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1章
4話
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「お前ら!もう少し持ち堪えろ!じきに応援が来る!それまでこいつらが町に行かねえように踏ん張れ!」
団長の怒号に団員たちは己を奮い立たせて魔物に対峙した。
「団長!私はあちらへ応援に行きます!」
声を投げながら魔物に押されている方へ馬を走らせた。
「気をつけろ!無茶だけはするなよ!」
「はい!」
.....これは、夢か....?
いや、夢じゃない。この光景は確かに見たことが
ある。
ただ、それを上から見下ろすようにして見ているということはやはり夢か。
しかし、私は死んだはずでは....?
しかも何故記憶を辿るようなものを見せられているんだ?
訳もわからず遠ざかる自分を見つめていたら急に場面が切り替わった。
今度は音がなく映像だけが流れている。
私が魔物に取り囲まれている場面だ。
これで私は死んでしまったのだろう。
死んでもなお悪夢を見続けろということか?
だが、そこに魔物を蹴散らしながら進んでくる人影があった。
———あれは、ハルトだ。
私はまだ気づいていないのか動くのもやっとの体を動かしてなんとか魔物を倒している。
だがやはり限界だったようで魔物の攻撃に剣を落とし、力なく膝をついた。
生きるのを諦めた私に魔物の牙が近づく。
だがそこに、ハルトが間に合ってしまった。
———嘘だ.....。嘘だ、....嘘だ!
これは現実なんかじゃない!
私と魔物の間に入り込んだハルトは私が受けるはずだった魔物の牙を全身で受け止めていた。
ずるりと力なく崩れ落ちるハルトを私は呆然と見つめているだけ。
嫌だ!ハルト!なんで!
声も届かず手を伸ばすがどんどん遠ざかっていく。
待って!死なないで!ハルト!
子供のように泣き叫んでいると突然なにかに包まれた。
暖かいそれに縋りついて叫ぶ。
お願いです!助けてください!ハルトが!
「———い、おい!落ち着け!大丈夫だ!」
突然耳元で声が聞こえ目を開けると誰かに抱きしめられていた。
私が静かになったからか身体を離すと心配そうな瞳と目が合う。
その瞳の色にはっと息を呑む。
ハルト以外にも黒を纏う者がいたのか。
「大丈夫か?怖い夢でも見たのか?」
「夢.......?」
「ああ。随分うなされてたぞ」
そうか....、あれは夢だったのか....。
よかった....。
安心したらぽろぽろと涙が零れてしまった。
怖い夢を見て泣くなど子供のようで恥ずかしく、必死で止めようとするがなかなか止まらない。
「おい、そんな怖い夢だったのか?それなら我慢せずに泣いとけ。スッキリすんぞ」
頭をぽんぽんと撫でられ再び抱きしめられた。
そんな優しい扱いを受けたことがなかったのでさらに涙が溢れる。
漏れそうになる声を押し殺し涙が止まるまで泣いた。
こんなにも感情を曝け出したのは初めてじゃないだろうか。
「あ、あの、ありがとうございます。もう大丈夫です」
さすがに恥ずかしく相手の顔が見れずに俯くと顎に手をかけられ、ぐいっと強制的に顔を上げられた。
「あーあ、綺麗な目が腫れちゃってるじゃねえか」
き、綺麗...?
ハルトの他にもそんな事を言う人がいるなんて。
と、いうか少し近いのですが....。
こんなに間近で人の顔を見ることがなかったのでドキドキしてしまう。
「ちょっと待ってろ」
そう言って奥へ行ってしまった。
そういえばここは何処なのだろう。
先程のが夢だとしても魔物の暴走が起こった事は事実だ。
あれからどうなったのだろうか。
それに自分も助かったとはいえ相当な傷を負っていただろう。
下半身に少し違和感はあるが、他の傷が綺麗に治っているということはあの人が助けてくれたのだろうか。
布団をめくると下も身につけていない事に驚きはしたが治療のためだったのだろうと納得した。
奥に行った男の人はタオルを持ってすぐに戻ってきた。
持ってきたタオルを目元に押し当てられる。
「わっ、熱っ」
「これ当てとけ」
始めは熱さに驚いたがどんどん気持ち良くなってきた。
「あの、あなたが助けてくださったのですか?」
目を隠した状態で失礼だとは思ったがゆっくりもしていられない。
「あー、あんなとこいたら死んでたぞ」
「助けて頂きありがとうございます。あの様な状況下の中助けて頂いたということはかなりの実力者とお見受けいたします」
「はぁ?あの程度の距離を運んだだけで実力者になれてたら誰も苦労しねえだろ」
「運んだだけ...、と申しますと付近に魔物はいなかったのですか?」
「魔物ぉ?んなもん現代にいるわけねえだろ。頭でも打ったか?」
「魔物が、いない...?」
そんなはずはない。確かに魔物はいたはずだ。
この人が見てないということは追い払った人が他にいるということか....?
あの程度の距離、ということはここはそこまで離れた場所ではないのだろう。
しかしこんな立派な部屋があの街にあるとは思えないし、魔物の暴走のことを知らないのも妙だ。
「ここはククリという街ではないのですか?」
「ククリ?聞いたことねえな。ここは目黒だが知らずにぶっ倒れてたのか?」
「メグロ....?ユグドラの森の近くにそんな街はなかったはずですが....」
「森はねえな。公園ならあるが」
話が微妙に噛み合っておらずもどかしくなって目元のタオルを剥ぎ取ると今度は別の、冷えたタオルを問答無用で押し当てられた。
「わっ!」
「今度はこっちな」
「あの、もう大丈夫ですので....」
「もう少しだから当てとけ」
手を離してもらえず仕方なく従った。
団長の怒号に団員たちは己を奮い立たせて魔物に対峙した。
「団長!私はあちらへ応援に行きます!」
声を投げながら魔物に押されている方へ馬を走らせた。
「気をつけろ!無茶だけはするなよ!」
「はい!」
.....これは、夢か....?
いや、夢じゃない。この光景は確かに見たことが
ある。
ただ、それを上から見下ろすようにして見ているということはやはり夢か。
しかし、私は死んだはずでは....?
しかも何故記憶を辿るようなものを見せられているんだ?
訳もわからず遠ざかる自分を見つめていたら急に場面が切り替わった。
今度は音がなく映像だけが流れている。
私が魔物に取り囲まれている場面だ。
これで私は死んでしまったのだろう。
死んでもなお悪夢を見続けろということか?
だが、そこに魔物を蹴散らしながら進んでくる人影があった。
———あれは、ハルトだ。
私はまだ気づいていないのか動くのもやっとの体を動かしてなんとか魔物を倒している。
だがやはり限界だったようで魔物の攻撃に剣を落とし、力なく膝をついた。
生きるのを諦めた私に魔物の牙が近づく。
だがそこに、ハルトが間に合ってしまった。
———嘘だ.....。嘘だ、....嘘だ!
これは現実なんかじゃない!
私と魔物の間に入り込んだハルトは私が受けるはずだった魔物の牙を全身で受け止めていた。
ずるりと力なく崩れ落ちるハルトを私は呆然と見つめているだけ。
嫌だ!ハルト!なんで!
声も届かず手を伸ばすがどんどん遠ざかっていく。
待って!死なないで!ハルト!
子供のように泣き叫んでいると突然なにかに包まれた。
暖かいそれに縋りついて叫ぶ。
お願いです!助けてください!ハルトが!
「———い、おい!落ち着け!大丈夫だ!」
突然耳元で声が聞こえ目を開けると誰かに抱きしめられていた。
私が静かになったからか身体を離すと心配そうな瞳と目が合う。
その瞳の色にはっと息を呑む。
ハルト以外にも黒を纏う者がいたのか。
「大丈夫か?怖い夢でも見たのか?」
「夢.......?」
「ああ。随分うなされてたぞ」
そうか....、あれは夢だったのか....。
よかった....。
安心したらぽろぽろと涙が零れてしまった。
怖い夢を見て泣くなど子供のようで恥ずかしく、必死で止めようとするがなかなか止まらない。
「おい、そんな怖い夢だったのか?それなら我慢せずに泣いとけ。スッキリすんぞ」
頭をぽんぽんと撫でられ再び抱きしめられた。
そんな優しい扱いを受けたことがなかったのでさらに涙が溢れる。
漏れそうになる声を押し殺し涙が止まるまで泣いた。
こんなにも感情を曝け出したのは初めてじゃないだろうか。
「あ、あの、ありがとうございます。もう大丈夫です」
さすがに恥ずかしく相手の顔が見れずに俯くと顎に手をかけられ、ぐいっと強制的に顔を上げられた。
「あーあ、綺麗な目が腫れちゃってるじゃねえか」
き、綺麗...?
ハルトの他にもそんな事を言う人がいるなんて。
と、いうか少し近いのですが....。
こんなに間近で人の顔を見ることがなかったのでドキドキしてしまう。
「ちょっと待ってろ」
そう言って奥へ行ってしまった。
そういえばここは何処なのだろう。
先程のが夢だとしても魔物の暴走が起こった事は事実だ。
あれからどうなったのだろうか。
それに自分も助かったとはいえ相当な傷を負っていただろう。
下半身に少し違和感はあるが、他の傷が綺麗に治っているということはあの人が助けてくれたのだろうか。
布団をめくると下も身につけていない事に驚きはしたが治療のためだったのだろうと納得した。
奥に行った男の人はタオルを持ってすぐに戻ってきた。
持ってきたタオルを目元に押し当てられる。
「わっ、熱っ」
「これ当てとけ」
始めは熱さに驚いたがどんどん気持ち良くなってきた。
「あの、あなたが助けてくださったのですか?」
目を隠した状態で失礼だとは思ったがゆっくりもしていられない。
「あー、あんなとこいたら死んでたぞ」
「助けて頂きありがとうございます。あの様な状況下の中助けて頂いたということはかなりの実力者とお見受けいたします」
「はぁ?あの程度の距離を運んだだけで実力者になれてたら誰も苦労しねえだろ」
「運んだだけ...、と申しますと付近に魔物はいなかったのですか?」
「魔物ぉ?んなもん現代にいるわけねえだろ。頭でも打ったか?」
「魔物が、いない...?」
そんなはずはない。確かに魔物はいたはずだ。
この人が見てないということは追い払った人が他にいるということか....?
あの程度の距離、ということはここはそこまで離れた場所ではないのだろう。
しかしこんな立派な部屋があの街にあるとは思えないし、魔物の暴走のことを知らないのも妙だ。
「ここはククリという街ではないのですか?」
「ククリ?聞いたことねえな。ここは目黒だが知らずにぶっ倒れてたのか?」
「メグロ....?ユグドラの森の近くにそんな街はなかったはずですが....」
「森はねえな。公園ならあるが」
話が微妙に噛み合っておらずもどかしくなって目元のタオルを剥ぎ取ると今度は別の、冷えたタオルを問答無用で押し当てられた。
「わっ!」
「今度はこっちな」
「あの、もう大丈夫ですので....」
「もう少しだから当てとけ」
手を離してもらえず仕方なく従った。
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