手のひらサイズの無限の世界〜初恋と青春は鍵付きで〜

せいとも

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第十二章

文化祭②

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『由奈ちゃんへ

 文化祭の練習頑張っていますか? ピアノの伴奏に選ばれるなんてすごいね。吹奏楽部とクラスの伴奏、両方は大変だと思います。無理しないようにね。文化祭は、家族じゃないと見に行けないんだよね?残念。
 僕の学校は、先に体育祭があるので、今は暑い中で毎日練習しています。僕はクラス対抗リレーのアンカーに選ばれました。
 部活も秋の総体が始まり、練習と試合に忙しい毎日です。
 お互い頑張ろうね。
 瑞希 』

 体育祭のリレーで、アンカーを走る瑞希の姿を想像し、ドキドキする。男子校の体育祭はどんな感じなのだろうか。同じ学校に通っていたら、瑞希の走る姿に女子はキャーキャー大騒ぎだっただろうと想像できる。

 学校でも、かっこいいと言われている先輩がいるが、由奈は瑞希と比べてしまい全く何とも思わない。

 そのことを朱里に言ったら、「瑞希くんと比べたら可哀想だよ」と言われた。

「確かに」と妙に納得したものだ。

 朱里もいつからか、みーくんから瑞希くんと、由奈の影響で呼び方が変わっていた。幼馴染みの関係も微妙に変化するお年頃だ。


◇◇◇

 あっという間に文化祭の日がやって来た。

 由奈にとっては初めての文化祭。姉の由香にとっては最後の文化祭。

 父が仕事の都合で休みが取れなかったので、母が一人で見に来てくれる。

 午前中は全クラスの発表、午後からが文化部による発表が行われる。母は朝から張り切っていて、最初から最後まで見ると言っている。

「はぁ……」
「どうしたの?」
「緊張してきた。お姉ちゃんは緊張しないの?」
「しないことはないけど、あまり力が入りすぎると余計に失敗するから、なるようになると思うことにしてる。由奈、クラスの伴奏は、ピアノからあまり観覧席が見えないから大丈夫よ。吹奏楽の発表の方が、舞台から客席がよく見える。でも、仲間がいっぱいいるんだから、心強いでしょう?」

 確かに姉の言う通りだ。

 クラスの伴奏は一人だから間違えてしまうと目立つとプレッシャーだったが、ピアノから指揮者を見るのでお客さんの顔はほとんど見えない。

 クラリネットを吹く時は、客席がよく見えるが頑張って練習してきた仲間がたくさんいる。


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