ボスルートがあるなんて聞いてない!

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5.うちの子しか勝たん!

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 あの後、さすがに置いていくわけにもいかないので、ブルーたちにセロを運んでもらい、門番の人に事情を説明して引き渡した。
 セロの処遇については、双方の話を聞いてみないとわからない、ということだったので明日、ギルドで聞き取り調査を行うらしい。

 ま、そりゃそうだよね。俺が嘘ついてるかもしれないし。
 ただ、セロとの体格差や破れた服を見て、少なくとも門番さんは信じてくれたようだ。安い服屋さんを教えてもらった。

 ギルドに向かう前に服を買い、着替えてから向かった。門番さんに教えてもらった服屋は確かに安かったが、それでも痛い出費だ。絶対にもっといい服を弁償させてやる。いや、お金でもいいな。


「サクヤさん、お疲れ様でした。.......あれ、行きとお洋服変わっていませんか...?」

 ローニャさんに取った薬草を見せると、服が変わったことに気づいたようだ。

「ああ、門番さんから連絡くると思いますけど、あのセロって人に服破かれちゃいまして」

「えっ!?あれだけ注意したのに...!サクヤさん、大丈夫でしたか!?他に何かされていませんか?」

「ええ。大丈夫です。通りすがりの人が助けてくれたんで」

 男に襲われかけたなんて口が裂けても言えない。それと、ヴァルクのことも言わなかった。話したとしても信じてもらえるか微妙だったし。
 もしかしたら目が覚めたセロが話すかもしれないが、それはそれで。

「なので明日ここで聞き取り調査するみたいです」

「わかりました。サクヤさんはどうされますか?もしセロさんに会いたくないというのであれば、出席しなくてもかまいませんが」

「え?でも門番の人に俺も参加するように言われましたけど」

 出席しなくてもいいの?

「セロさんは過去にも同じような事を何度か起こしてるんです。今回もサクヤさんに絡んでいたので注意はしたのですが....」

 何度も!?やばいやつじゃん!なんでそんなやつ野放しになってんのさ!

「捕まえたりできないんですか?」

「........それが、セロさんはどうも.....その、上手い、みたいでして......。被害に遭われた方々が被害を取り下げてしまうんです.....」

 上手いってなにが!?口か?みんないい様に言いくるめられられてるとか?あいつ最低だな!

「俺が訴えたら捕まえられますか?」

「.......正直なんとも...。ただ、なんらかの処罰は下されるはずです」

 なるほど。日本より規制が緩そうだな。

「ちゃんと出ますよ。弁償と慰謝料請求しないと」

 俺が泣き寝入りすると思ったら大間違いだからな!いくら口が上手くてもこの二つは譲らん!

 ローニャさんは俺の言葉に目をぱちくりとさせたが、すぐにほっとしたように笑った。

「わかりました。明日、お待ちしています。それでは薬草の確認をしてきますので少々お待ちください」


 そうして報酬を受け取り、宿へと戻った。
 一階が食堂の様になっていて、泊まる人には安く提供してくれるため、夜はここで食べた。メニューも味も日本とほぼ変わらず美味しい。味しなかったらどうしようとか考えてたからほんとよかった。


 だがしかし!お風呂がないなんて!!ひどいよ神様!
 今日は地面にも押し倒されたし、いろいろあったから湯船にゆっくり浸かりたかったのに!
 身体を拭くお水を用意してくれるところもあるようだが、ここは安いこともあってかそれもないらしい。

「お風呂ー......」

 しくしくとベッドの上で悲しんでいると、ブルーが心配するように近くへ寄ってきた。

『マスター、私の大きさでは浸かることはできませんが、綺麗にするだけでもよければ可能です』

「え?そんなことできるの?」

『はい。浄化、というのですが』

 浄化!?うちの子そんなことまでできるの!?
 浄化は水だけじゃなく、野菜などについた土を除去する時にも使われる。つまり、人に使えば汚れや埃などを除去してくれるのでお風呂に入らなくても綺麗になるのだ。
 うちの子しか勝たんな!

「ブルー!お前がいてくれてよかったー!」

 嬉しくてブルーに抱きつくと、いつものぽよん、とした弾力がなく、そのまますり抜けた。

「うお!?」

 勢い余ってブルーの中に入ってしまったのかと焦ったが、これが浄化の方法らしい。ブルーの中で上半身が無重力になったようにふよふよと浮く。不思議な感覚だ。
 ゆっくりと上半身から下半身へと移動していく。俺が動かなくてもブルーが移動してくれ、全身の浄化が終わった。

 お風呂上がりの時のようなさっぱりさは感じないが、髪の毛はさらさらで、体のべたつきもなくなっている。すご!
 ブルーが俺と同じくらいの大きさになれば全身を包んでもらえるし、そうなったら絶対気持ちいだろう。どのくらいかかるかはわからんけど。

「ブルー、ありがとう!ほんと、ブルーがいてくれてよかった」

『..........』

 なんの気なしに言った言葉だったが、ブルーは黙り込んでしまった。

「ブルー?」

『.....私は、お役に立てているのでしょうか?』

「へ?当たり前じゃん。ブルーいなかったら俺独りぼっちだったし、あっという間に野宿決定だからね?めちゃくちゃ助けてもらってるよ」

 精神的にも喋れるスライムが近くにいるだけでだいぶ違う。

『......ですが、マスターが危険な時に何もできませんでした.....』

 セロに襲われたときのことか。でもあれは俺が何もするなって言ったわけだし。

「あー...あれはしょうがないよ。俺だってなんもできなかったしさ」

『なぜ、私を盾にしなかったのですか?』

「うん?」

『確かに私は弱いですが、一瞬の隙だけなら作れたはずです。その間に——』

「ブルー!」

 大きな声でブルーの言葉を遮った。

「俺はお前を見捨てるつもりはないぞ」

『で、ですが私の代わりはいくらでも——』

「ブルー、それ以上言ったら怒るからな」

『なぜです?本当のことではありませんか』

 ブルーは本当にわかっていないようで、怒る俺を見てあたふたしている。
 これは魔物と人の違いなのだろうか。そうだとしても、ちゃんとわかってもらわないと。

「まだ会って1日も経ってないけど、その間過ごした時間はブルーとの間にしかないものだろ?新しい魔物とはまた別だ。お前の代わりはいない」

『......それでも、私はマスターを守るために存在しているのです。マスターを守れなければ意味がない』

「ああ、それならもう守ってもらってるから大丈夫だよ。さっきも言ったろ?俺が今こうしていられるのはブルーがいてくれるお陰だから」

『......身に覚えがありませんが』

「いいか、ブルー。人にはそれぞれ役割があるんだ。1人で全部できるやつなんてそうそういない。ブルーには戦う力はないけど、薬草をすぐに見つけてくれたり、浄化もできたり、俺にできないこといっぱいしてくれてるだろ?俺にできることはブルーを守ることくらいだから。それくらいはさせてくれ」

 じゃないと俺、ほんとになにもできないからね?自慢じゃないけどさ。

『......魔物を守る必要はありますか?』

「んー、魔物っていうよりブルーはもう友達みたいなもんだから。友達守るのは当たり前だろ?」

『とも...だち.....。.....すみません。よくわかりません』

「とにかく、ブルーが大事ってこと!だからブルーが傷つくのは嫌だし、傷つけるやつは許さない」

『それならわかります。私もマスター大事。ですから危険な時は逃げてほしいのです』

 う、これじゃあ堂々巡りだな....。

「わかった。じゃあお互い自分を犠牲にしないようにしよう。それならいいだろ?」

『.....わかりました。マスターがそう言うのであれば....』

 渋々、といった感じではあったが、やっと納得してくれたようだ。今日はいろいろあって疲れたし、もう寝ようかなと目を閉じると、ヴァルクの顔がぼんやりと浮かぶ。

 ......やっぱり、助けられたんだろうなー....。

 理由は全くわからないけど、ゲームとは明らかに違う展開を見せている。だってボスキャラだよ?なんで人助けしてんのさ。
 考えたところで答えなんて出るわけがない。とりあえず、また会ったらお礼言ってマント返して....などと考えていたらいつの間にか眠っていた。
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