手のひらサイズの無限の世界〜初恋と青春は鍵付きで〜

せいとも

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第十四章

入院③

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 近くの総合病院に由奈を乗せた車が到着した時には、病院の入口で由奈の母親が待っていた。

「先生!」
「竹内さん、病院には連絡を入れていますので、このまま僕が抱えて連れて行きます」
「ありがとうございます。由奈大丈夫?」

 痛みで母の声も聞こえていない。受付で名前を告げるとすぐに救急の診察室に案内された。そのまますぐに検査され、母が診察室に呼ばれた。

「先生、由奈の痛みの原因は」
「お母さん落ち着いて下さい。由奈さんは、急性虫垂炎です。まずは一週間ほど入院して抗菌薬で炎症を抑える治療をして、腹腔鏡手術をするか決めましょう」
「虫垂炎……」
「はい。抗菌薬で炎症を抑えても三割ほどが再発するので、状態をみて腹腔鏡手術で虫垂を摘出するか決めましょう」

 医師に一通りの説明を受けて入院手続きをするために、一旦診察室を出ると廊下には先生の姿があった。

「竹内さん、由奈さんは?」
「急性虫垂炎で、抗菌薬治療で一週間ほど入院することに」
「そうですか」
「治療の結果次第で、再度入院して手術の可能性もあるようです」
「そうなんですね……」
「先生方も、テスト前の忙しい時期にご迷惑をお掛けしてすみません」
「いえいえ。テストのことは気にせず、しっかり治療してから元気になって登校してください」
「わかりました。ありがとうございます」

 由奈は初めて入院することになった。

 由奈の母が手続きをして病室にいくと、ベッドに寝て点滴をされている由奈が、先ほどよりも穏やかな顔をして眠っていた。病院に到着した時の痛みは引いているようだ。

 今朝は、少しお腹が痛むと朝食はあまり食べずに出かけたが、まさか虫垂炎だったなんて思いもしていなかった。

 先生からの電話では、仲良しの朱里ちゃんが連絡してくれたと言っていた。朱里ちゃんには迷惑をかけたが、一人の時でなくて本当に良かった。学校から連絡があった時には動転してしまった。命に係わる病気ではなかったが、それでも娘の入院には動揺してしまう。

 夫と娘の由香には連絡を入れているが心配しているだろう。由奈が眠っている間に連絡を入れることにする。


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