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番外編
初めての大型連休の過ごし方 連休8日目-温泉でしっぽり?-
しおりを挟む繋いだ手をグイグイと引かれ、引き摺られるようにして連れていかれて案内された客室は、本館横の玉砂利の竹林を抜けた先の開けた場所にあった。
外観はこじんまりとした古民家のような佇まいなのに、内装はリノベーションされていて、モダンな和洋室の作りだ。
「え、凄!部屋広い!大きな露天風呂が付いてる!うわぁ!」
部屋に一歩踏み入れると、そこは広々としたリビングで、その向こう側の開放的な大きな引き戸の窓の先にはほこほこと湯気の立つ源泉掛け流しの露天風呂があり、私は思わず感嘆の声を上げた。
「気に入って貰えて良かった。早速お風呂入る?」
「うん、入る!」
「そ、わかった。じゃあ入ろっか。」
そう言って弦はテキパキとお風呂の支度を始めた。
やった、お風呂♪温泉♪
素敵な部屋に露天風呂を目の前に、気持ちが浮ついている私は何の気なしに返事を返したが、言った後にふと気が付く。
ん?ちょっと待てよ。
じゃあ入ろっか?……入ろっかっていった?
状況が上手く飲み込めず目をぱちくりしていると、にこにこご機嫌な弦が、クローゼットから浴衣と内湯からタオルマットとバスタオルを持っていそいそとやってきた。
「んね、まさかと思うんだけど……一緒に……」
「入るに決まってるじゃない。ここからお湯に浸かってる色っぽい名月を見るのも良いけど、やっぱり一緒に入って堪能したいよね。」
「…ソウデスヨネ。」
しれっと予想通りの回答をしてにっこりと綺麗な笑顔を向ける弦を見て、思わず白目になる。
ていうか、今日私は何度白目になるのだろうか……
弦はそんな私の服をあっという間に脱がせて、気が付くと残すは下着のみとなっていた。
その姿に目を細めると、弦はシャツを脱ぎ上半身だけ裸になると、ゆったりとソファに腰を降ろした。
「ふぁっ!弦…いつの間に……」
「ふふふ、その格好唆るなぁ。何?下着も脱がせて欲しい?」
「なっ……」
パッと慌てて弦を見ると、そこにあったのは飢えた肉食獣が獲物に狙いを定めたような、静かだけれども激しい欲を湛えた瞳だった。
弦の獣の様な瞳に射すくめられて、私は羞恥心で両腕で身体を隠すように覆い、真っ赤になって俯いた。
「ほぉら、名月。折角の綺麗な身体、隠さないでちゃんと俺に見せて?」
弦はリビングのソファに足を組むとその上に頬杖を付いて、目を細めてじっと私のあられもない姿を、上から下まで舐めるように見ている。
その弦の熱い視線に私の身体はふるりと震え、羞恥で顔が焼けるように熱くなり、心拍数が上がる。
日に焼けていない白い肌が徐々に赤く染まるように色づいていく様子を見つめながら、弦は艶然とした笑みを浮かべている。
ふと絡んだ弦の欲の篭った視線から逃れるように、紅潮した顔を胸の前で組んだ腕に埋め、震える声を絞り出した。
「…っ、みな……いでぇ…」
弦からの返事はなく暫し沈黙が流れる。
不安に駆られ、腕に顔を埋めたまま視線だけをちらりと上げると、弦は先程と全く変わらない表情で艶然と笑みを浮かべて私を眺めていた。
その絡みつくような視線に心臓がドクンと跳ね上がり、緊張と羞恥に吐く息が震えた。
弦は私の様子にくすりと笑いを零すと、優しいけれども拒否を許さない声で甘く命令をする。
「名月、腕、どけて。」
弦の熱を含んだ甘い声に私の身体の奥がずくりと震えた。
弦の視線と言葉に抗うことができず、私はゆっくりと、胸の前を隠していた腕をひとつずつ外していく。
そうして、下着を身につけているだけの姿を弦の目の前に曝け出すと、ゆるりと弦がソファから立ち上がり向かい合うように私の目の前に立ち、熱いまなざしで私を見つめて悩ましげな吐息を漏らした。
「あぁ、名月、とっても綺麗だよ。毎日抱き合ってるからかな、名月の白い肌に沢山俺の華が咲いてるね。……凄く気分がいい。」
「…や、やぁ……言わない…で……」
「どうして?名月が俺の物だって証なのに。……それで、どうする?下着、このまま俺に脱がされたい?それとも自分で脱ぐ?」
パッと顔を上げると、目の前の弦はにっこりときれいな笑顔を湛えている。しかし、その瞳の奥は激しい情欲に染まっており、私を捉えてはなさなかった。
弦は私の頬に手を添えると、すすすっと指を首筋の方に滑らせていく。
「名月、君はどうしたいの?ほら、言ってごらん。」
そう言いながら、弦は私のブラジャーのストラップを指でなぞった。その指の動きにゾクリと背筋が粟立つ。
頭上から掛けられた甘ったるい弦の声は、まるで濃密でトロトロなシロップが上から垂らされてトロリと身体中を伝っていくように、私の隅々まで広がっていき思考を蕩かせていく。
もう、そんなのどちらでもいい、早く弦に触って欲しい…
身体が火照って仕方がなく、もどかしさに後押しされるように自然と言葉が口から出た。
「…じ、自分…で……脱ぐ……ま、す……」
『脱ぐ』といったらいいのか『脱ぎます」と言ったらいいのか迷った結果の『脱ぐます』……
なんだ?『脱ぐます』って……
「ひゃぁぁぁ……」
自分のおかしな言葉のチョイスに、ハッとする。
頭が正常になると、途端に現状が見え、自分の晒している痴態と馬鹿さ加減に恥ずかしくなり真っ赤になり、俯き顔を覆った。
その様子に弦は目を見開き、そしてすぐさま盛大に吹き出した。
「ぶっ……脱ぐますって……」
「…い、言い間違えただけだもん……」
「言い間違え、ね。……脱ぐ…ます…ぷくく…」
「そ、そんなに笑わなくてもいいじゃない!弦の馬鹿!」
笑いを噛み殺しながら揶揄うので、私がムキになって弦の胸をポカポカとたたくと、弦は私をぎゅっと抱きしめて楽しそうに声をあげて笑いだした。
確かに、あのタイミングで言い間違えたのは…空気読めないし、何ともかっこ悪いのはわかっているが、笑われる意味がわからないので、ムッとしながら釈然としない思いを吐露する。
「ふははは、名月は本当に可愛いなぁ。可愛くて面白くて最高だ。本当見ていて飽きないよ。」
笑い過ぎたのか目に薄らと浮かんだ涙を指で拭い弦が言うので、私はむくれて身を捩りながら言い返す。
「失礼な。私、至って真面目だもん。」
「知ってる。真面目だけど抜けてるんだよね。そこが可愛くて仕方がない。」
「それは、褒めてるの?貶してるの?どっちなの?」
「さぁ?どっちだろうね。」
いや、明らかに貶してるだろう。ジト目で不服そうに言うが弦は意に介した様子はなく、片口角を上げて意地の悪い笑みを浮かべた。
「い、意地悪だ……って、くしゅん!」
恨み言を言おうとした時、背筋がぞくぞくっとしてくしゃみが出た。
瞬間、弦の顔色が変わり、意地悪そうなから表情から打って変わって優しく心配そうな表情に変わり、私を抱きしめ背中や腕など身体中を摩り始めた。
「初夏とはいえ竹林の中だから寒かったよね、ちょっと意地悪し過ぎたね…ごめんね。そろそろ温泉入ろっか。早く温まらないと……時間が惜しいから、やっぱり脱がせてあげるよ。」
そう言って背中を摩っていた弦の手が素早く私のブラジャーのホックをパチンと外すと、次にショーツに手を伸ばしてくる。
私は羞恥で真っ赤になりながら弦の手を取り、慌てて制止の声を上げた。
「いやいやいやいや、大丈夫。自分で脱ぐます……ってあ……」
しまった…と思い、ちらりと上目遣いで弦を見上げると、弦は顔を逸らして肩を震わせている。
「……げ、弦?」
「ま、また言ってる…脱ぐます……くくくっ…わかったよ。じゃあ先に浸かってるから、ショーツ脱いだらおいで。」
弦はパッと私のショーツから手を外すと、楽しそうにくつくつと笑い私の頭をぽんぽんと撫で、カラカラと露天風呂に繋がる大きな窓を開けた。
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