手のひらサイズの無限の世界〜初恋と青春は鍵付きで〜

せいとも

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第十二章

文化祭⑧

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 その後、学校内を朱里と回るも、瑞希に会うことはできなかった。

「ただいま」
「あっ、由奈おかえり」
「お母さん、なんで瑞希くんが」
「フフッ、驚いた?」
「驚いたも何も、なんで教えてくれなかったの?っていうか、いつから決まってたの?」
「二日くらい前にたまたまみーくんのママに会ったのよ。で、文化祭の話になって……」
「それがどうして瑞希くんが来る話になったのよ」
「一家族二人までで、一人で行くのって話をしてたら、みーくんママが一緒に行ってもいい?って言ったから、ぜひってお誘いしたの」
「⁇」

 瑞希の母が、なぜ瑞希になったのかが意味がわからない。

「で、みーくんママがみーくんに文化祭の話をしたみたい。ちょうど学校が休みで部活もオフだからみーくんが行きたいって言ったみたいで、今日待ち合わせの場所に行ったらみーくんがいて、お母さんも驚いたわよ」
「え⁈」
「みーくんが、母に代わってもらいましたって言うから笑っちゃったわ。あまりのイケメンにお母さんがドキドキしちゃった♡」

 語尾にハートマークが見えそうな、母のテンションに苦笑いだ。

「午後の発表の準備をしている時、客席側がにぎやかだったんだけど」
「あー、みーくんイケメンで目立つから。みーくんの姿を見つけた女の子達が、久しぶりって言いながら押し寄せてきたわね。でも……。ククッ」
「でも、幕が開いた時にはいなかったよね?」
「それは、みーくんがビシッと言ったからよ。ププッ」

 先程から母は、何かを思い出しては笑いを堪えている。

「なんて言ったの?」
「君達、もちろん演奏を聞きに来たんだよね?早く席に座ったらどう?騒がしいと他の方達に迷惑だ。僕は純粋に演奏を楽しみに来たんだって。しっかりしてるわよね」
「なんかすごいね。誰が声を掛けたかは、なんとなく想像つくけど……」
「あれだけはっきりと正しいことを言われたら、何も言い返せないわよ。周りの目もあるし、黙って退散していったわ。みーくん本当にカッコよかったわよ~」

 瑞希は、完全に母までも虜にしている――。


 
 
 
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