ボスルートがあるなんて聞いてない!

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4.初めての薬草採取!

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 教えてもらった採取場所は、西門から出て少し歩いた森の中で、おっさんと一緒に通ってきた道が遠目に見える所だった。


 魔物については一安心なんだけど........、肝心の薬草を見つけるのが難しい...!見た目が似たような葉っぱだらけで見分けがつかない。それでもようやく一つ見つけたのだが.....これめっちゃ時間かからん?辛すぎ。

「なあ、ブルー、ブルーはこの薬草見分けつく?」

『いえ。ですが取り込めばわかります』

「マジ!?じゃあこれ取り込んで!そんで生えてるとこ教えて!」

『わかりました』

 ブルーに手伝ってもらったら、さっきまで見つからなかったのが嘘のようにぽんぽん見つけてくれる。ブルーがいてくれてよかった!
 そして、ノルマの半分くらい採取を終えたところでブルーが俺を呼んだ。

『マスター』

「どうした?」

『魔物です』

「えっ」

 どこだどこだと見回すと、100m程先にぼよんぼよんとした物体が見えた。スライムだ。
 このまま放っておいてもよさそうだけど、テイムできる条件とか数とか知っておきたいしな。

 近づいてもブルーの時と同様で襲ってきたりはせず、ぼよんぼよんと上下に動いているだけ。
 ....やばいな。ブルーを見てるからか愛着まで湧いてきたぞ。今後スライムは倒せないな...。

 ブルー曰く、テイムする時にあげる物は取り込められればなんでもいいんじゃないか、ということだった。ブルーもテイムされるのは初めてなので定かでは無いが。ま、やってみるしかないよね!
 因みに自分より大きい物は取り込めないらしい。


 試しに採取した薬草をあげてみた。
 やっぱり同じように匂いを嗅ぐ仕草をしてから取り込んだ。

 ..........テイムできたか?

『はいマスター』

「!?」

 え?俺今声出してないよな!?

『はいマスター。念話できるので発声は必要ありません』

 え!そうなのか!

『すみません、マスター。伝え忘れていました』

 ブルーが申し訳なさそうに言った。心なしか萎んでないか?可愛いんだけど。

「いいよいいよ。あの時は時間なかったし。ゆっくり知って行けばいいよ」

 慰めるように撫でてやると、先程の失敗を取り戻すためか早口でまくし立てる。

『マスター!他にも合体できたり、小さくなったりもできます!』

 激しく上下にぼよんぼよんしたかと思えば、さっきテイムしたばかりのスライムに体当たりするように体をくっつけた。するとむにょん、と体が重なり、どんどん一体化していく。あっという間に一体のスライムになり、俺の膝程まであった体は1.5倍くらいになった。

「おお!」

 感心していると今度はみるみる体が縮んでいく。すっかり小さくなった体はソフトボールくらいの大きさだ。

 て、手乗りスライム...だと!?かわいすぎるんですけどー!

「やっば!ブルー!めっちゃかわいい!街に居る時はこのサイズで俺の肩に乗っててよ!」

 ブルーを持ち上げてふにふにとつつく。小さくなっても弾力と手触りは変わらないようだ。

『そっ、それはいいのですがマスター、つつきすぎでは....?』

「あ、ごめんごめん。じゃあ再開するか!」

 もう一体のスライムは"あお"と呼ぶことにした。安直だなとは思うがわからなくなるよりはいいだろ。見た目ではどっちかはわかんないんだけどね。基本は一体になってもらって、必要な時だけ分かれてもらうことにした。因み一体の時の呼び名はブルー。


 2体になったことで作業のスピードが先程より格段にに上がり、ノルマのほとんどを採取し終えた時、再びブルーが俺を呼んだ。

『マスター、人間です』

「人間?」

 俺と同じような依頼でも受けたのだろうか。気になって目を向けると木にもたれかかるようにして、こちらをにやにやしながら見ている人影があった。

「おぉ、ようやく気づいたか」

「げっ」

 いつから居たのか知らないが、確かセロとか呼ばれていたギルドに居た男だ。思わず漏らしてしまった声に、怒ることなくむしろ笑った。それが気味悪くて少し後ずさる。ブルーとあおも合体してもらい、俺の近くへと寄らせた。

「何の用?」

「なんだよ。依頼達成できるか心配で先輩が見に来てやったんじゃねえか」

「頼んでない。それにもう終わるし」

「ははっ、そんな生意気な口利いてられんのも今のうちだぞ?」

「は?どういう———っ!?」

 いつの間にこんなに近づいたのか。50mは離れていたのに、音もなく隣に立っていた。この筋肉は伊達じゃないってわけね.....。
 咄嗟に離れようとしたが、その前に腕を掴まれてしまう。

「いっ....!」

「ほせぇ腕だな。こんなんで本当に冒険者を続けるつもりか?」

「っ、だから、危険なことはするつもりないって言ってるだろ!離せ!」

 痛い痛い!ほんとに痛いから!ってかあんたと比べたらだいたいの人が細腕になるんじゃないか!?これでもリアルの時より筋肉ついてるんだからな!

 心の中で悪態をついていると頭の中で声が響いた。

『マスター、反撃しますか?』

 いや、駄目だ。絶対手だすなよ。

『ですが....』

 俺は大丈夫だから。そこ動くなよ。

『.....わかりました』

 こいつは俺らより絶対強いし、もし反撃できたとしても大したダメージにはならない。それどころか、怒って逆にこちらが反撃をくらってしまえば、ブルーたちは一撃で倒されてしまうだろう。
 ゲームではテイムした魔物なら復活することもあるようだが、アナザー・ワールドここではどうなるかわからない。最悪の事態を避けるためにも、大人しくしているのが一番だ。

「この状況で他のことを考える余裕があるんだな」

 なにがおもしろいのか笑みをさらに深くする。

「こっちはどういう状況かさっぱりなんだけど」

 なにがしたいのかわかんないけどいい加減手離してくれないかな!?振りほどこうとしてもびくともしないし、絶対跡ついてる!

「へぇ?案外鈍いんだな。.......じゃあ、こうすればどうだ?」

「なっ!?」

 おもむろに左手を俺の服の襟に添えたと思ったら、おもいっきり下へ引っ張り、なんの躊躇いもなくびりびりと引き裂いた。

 あー!俺の一張羅!なにしてくれてんだよ!よし、わかった!嫌がらせに来たんだな!

「最っ悪。俺これしか持ってないんだけど」

「はっ、心配すんな。俺好みの新しい服買ってやるよ」

 弁償は当たり前だとしてもなんでお前好みの服なんだよ!そこは俺好みの服だろ!

「....趣味悪そうだから遠慮しとく」

「ははっ!ひでぇな。....それよりもっと狼狽えると思ったんだが....。まさか経験済みか?」

 いや、十分狼狽えてますけど。こんな経験日本でしてたまるか。そろそろ離してくれませんかね。

「気が済んだなら離せよ」

「まさか!むしろこっからが本番だろ?」

 服破っといてまだ足りないの!?まさか殴る気じゃないだろうな.....。
 なんて考えていたら足をすくわれ、強かに背中を打ちつけた。その衝撃に一瞬呼吸が止まる。

「がっ!はっ.....。いってー......。なんなんだよもう.....」

 痛みで涙が滲む。左腕は解放されていたが、すぐには動けなかった。その間に俺の上に跨り、破れた服から覗く素肌をさらりと撫でる。

「なっ、なにして!?やめろよっ!」

 殴るんじゃなかったのか!?いや、それも嫌だけど!

「やっぱいい表情かおすんなぁ。なぁ、俺んとこ来いよ。そしたら優しくするぜ?」

「はぁ?意味がわからんっ!嫌だって言ってるだろ!ってか触んなって!」

 明らかに俺のこと嫌いな感じだったのになんだこの変わりようは。殴られなかったのはよかったのだが、脇、腰、腹と豆だらけのかさついた手が這っていくのが気持ち悪い。男相手にこんなことしても楽しくないだろうに、こいつもしかして男が好きなのか?

 えっ、てことは俺今襲われかけてる?
 ようやく状況を理解した時、なぜか跨っていたセロが素早い動きで俺からどいた。
 嫌だって言ったのが伝わったのかと思ったけど、どうやら違うらしい。森の奥を睨みつけて戦闘態勢に入っている。
 なにかいるのかと俺も破れた服を片手で押さえながら立ち上がった。

 直後、森の奥から全身に黒を纏った人が音もなく現れた。

 ———えっ、なんでヴァルクが.....。

 それはセロも思ったようで、身体をわなわなと震わせながら叫んだ。

「なんでこんなところに黒の悪魔がいるんだよ!」

 ヴァルクは魔法使いメイジだ。対してセロは自身の身体に見合った大きな剣を構えている。今の間合いだと、完全にヴァルクが有利だ。それをセロもわかっているんだろう、険しい表情をしている。
 かくいう俺はそれ以前の問題だ。どちらにも敵いはしない。幸いヴァルクの目線はセロにしかいっていないようなので、ブルーたちと共にじりじりと後ずさる。

 ヴァルクが左腕を上げ、口元がぼそりと動いた直後、指先からけたたましい音とともに眩い光が走り抜けた。

「ぐあっ!!」

 セロの苦しげな声が届いた時には、地面の上で伸びていた。

 い、一撃!?今の、雷魔法だよな....。
 ちらりとヴァルクを伺うと、既に彼はこちらを見ており、目が合った。

 びくり、と身体が震えたが、逃げられるわけもなく、両腕で頭を守りながらぎゅっと目を閉じた。
 まさか、気絶イベントは必ず起こるのか!?街に入る時に気絶しなかったツケがここで回ってきたのかもしれない。

 だが、いつまで経っても衝撃はやってこない。恐る恐る目を開けてみると、思ったより近くに顔があった。

「わっ、えっ....?」

 あれ....?攻撃されない.....?
 相変わらず、無表情でなにを考えているのかは全く読めない。
 ......しかしイケメンだな。俺もイケメンに作ったつもりだったけど、全然敵わない。男らしさもあるのに、綺麗でもあるのだ。

 こんな状況にも関わらず見惚れていると、不意にヴァルクの視線が下がった。

「あっ.....」

 さっき触られた記憶が嫌でもよみがえり、びりびりに破れた服を引き寄せ、肌を隠す。
 その時、ふわりと肩になにかをかけられた。
 なんだ?黒いコート....いや、マントか。でもなんで?ヴァルクがかけてくれたようだが意図がわからない。

 顔を上げて声をかけようとした時には、長い髪を翻し、すでに背中を向けて森の奥へと歩いてしまっていた。


 え.......、もしかして、助けてくれた......?
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