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第三章
第52話 月曜日から……
しおりを挟む心配したアルコールの影響はなかったのだが、過保護な兄によって外出禁令が出されて、部屋から出ることもなくダラダラと過ごした週末。
夢なんていつぶりに見たのだろうかと思う程、久しぶりに夢を見た。それも3日連続で。
最初の2日間の夢は、香乃果が金髪の外国人だったり、栗毛の外国人の男と仲睦まじく寄り添っている夢で寝覚めは最悪だった。
現実的に考えて、まだ半年そこらであっちの国でのステディが出来るとは考えられなかったし、何より俺の知らないヤツだったからまだ何とか夢だと割り切って持ち堪えられた。
だけど、3日目の日曜日の夜に見た夢は最悪だった。
その夢は、香乃果と深澤の結婚式に参列している夢だった。あまりにも現実的で、最初は戸惑ったが、途中で夢だと気が付いてからはガバッと飛び起きた。
知ってるヤツで今現在進行形で付き合ってる彼氏であるアイツも、留学先は聞いてないけれど来年から留学すると風の噂で聞いていた。
もしも、アイツの留学先が香乃果と同じ場所だったら……
色々と話を聞いているうちにアイツの香乃果への執着の程度が伺え知れたので、その可能性は多いにある訳で……
かなり早くに目が覚めたが、そんな事を考え始めたら目がギンギンに冴えてしまった。
そんな気が狂いそうで最悪な目覚めを体験した週明け月曜日、寝不足と不快感で俺は朝からゲンナリした気分で学校向かった。
フラフラしながら漸く到着するして席に着くと、今一番会いたくなかったヤツ…猫実がニヤニヤ顔でやってきて、まだ登校していない隣の席にガタッと音を立てて座った。
「なぁ瀬田、お前あの日、大丈夫だったの?」
猫実は机に頬杖をついてニヤリと笑うと、開口一番に気持ちの篭らない顔でそう言ったので、カチンと来た俺は最初無視しようかと思った。
だけどこうなった原因をよくよく考えてみると、無理矢理合コンへ引っ張っていったコイツが原因で元凶ではないか?と気が付く。
それなのに、なんだか楽しそうに目の前でクスクスと笑う猫実……
段々イライラして来て、嫌味の一つでも言ってやらないと気が収まる気がしない。
ギロリと睨むように猫実を一瞥して、俺はイライラをぶつけるように悪態を吐いた。
「はっ!それ、お前が言う?大丈夫なもんかよ。てか、なんで見ず知らずの人に俺を託したんだ?お前が介抱してくれたら良かったじゃねーか。」
しかし、俺の渾身の嫌味と悪態を当の猫実は華麗にスルーすると、片目を瞑って首をこてりと傾げた。
「んー、ごめんね。でも、瀬田だって美味しい思いしたでしょーよ?」
全く悪いと思っていない顔でごめんねと言われても、全然嬉しくない。寧ろイラつきが増すだけだ。
俺は楽しそうにしている猫実を睨め付けると不快そうに溜息を吐いた。
それよりも、美味しい思いって……
ふと先程の猫実の言葉を思い出して考える。
美味しい思いよりも寧ろ、アルコールの件とか、遊ばれた件とか、号泣した件とか……
俺にとってはあまり思い出したくもない事ばかりだった気がする。
思い出して、思わず白目になる。
横目で猫実をチラリと見ると、良からぬ事を考えているような悪い笑顔を浮かべている。
まさか……ね。
聞きたい気もするけれど、聞きたくない気もする。
そう思いながら恐る恐る猫実に訊ねてみる。
「あの、さ…美味しい思いって……」
「ん?そんなの決まってるじゃん。紗和さんと寝てないの?」
「寝る?」
「何カマトトぶってんのよ。セックス。したでしょ?」
「セッ……なっ……」
猫実の言葉の意味を理解すると、途端にカッと顔が熱くなり、動悸が激しくなる。
お、美味しい思いってそういうことかーーーーーー!!!!
全く何を言い出すかと思ったらいきなりセックスとか……マジで勘弁してほしい。
猫実はアワアワしている俺を横目に見ると、組んだ指をクルクルと回しなが楽しそうに言った。
「ていうか、俺の把握してる限りだと瀬田、初めてだよね。どう?お姉様に手解きして貰った感想は?」
「な……そ、んなん、してねーわ!て、てか、第一あの人婚約者いるじゃねぇか!ありえねぇだろ……」
顔が熱い……熱すぎる。
ぶわわっと毛穴が開いて湯気が出てる気がする。
俺は真っ赤になりながらも必死に否定する。
「うん。そうだね。それ、何か問題ある?」
焦る俺に対して、落ち着き払った猫実は眠そうに欠伸をしながらそう言った。
そんなことよりも何よりも、今、コイツ結構な下衆発言をした気がするのだが……
驚きに目を見開いて猫実をガン見する。
「そうだね……じゃねーわ!!!婚約者いる人とどうにかなるわけなくね?てか、お前知ってたんだろ?」
「うん。」
有り得ない発言に声を荒らげるも、猫実は相変わらず涼しい顔をして俺の問いかけに頷いた。
その俺の言葉を全く意に介している様子が無いところに、若干の呆れを覚えながら、同時にムカムカが募っていくが、猫実の眼に曇りはない。
もうどうにでもしてくれと、なんだか脱力してしまい、額に手を当てて俺は溜息を吐いた。
「って、知ってたならさぁ……」
「まぁまぁ。でも、ヤるだけなら婚約者がいても関係なくない?」
俺が呆れ気味にそう言うと、猫実はいつも通り飄々とナチュラルに下衆な発言をする。
猫実がさも当たり前のように言うので、そうなのかなぁ…と危うく流されそうになったが、はたと正気に返り踏みとどまると、俺は猫実に苦言を呈した。
「いや、それは流石に……いやいやいやいや、どう考えてもダメだろ?!」
「ふぅん。じゃあ、清廉潔白何もなかったんだ?」
うっ……そう言われてしまうと……
香乃果と間違って抱きついたりとか……
頬とか額にキスしちゃったり……
なんからその場の雰囲気に流されて同志のハグしちゃったり……
うん。清廉潔白ではないな。
だけど、グレーであって……
とかなんとか頭の中でグルグル考えてしまって、ハッキリと答えが出せないまま、
「う……な、何にも……って程でもないけど……なかった、と思う。」
と、俺はツッコミどころ満載な返答をすると、当然、そんな楽しそうな状況を猫実が見逃すはずもなく……
片口角をあげて意地の悪い笑顔を浮かべた猫実は、次の瞬間震え上がるような恐ろしい言葉を口にした。
「うん?なになに?さては……何かあったのかな?事と次第によっては俺、瀬田の事、売らないといけなくなるんだけど?」
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