【R18】初恋やり直しませんか?

夢乃 空大

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第二章

第34話 クリスマスパーティ

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 あの後、兄と交代でシャワーを浴びに浴室に行くと、乱暴に脱いだ服を丸めてランドリーバスケットにぶち込んだ。

 イライラが治まらない。

 浴室に入り蛇口を捻ると柔らかな水流のお湯がシャワーヘッドから降ってくる。
 シャンプーを泡立て髪を洗うと、汗が流れてさっぱりはした。だけど気持ちスッキリ晴れなくて、今度はヘッドのツマミをくるりと変えて強めのジェット水流にして頭の上から浴びる。

 滝行のように無心で強めの水流が頭上から落ちてくるのを受け止めていると、痛みと共に嫌な気持ちも流れて消えていくような気がしてきた。それを浴びること数分、漸く頭が冷えて荒立っていた気持ちが随分と落ち着いてきた。
 俺は頃合を見計らって蛇口を閉めシャワーを止めると、大きく深呼吸をした。
 そして、ポタポタと水滴を垂らす髪を掻き上げ、大型犬のように頭をブルブルと振って水気と煩悩を飛ばすと、俺は浴室を出た。

 ガシガシと軽くタオルドライをした後、ドライヤーで髪を乾かしながら先程までの事を思い出す。

 事ある毎に俺を揶揄って遊ぶ兄が、今日はいつもにも増して愉しげに俺を揶揄ってきた。意味もなくそんな事をしない兄の意図はわからなかったが、まぁ、そのおかげで覚悟の最後の最後が決まったので、そこだけは感謝するけど……

 そんな事を考えていると、不意に頭にあの意地悪そうな笑顔が浮かんで来て、思い出して若干…いやかなりムカムカしてきて、首に掛けていたタオルをランドリーバスケットに投げつけた。

 しかし、兄のあの鋭さは一体何なんだろうか。
 俺の気持ちからやろうとしてることまで全部バレてるとか……

 部屋に監視カメラか盗聴器でも付いてるんじゃないかと思ってしまう程、兄は俺の状況を的確に指摘してくる。
 そして、揶揄ったり口出しはしてくるが、決して協力はしてくれないらしい。
 だからこそ、更に腹が立つのだが、協力されたら協力されたでそれもなんだかなぁという気分になるのは確かなので、現状、兄のとった立ち位置は正しいのかもしれないが……


「だけど、やっぱり腹立つなー。クソっ!」


 結局のところ、どんな事を思おうと腹は立つので、着替えに袖を通しながら兄に対しての不満をひたすらブツブツと独り言ちて解消しようとしていると、ピンポーンと玄関のチャイムがなり、玄関の辺りが騒がしくなってきた。

 どうやらお隣家族が到着したようだ。と言うことは、これからパーティが始まると言う事だ。


「よし!いっちょ頑張るか!」


 俺は顔をバチンと両手で叩いて再度気合いを入れ直すと、脱衣所を後にしてリビングへ向かった。



 ◇◇◇



「渉、遅ーい!」


 リビングのドアを開けると、サンタ帽を被った…さっき玄関でみたまんまの格好をした母親に出迎えられる。


「母さんがシャワー浴びて来いって……」

「はいはい、言い訳はよろしい。とりあえず、渉が来たから仕切り直しでもう1回乾杯するよー!」


 ドヤされながら、リビングに入ると既にパーティは始まっていて、大人たちはシャンパン片手に談笑していた。母親の理不尽さにイラッとしながらも、俺はテーブルのコーラを手に持った。


「久しぶりのパーティ楽しみましょう!メリークリスマス!」


 俺がコーラを手にしたのを確認すると、母親の乾杯の音頭に合わせて、各自手に持ったドリンクを掲げると、また各々で談笑を始める。

 風呂上がりで喉がカラカラだった俺は一気に手元のコーラを飲み干すと、オカワリを注ぎながら香乃果を探すようにリビングをぐるりと見回した。

 ツリーの辺りで穂乃果と優が聖兄と一緒に楽しそうに話をしていたが、そこに香乃果はいなかった。
 テーブルに掛けて何やら難しい話を始めていた両親の方を見ても香乃果は居ない。
 パーティホールのように広い場所ならまだしも、せいぜい30畳程度のリビングだ。視界に入らないという事は、ここには香乃果は居ないということだろう。であれば、一体香乃果はどこにいるのだろうか。俺はテーブルにいる両親に訊ねた。


「沙織ママ、あの…香乃果は?」

「あ、わっくん、その事だけど、ちょうど話したいと思ってたのよ。そこに座ってくれる?」

「あ、は、はい。」


 固い表情の沙織ママに近くに座るように促されて俺が席に着くと、母親が切り分けてくれたターキーを目の前皿に置きながら沙織ママに苦言を呈した。


「沙織、気持ちはわかるけど、話は食事の後にしましょ。渉もお腹空いたでしょ?ほら、みんなも席に着いて。」


 母親がそう言うと、聖兄達も話を辞めてそれぞれ食事の為に席に着いた。

 目の前にはサラダやスープ、ベイクドポテト、ローストビーフ、そして、中央には大きな丸太……ブッシュ・ド・ノエル

 どれもとても美味しそうで俺の空腹の腹がぎゅうっとなる。


「じゃあみんな好きなものを好きなだけ召し上がれ。」


 俺の腹の音を聞いた母親は苦笑いをすると、そうテーブルのみんなに声を掛けた。母親の合図で、みんなそれぞれに好きなものを皿にとって食べ始めた。

 ターキーとサラダは母親、ローストビーフとベイクドポテトは沙織ママ作だけあって、物凄くおいしかった。
 そして、スープは…味はとっても良かったのだが、何となく中の人参と玉ねぎ等の野菜が不揃いだなと思ったらなんと父親ズが作ったらしい。話を聞いて、なるほどそう言う事か、得心した。

 母親に褒められてドヤ顔をしている父親の表情に思わず笑いが零れた。

 暫く参加していなかったパーティだが、やっぱり参加すると楽しいな、と思いながら俺は父親ズ作のスープを口に運んだ。



 ◇◇◇




「どう?美味しい?」


 どれもとても美味しくて、俺は夢中でそれらを口いっぱいに頬張ってもぐもぐ食べていると不意に沙織ママに声をかけられた。
 咀嚼中の為、喋れない俺は黙ってコクコクと頷くと、母親ズは満足そうに微笑んだ。


 一頻り食べ終わり食事が下げられると、変わりに中央にあったブッシュ・ド・ノエルが切り分けられて目の前に並べられる。

 それを口に運びながら、沙織ママが口を開いた。


「先日、香乃果の三者面談があったんだけど、それについてわっくんは何か聞いてる?」

「いや……何も。」


 と言うより、この2年口すら聞いていないのだが、当然そんな事は言えず、俺は口を噤んだ。
 沙織ママは俺の様子に短く嘆息すると、何か意味ありげな言葉を漏らした。


「そう…なら私たちから何か言うことはないわ。それより、わっくん、君は罪深い男だね……」

「へ?何ですか?」


 罪深いって……
 確かに、香乃果については相当罪深いとは自覚があるが……


「本人達がそれでいいというなら、うちから何か言うことはないんだけどね。ねぇ、由紀?」

「まぁ……ね。私もさっき初めてきいて吃驚しちゃったよ。それならそうと、何でもっと早く言わないの?」


 本人達?もっと早く?

 母親ズの言っている事が何が何だかわからず、混乱して固まっているとそこに父親ズも混じってあれこれ言い始める始末。


「は?え?何?どういうこと?」


 痺れを切らして俺が訊ねると、キョトンとした顔で母親が驚愕の一言を言った。


「どういうことって…許嫁、交代するんでしょ?」


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