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プロローグ
【プロローグ】幼い頃の記憶
しおりを挟むいつだったか、遠い昔の事でよく覚えていないが、多分、隣の幼馴染の家族と一緒に近所の土手にピクニックか何かに行った時だったと思う。
春の暖かい日差しの中、持ち寄ったお弁当を食べた後、親達の見守る中、広い原っぱで俺達は花冠を作っていた。
兄と妹達は、器用にシロツメクサをせっせと編んでいたのに対して、俺ときたら上手く編めずにもたもたしていて。
あれこれと苦戦しながらもようやく出来上がった、ぐちゃぐちゃで不格好な花冠。
出来上がった時の達成感と喜びを伝えたくて、母親のところに持って行こうとした時、それを目の前の香乃果が強引に引っ張り、取り上げると凄く馬鹿にした。
「わたるのぶきっちょ!下手くそ!こんなの誰も貰ってもうれしくなんかないわよ!」
そう言うと香乃果は、あろう事か花冠を地面に投げ捨てて踏みつけた。
目の前で、ぐちゃぐちゃな花冠が更にぐちゃぐちゃになっていくその様子を俺は呆然と見ているしかなかった。
「あ、あぁ…このちゃん……ひ、酷いよぉ……」
俺は不器用ながらも一生懸命編んだ花冠を踏みつけられた事が悲しくて鼻の奥がツンとしてきた。泣くまいと思えば思うほど涙が滲んで、やがてボロボロと瞳から零れ落ちていく。そんな俺を見て、香乃果は一瞬傷ついた表情をして眉を寄せ立ち尽くした。
「こ、このは悪くないもん!…わたし、こんなの絶対にいらないんだから!!!」
香乃果は鼻息荒くそう怒鳴ると、出来上がった花冠を持って、先に向かっていた兄と妹を追いかけて母親達の所に走って行った。残された俺はその姿を呆然と眺めていると、また涙がじわりと滲んできた。
「わっくん、あっちにきれいなお花が咲いてるよ。いこ?」
足元でぐちゃぐちゃになった花冠を見つめながら、涙を零して泣いていると、穂乃果が徐に俺の手を引いて歩きだした。
泣き虫の俺は、香乃果にいつも「男の子なのにみっともない」と罵声を浴びせられるのだが、穂乃果は決してそんな事はしなかった。
俺は涙目で黙って黙々と歩く穂乃果の背を見つめていた。
やがて、少し開けた所に出ると、穂乃果はパッと手を離して駆け出した。
「わっくん!ほら、みてみて!」
顔を上げて穂乃果の声のする方に視線を遣ると、そこには一面薄いピンクの可愛い花が咲いていた。その綺麗で幻想的な風景に思わず感嘆の声が漏れる。
「うわぁ…きれい…ピンクのじゅうたんみたい。」
「ね、きれいだね!わっくんもおいでよ!」
そう言うと、穂乃果はお花の絨毯にペタンと座って俺を手招きした。
俺はその手招きに誘われ駆け出した。
そして、おずおず穂乃果の隣に腰を降ろすと、待っている間に摘んでいたピンクの花を、俺のぐちゃぐちゃで不格好な花冠に刺していく。
ボコボコに穴の空いた箇所に、ひとつ、またひとつとピンクのお花が咲いていき、あっという間に白とピンクの可愛い花冠が出来上がる。
そして、出来上がった花冠を俺に差し出しながら、ふわりと穂乃果は微笑んだ。
「わっくんのがいちばんかわいくなったね。」
そう言って、ふくふくとした頬をピンクに蒸気させて微笑む穂乃果の笑顔に、俺の幼心が高鳴り思わず、穂乃果の頭に手渡された花冠を載せていた。
「これはほのの方が似合うから、ほのにあげるよ。代わりに俺には、ほのが作ったのちょうだい。」
「ありがとう!わっくん、大好き!ほのおおきくなったらわっくんのお嫁さんになりたいな。」
そう言って、その子キラキラした笑顔で破顔した。
ドクンと心臓が跳ねて、早鐘を打った。
瞬間で、ただの幼馴染の女の子が、物凄く可愛く見える。
なんだこれ?顔が熱くなってドキドキが止まらない…
俺はドキドキと早い鼓動を打つ胸に手を当てて深呼吸をした。
甘い花の香りと穂乃果の匂いに胸がいっぱいになり、何だか泣きそうになった。
この気持ちがなんなのか、この時の俺にはわからなかったが、今の俺ならわかる。
あの時、俺は幼馴染の女の子、穂乃果に恋に落ちたんだ。
それが俺の幼い初恋の記憶。
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