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1章
9話
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数分でバーに着き、"close"と掲げてある扉をなんの躊躇もなく開けて中に入る。
カランカランと小気味の良い音が鳴り奥から顔馴染みのある男がひょっこりと顔を覗かせた。
「おう、律か。待ってたぞ」
「悪いな、開店前に」
「いつもの事だろ。.....って!めちゃくちゃ美人じゃんか!」
隣にいるミィーファを見て驚いたように声を上げた。
「そう言ったろ」
「ここまでとは聞いてない!」
「電話であれ以上どう言えっつうんだよ」
「外国人風超絶美人とかいろいろあるだろ!」
「めんどくせえなぁ....」
「あ、あの.....」
実にくだらない言い争いにミィーファは遠慮がちに口を挟んだ。
その声に知樹がいち早く反応する。
「挨拶もなしにごめんね!あまりにも美人だからびっくりしちゃって。俺は羽瀬倉知樹。知樹でいいよ」
強引に握手をしながらにこにこと自己紹介をしている。
客にもこんな笑顔見せた事ないんじゃないか...?
「私はミィーファ・クロエルと申します。よろしくお願いいたします」
「ミィーファちゃんか。名前までかわいいね」
「そ、そうでしょうか....?」
「おい、引いてんぞ。そんくらいにしとけ」
カウンターの椅子に勝手に座りタバコに火をつける。
「ミィーファちゃん、ちょっとこいつと話あるから奥で待っててくれる?」
「はい。わかりました」
「ごめんね、終わったら呼ぶから」
ミィーファを奥へ案内して知樹が戻ってきた。
「で?」
「..........」
態度がまるで違う。
まあ急にあんな感じになられても気持ち悪いが。
「話聞いたんだろ?」
「.......異世界人だってよ」
「..........は?」
「だから、異世界人。この世界じゃないとこから来たらしい」
「お前....、もうちょっとマシな嘘つけよ....」
「その気持ちはわかる....が、嘘だとはどうしても思えなくてな....」
ミィーファから聞いた話を伝えるとどんどん顔が険しくなっていく。
「一応携帯でも"異世界人拾ったら"って検索してみたんだけどな。小説ばっかでてきやがった」
「.....当たり前だろ。はぁ....まだヤクザに囲われてたって言われた方が納得するぞ.....」
「それはないだろ、処女だったし」
「は!?お前もう喰ったのか!?どんだけ手早いんだよ!....ってお前まさか家でヤったのか?」
「あぁ....」
「もう吹っ切れたのか?」
「....別にもともと引きずってなんかねえよ」
「嘘つけ」
「つーか、俺のことはいいから。あいつのこと考えろよ」
「つったって俺まだ半信半疑だぞ?」
「じゃあ本人に聞いてみりゃいいだろ」
たしかにそうだな、と呟いてミィーファを呼びに行った。
「ミィーファちゃん、律から簡単に聞いたけど俺からも質問していい?」
「もちろんです」
「ミィーファちゃんの国...オルランドだっけ?その国の政治体制ってどんなだった?」
「王政です」
「王政、か....。じゃあ身分制度があったのかな?」
「はい。....もしかして、こちらにはないのですか....?」
「うん。ないね。そもそも王政じゃないし。会社によっては役職なんかがあるけど....まあそれはいいか。ミィーファちゃんは貴族なの?」
「はい。伯爵家の次男で2色持ちということもあり爵位はありませんが」
「結婚もしてないの?」
「しておりません。2色持ちと結婚したいという物好きはおりませんよ」
「物好きなんてどこにでもいると思うけどねぇー」
その言葉にミィーファは困ったように微笑んだ。
「魔力量はほとんどが遺伝で決まるのです。貴族は平民より魔力量が多いのが当たり前なので2色持ちの血を混ぜたいと思う人はおりません」
「魔力至上主義ってやつか....。ちなみに仕事は何してるの?」
「騎士団の副団長を務めていました」
「えっ、そこは実力主義なんだ?」
「いえ。私の所属していた騎士団は通常、平民が所属する所なのです。扱いが面倒だったので副団長に任命されただけですよ」
「うーん....シビアだねぇ~....」
「......そんなに自分を卑下するな。いくら貴族だからって無能なやつを副団長なんかにしないだろ」
ミィーファの暗い表情を見て聞き役に徹していた俺は思わず声が漏れた。
一瞬の沈黙にしまった、と知樹を見ると案の定ぎょっとした顔をしている。
「....ありがとうございます。リツさんには励まされてばかりですね」
なんとなく2人を見れず反対側にタバコの煙を吐いた。
「励まされてばっかり、ねぇ~....」
後頭部に知樹の視線がちくちくと突き刺さる。
「是非とも聞きたいなぁ、律?」
「....俺のことはいいって言ってるだろ。それより、もう質問はいいのか?」
「....たしかに、今はミィーファちゃん優先だね。でも設定にしては細かいし、こんな嘘つくメリットもないしね。俺も信じるよ」
「あ、ありがとうございます!」
「お礼はまだ早いかな。実際、俺らがしてあげられることは少ないし」
「それでも嬉しいです」
その言葉に知樹はにっこり微笑んだ。
「俺らがしてあげられることは2つ。まず、元の世界に帰る方法を探すこと。....ただ、期待はしない方がいい。どうやってこっちに来たのかわからない時点で帰り方なんてもっとわからないからね」
「そう、ですよね....」
「そんでもうひとつは戸籍を作って正式にこの国の住人になること」
「そんな事できるのか?」
「就籍って知ってる?」
「知らん」
「まあ簡単に言えば無戸籍の人が戸籍をつくれるんだけど....。正直これも難しいかもしれない。一応記憶喪失の方がこれで戸籍作った事例はあるんだけど、ミィーファちゃんは明らかに日本人顔じゃないし....。ま、それは知り合いの弁護士に相談って感じかな」
「へぇ、そんなのあるんだな」
「でもどっちも確実じゃないってのが申し訳ないけど」
「いえ!私には分からない事ばかりですから。ありがとうございます」
「もちろんすぐに決めなくてもいいよ。俺としてはこの国にいてほしいけどね。魔物もいないし、そっちの国よりかは安全なんじゃないかな?それにここで生活する上で魔力は必要ないしね」
ミィーファは少し考え込んでから意を決したように口を開いた。
「そうですね。トモキさんの言う通りです」
「おい、もうちょっと考えた方がいんじゃないか?」
あまりの即決に俺の方が心配になる。
だが、ミィーファはふるふると頭を横に振った。
「いえ。時間をかけても同じです。それに、向こうでの生活はさほど良いものではなかったので。....心残りがあるとすれば皆が無事かどうかだけです」
「.....そうか。ならいいが」
「よし!そんじゃあ、俺は知り合いに連絡しとく。その間にミィーファちゃんの服とか必要なもん買ってこいよ」
「そうだな」
「あ、徒歩?車出した方がいいか?」
「いや、バイク。積めるだけ買って足りなきゃ明日でもいいだろ」
カランカランと小気味の良い音が鳴り奥から顔馴染みのある男がひょっこりと顔を覗かせた。
「おう、律か。待ってたぞ」
「悪いな、開店前に」
「いつもの事だろ。.....って!めちゃくちゃ美人じゃんか!」
隣にいるミィーファを見て驚いたように声を上げた。
「そう言ったろ」
「ここまでとは聞いてない!」
「電話であれ以上どう言えっつうんだよ」
「外国人風超絶美人とかいろいろあるだろ!」
「めんどくせえなぁ....」
「あ、あの.....」
実にくだらない言い争いにミィーファは遠慮がちに口を挟んだ。
その声に知樹がいち早く反応する。
「挨拶もなしにごめんね!あまりにも美人だからびっくりしちゃって。俺は羽瀬倉知樹。知樹でいいよ」
強引に握手をしながらにこにこと自己紹介をしている。
客にもこんな笑顔見せた事ないんじゃないか...?
「私はミィーファ・クロエルと申します。よろしくお願いいたします」
「ミィーファちゃんか。名前までかわいいね」
「そ、そうでしょうか....?」
「おい、引いてんぞ。そんくらいにしとけ」
カウンターの椅子に勝手に座りタバコに火をつける。
「ミィーファちゃん、ちょっとこいつと話あるから奥で待っててくれる?」
「はい。わかりました」
「ごめんね、終わったら呼ぶから」
ミィーファを奥へ案内して知樹が戻ってきた。
「で?」
「..........」
態度がまるで違う。
まあ急にあんな感じになられても気持ち悪いが。
「話聞いたんだろ?」
「.......異世界人だってよ」
「..........は?」
「だから、異世界人。この世界じゃないとこから来たらしい」
「お前....、もうちょっとマシな嘘つけよ....」
「その気持ちはわかる....が、嘘だとはどうしても思えなくてな....」
ミィーファから聞いた話を伝えるとどんどん顔が険しくなっていく。
「一応携帯でも"異世界人拾ったら"って検索してみたんだけどな。小説ばっかでてきやがった」
「.....当たり前だろ。はぁ....まだヤクザに囲われてたって言われた方が納得するぞ.....」
「それはないだろ、処女だったし」
「は!?お前もう喰ったのか!?どんだけ手早いんだよ!....ってお前まさか家でヤったのか?」
「あぁ....」
「もう吹っ切れたのか?」
「....別にもともと引きずってなんかねえよ」
「嘘つけ」
「つーか、俺のことはいいから。あいつのこと考えろよ」
「つったって俺まだ半信半疑だぞ?」
「じゃあ本人に聞いてみりゃいいだろ」
たしかにそうだな、と呟いてミィーファを呼びに行った。
「ミィーファちゃん、律から簡単に聞いたけど俺からも質問していい?」
「もちろんです」
「ミィーファちゃんの国...オルランドだっけ?その国の政治体制ってどんなだった?」
「王政です」
「王政、か....。じゃあ身分制度があったのかな?」
「はい。....もしかして、こちらにはないのですか....?」
「うん。ないね。そもそも王政じゃないし。会社によっては役職なんかがあるけど....まあそれはいいか。ミィーファちゃんは貴族なの?」
「はい。伯爵家の次男で2色持ちということもあり爵位はありませんが」
「結婚もしてないの?」
「しておりません。2色持ちと結婚したいという物好きはおりませんよ」
「物好きなんてどこにでもいると思うけどねぇー」
その言葉にミィーファは困ったように微笑んだ。
「魔力量はほとんどが遺伝で決まるのです。貴族は平民より魔力量が多いのが当たり前なので2色持ちの血を混ぜたいと思う人はおりません」
「魔力至上主義ってやつか....。ちなみに仕事は何してるの?」
「騎士団の副団長を務めていました」
「えっ、そこは実力主義なんだ?」
「いえ。私の所属していた騎士団は通常、平民が所属する所なのです。扱いが面倒だったので副団長に任命されただけですよ」
「うーん....シビアだねぇ~....」
「......そんなに自分を卑下するな。いくら貴族だからって無能なやつを副団長なんかにしないだろ」
ミィーファの暗い表情を見て聞き役に徹していた俺は思わず声が漏れた。
一瞬の沈黙にしまった、と知樹を見ると案の定ぎょっとした顔をしている。
「....ありがとうございます。リツさんには励まされてばかりですね」
なんとなく2人を見れず反対側にタバコの煙を吐いた。
「励まされてばっかり、ねぇ~....」
後頭部に知樹の視線がちくちくと突き刺さる。
「是非とも聞きたいなぁ、律?」
「....俺のことはいいって言ってるだろ。それより、もう質問はいいのか?」
「....たしかに、今はミィーファちゃん優先だね。でも設定にしては細かいし、こんな嘘つくメリットもないしね。俺も信じるよ」
「あ、ありがとうございます!」
「お礼はまだ早いかな。実際、俺らがしてあげられることは少ないし」
「それでも嬉しいです」
その言葉に知樹はにっこり微笑んだ。
「俺らがしてあげられることは2つ。まず、元の世界に帰る方法を探すこと。....ただ、期待はしない方がいい。どうやってこっちに来たのかわからない時点で帰り方なんてもっとわからないからね」
「そう、ですよね....」
「そんでもうひとつは戸籍を作って正式にこの国の住人になること」
「そんな事できるのか?」
「就籍って知ってる?」
「知らん」
「まあ簡単に言えば無戸籍の人が戸籍をつくれるんだけど....。正直これも難しいかもしれない。一応記憶喪失の方がこれで戸籍作った事例はあるんだけど、ミィーファちゃんは明らかに日本人顔じゃないし....。ま、それは知り合いの弁護士に相談って感じかな」
「へぇ、そんなのあるんだな」
「でもどっちも確実じゃないってのが申し訳ないけど」
「いえ!私には分からない事ばかりですから。ありがとうございます」
「もちろんすぐに決めなくてもいいよ。俺としてはこの国にいてほしいけどね。魔物もいないし、そっちの国よりかは安全なんじゃないかな?それにここで生活する上で魔力は必要ないしね」
ミィーファは少し考え込んでから意を決したように口を開いた。
「そうですね。トモキさんの言う通りです」
「おい、もうちょっと考えた方がいんじゃないか?」
あまりの即決に俺の方が心配になる。
だが、ミィーファはふるふると頭を横に振った。
「いえ。時間をかけても同じです。それに、向こうでの生活はさほど良いものではなかったので。....心残りがあるとすれば皆が無事かどうかだけです」
「.....そうか。ならいいが」
「よし!そんじゃあ、俺は知り合いに連絡しとく。その間にミィーファちゃんの服とか必要なもん買ってこいよ」
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