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2章
20話
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「で?実際なんで付き合ってないんだよ?」
「........別に。きっかけがないだけだ」
「きっかけなんていらないだろ!お前が好きって言えば済む話じゃんか」
「.....そんな簡単じゃねえんだよ」
「お前が難しく考えてるだけだろ」
呆れたようにため息をつかれた。
知樹の言う通りだ。
結局俺はいろいろ理由をつけながらあいつから逃げているだけ。
逃げても意味がないことは十分過ぎるほど分かっているのに。
こんなにも臆病だったのかと自分が嫌になる。
こんな俺のどこがいいんだ、あいつは....。
「ミィーファちゃん遅いな」
時計を見るとすでに開店時間は過ぎている。
「表見てくるわ」
「おー、頼む」
外に出るとまだ風が冷たい。
春が来るにはもう少し時間がかかりそうだ。
「あの、すみません。もうお店を開ける時間なので...。お話ならお店で伺いますが」
少し離れたところからミィーファの声が聞こえてきた。
見ると3人の男に囲まれている。
「ミィーファちゃん、お店の中だと全然相手にしてくれないだろー?」
「仕事なんてほかっといて俺たちとイイコトしようぜ?」
「そうそう♪楽しませてあげるからさぁ」
どうやら客に絡まれているらしい。
それにしても3対1とは卑怯な。
「結構です。そろそろ腕を離していただきたいのですが」
「一緒に来てくれるなら離してやってもいいぜ?」
助けに行こうと声をかけようとした時だった。
「あの、ひとつ伺いたいのですが、正当防衛とはどこまでがそうなのでしょうか」
「ぶっ!」
思わず吹き出してしまった。
相手に聞いてどうすんだよ。
「律さん?」
もう少しかっこよく助けるつもりだったのに台無しだ。
まあ、こいつの場合助けはいらないかもだけど。
「んだよ、お前。邪魔すんな」
「邪魔、ねぇ....。邪魔なのはそっちだってわからないか?」
「あ?何言って——」
相手の言葉を遮るようにミィーファに近づき少し引き寄せて唇を重ねた。
「んっ!?ぁっ...まっ、んんっ...んっ...」
見せつけるようにわざと音を立て、逃げる舌を絡めとる。
舌裏をなぞり、舌先をぢゅっと吸って顔を離した。
ミィーファのとろけた顔は見られないように自分の体に押し付け、相手を睨んだ。
「悪いが俺のなんでね。他あたってくれるか」
男たちは舌打ちしながら渋々去っていった。
「あの....」
「あー、待て。キスしといてなんだが..ここじゃ目立つから今日時間くれねーか?仕事終わるまで待ってるから。お前がよければ....俺の家で、話したいことがある」
「律さんの家...いいんですか?」
「ああ、お前がよければ」
「もちろん!嬉しいです」
◇◇◇◇
「.....悪いな、仕事終わりに」
「いえ」
明日は日曜日なのでお互い休みだ。
どう切り出そうかと思案すると静寂に包まれる。
それが少し気まずくて、考えもまとまっていないのに口を開いた。
「....あー、店前では勝手に悪かったな」
「いえっ、正直どこまでが暴力でどこまでが正当防衛かわからなかったので助かりました」
「まぁ....、先に手出さなきゃ問題ねえよ。ただ、手を掴まれただけなら振り払うとか、殴るのは最終手段だな」
「....本当に、この国は平和ですね。素晴らしいです」
「....そうだな」
「......律さん、話とはなんですか?」
言いにくそうにしているのが伝わったのだろうか。
ソファの隣に座っていたミィーファがこちらを向いて俺の手に自分の手を重ね、逃がさないとばかりに視線を絡めてくる。
「....もう、分かってるとは思うが....」
息をふぅ、と少し吐いてから話し始めた。
「俺はアキが好きだ。きっと、それはずっと変わらない。でも、アキと同じくらい...ミィーファのことも大切で....好きなんだ」
「好きなんだ」と言った瞬間、ミィーファの顔がくしゃりと歪む。
「もし、それが嫌なら——」
「嫌なわけありません!」
最後まで言い終わる前にミィーファが声を荒げた。
「アキラさんと同じくらいだなんて、とても嬉しいです」
.....なんでこいつは俺の欲しい言葉が分かるのだろうか。
「まだ、俺のこと好きでいてくれてたのか?」
左手でミィーファの頬をするりと撫でると、嬉しそうに目を細めて擦り寄せてくる。
「あたりまえです。私の想い、あまり見くびらないでください」
「ふっ、そりゃあ悪かった。....ひとつだけ、約束してくれ」
「なんですか?」
「絶対に俺より先に死なないって」
約束など、なんの意味もないことは分かっている。それでも、言わずにはいられなかった。
それはミィーファも分かっているようだったが安心させるかのように笑顔のまま深く頷く。
「ええ、約束します。ですが、律さんももっと警戒心を持ってください。いくらこの国が平和でも、以前起きたようなこともあるんですから。あの人が殺人犯だった場合、律さん死んでいた可能性もあるんですからね?」
う、それを言われると少し痛い。
「...あんな事、そうそう起こらんだろ」
「いくら平和な国だとしても、そういった油断は禁物です。自分の身を守れるくらいには鍛錬しましょう?」
「鍛錬って....。大袈裟じゃないか?」
「身につけておいて損はないでしょう?」
....正論なだけに言い返せない。
「私から一本取れるようになるまで、とかどうですか?」
なんだか楽しそうに話すもんだから少し悔しくなってミィーファの肩を押すと、思ったより呆気なくソファに倒れ込んだ。
そしてミィーファが口を開く前に唇を塞ぐ。
「んっ、ぁ...ふ..んんっ...」
少し抵抗しようとしていたが、上顎や舌裏などの敏感な部分をくすぐればすぐに力が抜けていった。
「一本、だな?」
「.....ずるいですよ....」
拗ねたような言い方が可愛いくてもう一度唇を重ねた。
「........別に。きっかけがないだけだ」
「きっかけなんていらないだろ!お前が好きって言えば済む話じゃんか」
「.....そんな簡単じゃねえんだよ」
「お前が難しく考えてるだけだろ」
呆れたようにため息をつかれた。
知樹の言う通りだ。
結局俺はいろいろ理由をつけながらあいつから逃げているだけ。
逃げても意味がないことは十分過ぎるほど分かっているのに。
こんなにも臆病だったのかと自分が嫌になる。
こんな俺のどこがいいんだ、あいつは....。
「ミィーファちゃん遅いな」
時計を見るとすでに開店時間は過ぎている。
「表見てくるわ」
「おー、頼む」
外に出るとまだ風が冷たい。
春が来るにはもう少し時間がかかりそうだ。
「あの、すみません。もうお店を開ける時間なので...。お話ならお店で伺いますが」
少し離れたところからミィーファの声が聞こえてきた。
見ると3人の男に囲まれている。
「ミィーファちゃん、お店の中だと全然相手にしてくれないだろー?」
「仕事なんてほかっといて俺たちとイイコトしようぜ?」
「そうそう♪楽しませてあげるからさぁ」
どうやら客に絡まれているらしい。
それにしても3対1とは卑怯な。
「結構です。そろそろ腕を離していただきたいのですが」
「一緒に来てくれるなら離してやってもいいぜ?」
助けに行こうと声をかけようとした時だった。
「あの、ひとつ伺いたいのですが、正当防衛とはどこまでがそうなのでしょうか」
「ぶっ!」
思わず吹き出してしまった。
相手に聞いてどうすんだよ。
「律さん?」
もう少しかっこよく助けるつもりだったのに台無しだ。
まあ、こいつの場合助けはいらないかもだけど。
「んだよ、お前。邪魔すんな」
「邪魔、ねぇ....。邪魔なのはそっちだってわからないか?」
「あ?何言って——」
相手の言葉を遮るようにミィーファに近づき少し引き寄せて唇を重ねた。
「んっ!?ぁっ...まっ、んんっ...んっ...」
見せつけるようにわざと音を立て、逃げる舌を絡めとる。
舌裏をなぞり、舌先をぢゅっと吸って顔を離した。
ミィーファのとろけた顔は見られないように自分の体に押し付け、相手を睨んだ。
「悪いが俺のなんでね。他あたってくれるか」
男たちは舌打ちしながら渋々去っていった。
「あの....」
「あー、待て。キスしといてなんだが..ここじゃ目立つから今日時間くれねーか?仕事終わるまで待ってるから。お前がよければ....俺の家で、話したいことがある」
「律さんの家...いいんですか?」
「ああ、お前がよければ」
「もちろん!嬉しいです」
◇◇◇◇
「.....悪いな、仕事終わりに」
「いえ」
明日は日曜日なのでお互い休みだ。
どう切り出そうかと思案すると静寂に包まれる。
それが少し気まずくて、考えもまとまっていないのに口を開いた。
「....あー、店前では勝手に悪かったな」
「いえっ、正直どこまでが暴力でどこまでが正当防衛かわからなかったので助かりました」
「まぁ....、先に手出さなきゃ問題ねえよ。ただ、手を掴まれただけなら振り払うとか、殴るのは最終手段だな」
「....本当に、この国は平和ですね。素晴らしいです」
「....そうだな」
「......律さん、話とはなんですか?」
言いにくそうにしているのが伝わったのだろうか。
ソファの隣に座っていたミィーファがこちらを向いて俺の手に自分の手を重ね、逃がさないとばかりに視線を絡めてくる。
「....もう、分かってるとは思うが....」
息をふぅ、と少し吐いてから話し始めた。
「俺はアキが好きだ。きっと、それはずっと変わらない。でも、アキと同じくらい...ミィーファのことも大切で....好きなんだ」
「好きなんだ」と言った瞬間、ミィーファの顔がくしゃりと歪む。
「もし、それが嫌なら——」
「嫌なわけありません!」
最後まで言い終わる前にミィーファが声を荒げた。
「アキラさんと同じくらいだなんて、とても嬉しいです」
.....なんでこいつは俺の欲しい言葉が分かるのだろうか。
「まだ、俺のこと好きでいてくれてたのか?」
左手でミィーファの頬をするりと撫でると、嬉しそうに目を細めて擦り寄せてくる。
「あたりまえです。私の想い、あまり見くびらないでください」
「ふっ、そりゃあ悪かった。....ひとつだけ、約束してくれ」
「なんですか?」
「絶対に俺より先に死なないって」
約束など、なんの意味もないことは分かっている。それでも、言わずにはいられなかった。
それはミィーファも分かっているようだったが安心させるかのように笑顔のまま深く頷く。
「ええ、約束します。ですが、律さんももっと警戒心を持ってください。いくらこの国が平和でも、以前起きたようなこともあるんですから。あの人が殺人犯だった場合、律さん死んでいた可能性もあるんですからね?」
う、それを言われると少し痛い。
「...あんな事、そうそう起こらんだろ」
「いくら平和な国だとしても、そういった油断は禁物です。自分の身を守れるくらいには鍛錬しましょう?」
「鍛錬って....。大袈裟じゃないか?」
「身につけておいて損はないでしょう?」
....正論なだけに言い返せない。
「私から一本取れるようになるまで、とかどうですか?」
なんだか楽しそうに話すもんだから少し悔しくなってミィーファの肩を押すと、思ったより呆気なくソファに倒れ込んだ。
そしてミィーファが口を開く前に唇を塞ぐ。
「んっ、ぁ...ふ..んんっ...」
少し抵抗しようとしていたが、上顎や舌裏などの敏感な部分をくすぐればすぐに力が抜けていった。
「一本、だな?」
「.....ずるいですよ....」
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