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1章
10話
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1人で適当に買ってくればいいと思っていたのに「服とかサイズわかんないだろ」と言われ結局ミィーファと一緒に行くことになってしまった。
「リツさん、重ね重ねご迷惑おかけします....」
「別に迷惑だとは思ってねーよ。それに、こっから先俺はあんま手伝えそうにねえしな」
ミィーファの頭をぽんぽん、と撫でると頭に乗せた手を掴まれた。
「あ、わり。嫌だったか?」
子供扱いしすぎたか?
手を引っ込めようとしたら逆にぎゅっと力強く握られた。
「...リツさんにされて嫌なことなどありませんよ。.....ですが..なぜそんなに優しくしてくださるんですか?」
純粋な綺麗な瞳に射抜かれると、全て見透かされてしまうような気がして心がざわざわする。
再び手を引っ込めようとするが、がっちりと握られた手はびくともしない。
「べ、つにこんなん普通だろ。それにこんだけ関わっといて今更放置とかできねえし...」
ふいっと視線だけそらして答える。
その答えに満足したのかはわからないがぱっと手を離し、ヘルメットを被りながら言った。
「.....ありがとうございます。この御恩は一生かけて返しますので」
「....大袈裟だな。今はまだ慣れることだけ考えてりゃいいよ」
自分から目を逸らしたのに、どんな表情をしながら言っているのか気になった。
残念ながら既にヘルメットを着用しているため見えなかったが。
自分もヘルメットを付けてバイクに跨った。
お店では帽子を被っていてもやはり目立っていた。
一般客はちらちらと視線を投げてくるだけなのでまだよかったのだが、店員にはなにかと話しかけられそうになり鬱陶しかった。
ミィーファが見るもの見るもの目を輝かせて質問をしてくるのも目立つ原因でもあったのだが。
なんとか買い物を終え、知樹の店へ戻った。
「おかえり~」
「おう。そっちどうだった?」
「無事引き受けてくれた。むしろ張り切ってたな。俺が前例を作ってやる!って」
「ははっ、頼もしいな」
「だろ。だからミィーファちゃん安心してね」
「トモキさん、本当にありがとうございます」
「いえいえ。まだこれからだしね。ところで今後の事で相談っていうか提案なんだけど....」
「はい」
「これからミィーファちゃんに聞きたい事とか書いてもらわないといけない物とかでてくるからその度にこいつん家行くのは時間がもったいないでしょ?だからここに住んだらどうかなって。部屋も余ってるし」
「え....」
「それにこいつん家にいたらまた襲われるかもしれないしね?」
お前も安全とは言い切れないだろ。
声には出さず心の中で突っ込みを入れる。
もちろん知樹は冗談で言っているのだがミィーファはわたわたと慌てだした。
「あ、あれは元はと言えば私の所為で....。リツさんには本当に申し訳なく思ってます....」
「えっ!?ミィーファちゃんから!?」
「あー、いいだろ、そんなこと」
根掘り葉掘り聞いてきそうで怖い。
「ここの方が広いしその方がいいだろ。俺は平日家に居ないしな」
「あ....それでは、ご迷惑でなければお願いいたします」
「おっけー。俺は全然迷惑とか思ってないから。気にしないで」
「じゃあ俺帰るわ」
話がまとまったところで2人に背を向ける。
「え、飲んでかないのか?」
「バイクあるし今日はやめとく。なんか足りないもんあったらメッセージくれれば明日買ってくるし」
「リツさん、ありがとうございます」
ミィーファの言葉に無言で手を振りバーを出た。
◇◇◇◇
side ミィーファ
部屋を出て行くリツさんの背中を見送りながら思わずため息が漏れる。
迷惑はかけたくなかったのでリツさんの家がいい、とは言えなかった。
まだ出会ってそれほど時間は経っていないのに、彼の隣は心地がいい。
あまり甘えすぎるのは良くないな....。
きっとリツさんは拾ってしまった責任感で良くしてくれているだけだ。
早く1人でも生きていけるようにしなくては。
「ミィーファちゃん、とりあえず部屋に案内するよ」
「あ、ありがとうございます」
奥の階段から2階に上がると上がって左手にお風呂とトイレ、右手に部屋が2部屋あり手前はトモキさんの部屋。
奥を自由に使っていいと言ってくれた。
「なんか足りないものがあったら遠慮なく言ってね。あともうちょっと聞きたい事、ってか確認したい事がいくつかあるんだけど....」
それからこの国での常識を教えてもらった。
お金の使い方、時計の読み方、あとは文字の読み書き。言葉は通じるのになぜか文字はわからなかったのだ。むしろ言葉が通じる方が異常なことなのかもしれない。
他には犯罪行為のこと。
ただ、数が多いらしいので絶対にやってはいけない事をいくつか挙げてもらった。
その中でも特に驚いたのがふたつある。
ひとつは剣やジュウを無断で所持してはいけない事。
ジュウというのはよくわからないが、ナイフさえ許可が必要なものまであるそうだ。
たとえ許可をとっていたとしても街中で堂々と持ち歩くことはしない方がいいらしい。
もうひとつは例え相手が犯罪者であっても人を殺してはいけない事。
防衛のためだとしてもそれが過剰なものだと判断されれば逆に罪に問われてしまう。
それではこの国の民はどうやって身を守るのだろうか?
トモキさんに聞くと少し困ったように笑った。
「この国では殺人事件とか身の回りで起きるとはあまり思っていないんだ」
「.....?どういう意味ですか?」
「確かに日常で殺人事件は起きてるけど、それがどこか非日常のことだと思ってる。だから、もし目の前で起きても例え武器を持っていたとしても動けないんじゃないかな」
「それでは、黙って殺されるのを待つということですか?」
「うーん、そう言っちゃうとあれなんだけど....。一応警察っていう治安を守ってくれる人たちがいるからそこに電話して逃げる、とかね」
それでは遅いのではないだろうか。
そう思ったが口には出さなかった。
ただ、他の国ではジュウ、というものが誰でも持てるらしいのだがそこでは頻繁に殺人事件が起こるという。
誰でも持てるから事件が起きるかはわからないが、"誰でも武器を使える"という状態よりよっぽど良い、とトモキさんは言った。
理解はあまりできないが納得はした。
だからこの国の人は優しいのだ、と。
「リツさん、重ね重ねご迷惑おかけします....」
「別に迷惑だとは思ってねーよ。それに、こっから先俺はあんま手伝えそうにねえしな」
ミィーファの頭をぽんぽん、と撫でると頭に乗せた手を掴まれた。
「あ、わり。嫌だったか?」
子供扱いしすぎたか?
手を引っ込めようとしたら逆にぎゅっと力強く握られた。
「...リツさんにされて嫌なことなどありませんよ。.....ですが..なぜそんなに優しくしてくださるんですか?」
純粋な綺麗な瞳に射抜かれると、全て見透かされてしまうような気がして心がざわざわする。
再び手を引っ込めようとするが、がっちりと握られた手はびくともしない。
「べ、つにこんなん普通だろ。それにこんだけ関わっといて今更放置とかできねえし...」
ふいっと視線だけそらして答える。
その答えに満足したのかはわからないがぱっと手を離し、ヘルメットを被りながら言った。
「.....ありがとうございます。この御恩は一生かけて返しますので」
「....大袈裟だな。今はまだ慣れることだけ考えてりゃいいよ」
自分から目を逸らしたのに、どんな表情をしながら言っているのか気になった。
残念ながら既にヘルメットを着用しているため見えなかったが。
自分もヘルメットを付けてバイクに跨った。
お店では帽子を被っていてもやはり目立っていた。
一般客はちらちらと視線を投げてくるだけなのでまだよかったのだが、店員にはなにかと話しかけられそうになり鬱陶しかった。
ミィーファが見るもの見るもの目を輝かせて質問をしてくるのも目立つ原因でもあったのだが。
なんとか買い物を終え、知樹の店へ戻った。
「おかえり~」
「おう。そっちどうだった?」
「無事引き受けてくれた。むしろ張り切ってたな。俺が前例を作ってやる!って」
「ははっ、頼もしいな」
「だろ。だからミィーファちゃん安心してね」
「トモキさん、本当にありがとうございます」
「いえいえ。まだこれからだしね。ところで今後の事で相談っていうか提案なんだけど....」
「はい」
「これからミィーファちゃんに聞きたい事とか書いてもらわないといけない物とかでてくるからその度にこいつん家行くのは時間がもったいないでしょ?だからここに住んだらどうかなって。部屋も余ってるし」
「え....」
「それにこいつん家にいたらまた襲われるかもしれないしね?」
お前も安全とは言い切れないだろ。
声には出さず心の中で突っ込みを入れる。
もちろん知樹は冗談で言っているのだがミィーファはわたわたと慌てだした。
「あ、あれは元はと言えば私の所為で....。リツさんには本当に申し訳なく思ってます....」
「えっ!?ミィーファちゃんから!?」
「あー、いいだろ、そんなこと」
根掘り葉掘り聞いてきそうで怖い。
「ここの方が広いしその方がいいだろ。俺は平日家に居ないしな」
「あ....それでは、ご迷惑でなければお願いいたします」
「おっけー。俺は全然迷惑とか思ってないから。気にしないで」
「じゃあ俺帰るわ」
話がまとまったところで2人に背を向ける。
「え、飲んでかないのか?」
「バイクあるし今日はやめとく。なんか足りないもんあったらメッセージくれれば明日買ってくるし」
「リツさん、ありがとうございます」
ミィーファの言葉に無言で手を振りバーを出た。
◇◇◇◇
side ミィーファ
部屋を出て行くリツさんの背中を見送りながら思わずため息が漏れる。
迷惑はかけたくなかったのでリツさんの家がいい、とは言えなかった。
まだ出会ってそれほど時間は経っていないのに、彼の隣は心地がいい。
あまり甘えすぎるのは良くないな....。
きっとリツさんは拾ってしまった責任感で良くしてくれているだけだ。
早く1人でも生きていけるようにしなくては。
「ミィーファちゃん、とりあえず部屋に案内するよ」
「あ、ありがとうございます」
奥の階段から2階に上がると上がって左手にお風呂とトイレ、右手に部屋が2部屋あり手前はトモキさんの部屋。
奥を自由に使っていいと言ってくれた。
「なんか足りないものがあったら遠慮なく言ってね。あともうちょっと聞きたい事、ってか確認したい事がいくつかあるんだけど....」
それからこの国での常識を教えてもらった。
お金の使い方、時計の読み方、あとは文字の読み書き。言葉は通じるのになぜか文字はわからなかったのだ。むしろ言葉が通じる方が異常なことなのかもしれない。
他には犯罪行為のこと。
ただ、数が多いらしいので絶対にやってはいけない事をいくつか挙げてもらった。
その中でも特に驚いたのがふたつある。
ひとつは剣やジュウを無断で所持してはいけない事。
ジュウというのはよくわからないが、ナイフさえ許可が必要なものまであるそうだ。
たとえ許可をとっていたとしても街中で堂々と持ち歩くことはしない方がいいらしい。
もうひとつは例え相手が犯罪者であっても人を殺してはいけない事。
防衛のためだとしてもそれが過剰なものだと判断されれば逆に罪に問われてしまう。
それではこの国の民はどうやって身を守るのだろうか?
トモキさんに聞くと少し困ったように笑った。
「この国では殺人事件とか身の回りで起きるとはあまり思っていないんだ」
「.....?どういう意味ですか?」
「確かに日常で殺人事件は起きてるけど、それがどこか非日常のことだと思ってる。だから、もし目の前で起きても例え武器を持っていたとしても動けないんじゃないかな」
「それでは、黙って殺されるのを待つということですか?」
「うーん、そう言っちゃうとあれなんだけど....。一応警察っていう治安を守ってくれる人たちがいるからそこに電話して逃げる、とかね」
それでは遅いのではないだろうか。
そう思ったが口には出さなかった。
ただ、他の国ではジュウ、というものが誰でも持てるらしいのだがそこでは頻繁に殺人事件が起こるという。
誰でも持てるから事件が起きるかはわからないが、"誰でも武器を使える"という状態よりよっぽど良い、とトモキさんは言った。
理解はあまりできないが納得はした。
だからこの国の人は優しいのだ、と。
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