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1章
17話
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どうやら暖かいものを抱きしめながら寝ていたようだ。
随分心地よく寝起きのぼんやりとした頭でさらに抱き寄せるとそれがもぞもぞと動いた。
「ん...律さん?起きました...?」
腕の中からミィーファの声が聞こえる。
...腕の中から!?
一気に覚醒してがばっと起き上がる。
なんで!?昨日別々で寝たよな!?
「す、すみません...。その、つい....。先に起きて移動すれば、と思っていたのですが....」
俺がしっかり抱きしめてて移動できなかったわけね。
「....いや、俺も悪かったな....」
あんなに泣いたのも、あんなにアキの事を話したのもあれが初めてだ。
少し気まずくてミィーファの顔が直視できない。
そういえば、と昨日返してもらったスマホを取り出した。
画面は落とした衝撃でバキバキに割れている。
電源を入れててみると問題なくついた。
が、指を滑らせても操作ができない。
画面には知樹からの着信履歴が数十件と、今の時間が11時を過ぎていることが表示されている。
「.....やっば」
急いで支度してタクシーでバーへと向かった。
◇◇◇◇
「俺、寝てないんだけど?」
バーに着いて早々、俺とミィーファは正座させられ知樹からの説教をくらった。
いや、正確には俺だけさせられミィーファは自主的にしている。
「....悪かった。携帯ぶっ壊れてて....」
「だとしてもここの番号知ってるだろ?連絡くらいしようと思えばできたよな?」
「......仰る通りです....。完全に忘れてました。すみません」
もう頭を下げるしかない。
「はぁ....、まあ、2人とも無事だったからよかったけど!」
「すみません、私が律さんの言う通りバーに戻っていれば....」
「あー、律の側に居たかったってのはわかるからいんだけど...ミィーファちゃんも携帯は持ってた方がいいね」
「そうだな。どの道俺も直すにしろ変えるにしろ行かなきゃだしもう一台契約してくるわ」
「ですが...使い方はわかりませんよ...?」
「操作は簡単だから。ちゃんと教えるし大丈夫だよ」
その後、知樹が簡単に昼飯を作ってくれ3人で食べた。
「知樹、....いろいろ悪かったな」
「どうした?改まって。もういいって」
「いや....、昨日のことだけじゃなくて、今まで悪かった。.......今日....墓参り、行こうと思う」
「!?お前——」
「....完全に吹っ切れたわけじゃないが....、そろそろ前向かないとな....」
「ああ....。ほんとだよ....。絶対彰に怒られるぞ」
「......そうだな」
知樹は心底ほっとした表情をした。
結局墓参りには3人で行くことになった。
都心から離れた静かな霊園だ。
ミィーファは初めて乗る電車や人の多さに驚いていた。
いざ墓地を前にすると怖くて足が竦む。
不意に右手をぎゅっと掴まれ、見るとミィーファが手を握り微笑んでいる。
その笑顔に心臓が高鳴る間もなく背中をぶっ叩かれた。
「いっ....!」
「行くぞ」
2人について来てもらってよかった。
1人だったらもっと時間がかかっていただろう。
もしかしたら引き返していたかもしれない。
それでもやはり、墓石を前にするとどうしようもなく胸が痛んだ。
すでに綺麗な花が供えられている。
きっとアキの家族が来たのだろう。
墓石を掃除する時に裏に彫られた"彰"の文字をそっと指で撫でる。
花と線香を供え、手を合わせて目を閉じた。
アキ。遅くなってごめんな....。
アキが死んだ事、認めたくなかったんだ。
俺の所為でアキが死んだこと。
きっとお前は俺の所為じゃないって言うだろうけど。
俺が、守りたかった。もっと、ずっと一緒に過ごしたかった。
もっとアキと一緒にいろんなことしたかった。
なあ、アキ、ずっとアキだけだったのに、他に大切な人ができたと言ったらアキは怒る?
タバコ吸ってもふらふらしてても怒らなかったからそれはないか。
アキ。これからは毎年来るから。
アキの事、絶対忘れたりしないから。
だから許してくれる?
アキ、これから先もずっと愛してる。
まだ、言いたいことはあったがとても一度に言える量ではない。
目を開けると、びゅうっと強く風が吹いた。
『律、幸せになって』
風にのって、アキの声が聞こえたような気がした。
随分と都合のいい言葉だ。
きっと自分の妄想が創り出した空耳だろう。
それなのに、涙が一筋頬を伝った。
随分心地よく寝起きのぼんやりとした頭でさらに抱き寄せるとそれがもぞもぞと動いた。
「ん...律さん?起きました...?」
腕の中からミィーファの声が聞こえる。
...腕の中から!?
一気に覚醒してがばっと起き上がる。
なんで!?昨日別々で寝たよな!?
「す、すみません...。その、つい....。先に起きて移動すれば、と思っていたのですが....」
俺がしっかり抱きしめてて移動できなかったわけね。
「....いや、俺も悪かったな....」
あんなに泣いたのも、あんなにアキの事を話したのもあれが初めてだ。
少し気まずくてミィーファの顔が直視できない。
そういえば、と昨日返してもらったスマホを取り出した。
画面は落とした衝撃でバキバキに割れている。
電源を入れててみると問題なくついた。
が、指を滑らせても操作ができない。
画面には知樹からの着信履歴が数十件と、今の時間が11時を過ぎていることが表示されている。
「.....やっば」
急いで支度してタクシーでバーへと向かった。
◇◇◇◇
「俺、寝てないんだけど?」
バーに着いて早々、俺とミィーファは正座させられ知樹からの説教をくらった。
いや、正確には俺だけさせられミィーファは自主的にしている。
「....悪かった。携帯ぶっ壊れてて....」
「だとしてもここの番号知ってるだろ?連絡くらいしようと思えばできたよな?」
「......仰る通りです....。完全に忘れてました。すみません」
もう頭を下げるしかない。
「はぁ....、まあ、2人とも無事だったからよかったけど!」
「すみません、私が律さんの言う通りバーに戻っていれば....」
「あー、律の側に居たかったってのはわかるからいんだけど...ミィーファちゃんも携帯は持ってた方がいいね」
「そうだな。どの道俺も直すにしろ変えるにしろ行かなきゃだしもう一台契約してくるわ」
「ですが...使い方はわかりませんよ...?」
「操作は簡単だから。ちゃんと教えるし大丈夫だよ」
その後、知樹が簡単に昼飯を作ってくれ3人で食べた。
「知樹、....いろいろ悪かったな」
「どうした?改まって。もういいって」
「いや....、昨日のことだけじゃなくて、今まで悪かった。.......今日....墓参り、行こうと思う」
「!?お前——」
「....完全に吹っ切れたわけじゃないが....、そろそろ前向かないとな....」
「ああ....。ほんとだよ....。絶対彰に怒られるぞ」
「......そうだな」
知樹は心底ほっとした表情をした。
結局墓参りには3人で行くことになった。
都心から離れた静かな霊園だ。
ミィーファは初めて乗る電車や人の多さに驚いていた。
いざ墓地を前にすると怖くて足が竦む。
不意に右手をぎゅっと掴まれ、見るとミィーファが手を握り微笑んでいる。
その笑顔に心臓が高鳴る間もなく背中をぶっ叩かれた。
「いっ....!」
「行くぞ」
2人について来てもらってよかった。
1人だったらもっと時間がかかっていただろう。
もしかしたら引き返していたかもしれない。
それでもやはり、墓石を前にするとどうしようもなく胸が痛んだ。
すでに綺麗な花が供えられている。
きっとアキの家族が来たのだろう。
墓石を掃除する時に裏に彫られた"彰"の文字をそっと指で撫でる。
花と線香を供え、手を合わせて目を閉じた。
アキ。遅くなってごめんな....。
アキが死んだ事、認めたくなかったんだ。
俺の所為でアキが死んだこと。
きっとお前は俺の所為じゃないって言うだろうけど。
俺が、守りたかった。もっと、ずっと一緒に過ごしたかった。
もっとアキと一緒にいろんなことしたかった。
なあ、アキ、ずっとアキだけだったのに、他に大切な人ができたと言ったらアキは怒る?
タバコ吸ってもふらふらしてても怒らなかったからそれはないか。
アキ。これからは毎年来るから。
アキの事、絶対忘れたりしないから。
だから許してくれる?
アキ、これから先もずっと愛してる。
まだ、言いたいことはあったがとても一度に言える量ではない。
目を開けると、びゅうっと強く風が吹いた。
『律、幸せになって』
風にのって、アキの声が聞こえたような気がした。
随分と都合のいい言葉だ。
きっと自分の妄想が創り出した空耳だろう。
それなのに、涙が一筋頬を伝った。
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