魔力のいらない世界であなたと

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2章

21話

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「お、ようやく作れたのか」

ミィーファを拾ってから約2ヶ月が経ち、ようやく戸籍を取得できたようだ。
詳しくは聞いていないので知らないが、随分と頑張ってくれたらしい。

「皆さんのお陰です」

そう言って紙を渡された。
最近また、ほとんど毎日バーに通っているのにわざわざ知樹から「今日来い」というメッセージがきたからなにかと思ったらこれを見せたかったらしい。

「....おい、なんで苗字が俺と同じなんだよ」

そこには本籍地がこのバーで、誕生日が拾った日、年齢が24、その他は不明と記載されていたが、氏名の欄には『進藤 未依風みいふぁ』となっている。

「えっ!?トモキさん、律さんに確認とったと言っていたじゃないですか!」

名前の方は相談されていたので知っているが苗字の方は初耳だ。

「ああ、ごめん。あれ嘘。驚かせてやろうと思って」

「なっ!」

「この国じゃまだ同性同士の結婚はできないし丁度いいでしょ?」

「無断は駄目ですよ!」

「まあまあ、ミィーファちゃんだって名前見てにやにやしてたじゃない」

「そっ、それは律さんも了承していると思っていたからで....!」

少し顔を赤らめながら必死に弁明をする姿が可愛くて思わず笑ってしまった。

「ふっ、ミィーファがいいってんならいんだよ。ただ、元々の姓は捨ててよかったのか?」

「あ...はい。それは全く問題ないです」

「そうか、ならいい」

「なんだよ、もっと驚けよなー」

「バカ野郎、十分驚いてるわ。勝手な事しやがって」

「ナイスアイディアだろ?」

正直苗字など些細な事のように思うがミィーファが喜んでいたのならそれも悪くない。

「そういえば部屋はまだ決まってないのか?」

「何軒か候補はあるんだけどな...。なかなか踏ん切りがつかなくて....」

いいな、と思う物件はいくつかあった。
だがもう少しアキと一緒に過ごした家に居たい、とずるずる先延ばしにしていたら引っ越しシーズンを迎えてしまい、さらにそれを理由にまたずるずると先延ばしにしている。

「ミィーファちゃんの戸籍もつくれたし一緒に住むんだろ?」

「ああ」

「シャシン、をとっておくのはどうですか?シャシンでしたらそのまま残せますし、いつでも見れますよね?」

そうか...、写真。その手があったか。
なんで思いつかなかったんだろう。

立ち上がってミィーファの服を掴んで引き寄せた。
そしてそのまま唇を塞ぐ。触れるだけのキスをした。

「サンキューな。今日は帰るわ」

「ここでイチャつくなつってんだろ!」

知樹の怒声に振り向くことなく手を振りバーを出た。


◇◇◇◇


ようやく引っ越しを終え、慌ただしい日々から解放された。
ほとんどの家具はそのままだがベッドは新しいものに変えた。ミィーファはそのままでもいいと言ってくれたが、古かったしちょうどいい機会だろう。

そして、ミィーファの提案で部屋の中にたくさん写真を飾ることにした。
部屋の写真はもちろん、以前は一枚しか飾っていなかったアキの写真もたくさん。

「ありがとな」

改めてお礼を言うと「いえ」と笑った。

正直言うとこのまま押し倒したい。
でも今日はミィーファが体を動かしたいということでジムに行く予定だ。

知樹の家では下の階を気にせずトレーニングできていたのだが、ここではそうはいかないだろう。

エレベーターが苦手なミィーファのために部屋は比較的低い3階にした。
それでも下の階に気を使いながらは面倒なのでそれならジムにでも行くか、と提案したのだ。

ジムへは俺も週一くらいで行っていたので同じところへ体験入学することになった。



———のだが、俺は早くも後悔している。


体験入学、ということで体の状態を見たりマシンの説明をしたりでトレーナーと2人で行動しているのだが.......、距離が近すぎないか?
ボディタッチも多い気がする。

気になりすぎて自分のトレーニングどころではない。
それは俺だけじゃなく周りの人も多分同じだ。

チラチラとミィーファを見ている奴が多い。
というか下手したらみんなそうなんじゃないか?
髪や瞳の色が珍しいのもあるのだろうが面白くない。

できることなら閉じ込めておきたい。
誰の目にも触れず、俺だけのものに。

ちらりとミィーファを見るとトレーナーと楽しそうに話しているのが見えた。
直後、顔が赤くなったのも、目に入ってしまった。

あー、もう。駄目だ。集中できん。

2人の元に近づきミィーファの耳に顔を近づける。

「先にシャワー浴びてくる」

小声で言うのと同時にトレーナーをギロリと睨みつけた。

あー、小せー男だな....。

自分の心の狭さに愕然としながらシャワールームに向かった。
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