくて……」
「そんなことないわ。お友達が悩んでいるのを見て見ぬふりもできるじゃない。こうして助けたいと思ってくれていることが大切なの」
「「……」」
「学校でも、度々スマホの使い方について注意をしているけれど、大人になっても使い方を間違える人がいるくらい、便利だけれど難しいものでもあるの。ふたりはすでに実感しているわよね?」
「「はい」」
「そんな便利で難しいものを突然小学校を卒業したばかりの子に使いこなせると思う?もちろん、全員が悪いことをしていると言っているわけではないのよ。ただの小さい機械ではなくて、たくさんの人とも繋がっているし、知らなくていいことも簡単に知ることができる」
「はい」
「竹内さんと北川さんみたいに、仲の良いふたりがふたりでやり取りする分には、何の問題も起きないと思うの」

 ふたりは『うんうん』と頷く。

「そもそも、スマホがなくてもお友達として気が合う子合わない子がいるでしょう?」
「はい……」
「これだけの人数の先生や生徒がいるんだから、考え方も違って当たり前だし、全員と仲良くできる人はいないと思うわ。そんな考え方の違う子達が、今回でいえばグループメッセージに一気に入ってしまったの。上手くいくと思う?」
「ううん」
「竹内さんと北川さんは、それが間違ってると気づけたし流されなかった。えらいと思うわ」
「戸惑いました。でも朱里ちゃんがいたから」
「私も由奈ちゃんがいたから」
「そうね。でも藤井さんには、ふたりのように早くに相談できる相手がいなかったのかもしれないわね」
「「……」」
「だから、声を掛けてくれる子達に流された」

 真鍋先生の言う通りだと思う。美雪は親しい友人を作りたかったのかもしれない。

 ただそれだけだった……。

「先生……」
「まだ、中学校生活は始まったばかりよ。先生が責任をもって学年全体で解決するわ」

 真鍋先生に相談して良かったと思えた。

「もしかしたら、藤井さん以外にも困っている子がいるかもしれないわね」

 由奈と朱里には美雪が目立って変わってしまったと思ったが、もしかしたら絵里香達のグループでも、同じような悩みの子がいるのかもしれない。

「先生お願いします」
「もちろんよ。もし、藤井さんが困ってふたりに何か相談するようなことがあれば、以前のように接してくれるかしら?」
「「はい」」
「ありがとう。さあ、明日はテストよ。あとは先生に任せて頑張って」
「「あ、はーい」」

 真鍋先生に話せたことで、先ほどまでのモヤモヤとした気持ちが晴れた。

 一歩踏み出したことを瑞希にも聞いてもらいたいと思う由奈だった。



 
 
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