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プロローグ
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俺は桐生樹。21歳。どこにでもいる平凡な大学3年生だ。
サークルには所属しておらずバイトと勉強の毎日。
もちろんそれなりに遊んではいるが2年前に兄が死んで一人暮らしをしてから、少し荒れた生活を送っている。
兄が死んでから両親は心を病んだ。
誰にでも優しく、賢い兄は両親の自慢の息子であり、俺の自慢の兄貴でもあった。
が、俺がいくら慰めた所で意味はなかった。
いっそ俺が死んだ方が良かったのではと思ったこともあるくらいだ。
今は施設で暮らしている。
当時は思春期だったこともあり、鬱陶しく感じ遠ざけていた事をひどく後悔した。
大学に受かったことすら自分では伝えず、親から聞いた兄はすぐに電話をくれた。
その言葉を今でも忘れていない。
「大学合格おめでとう。さすが樹。ほんと、自慢の弟だよ。近くに寄った時には連絡ちょうだいね。お祝いしなきゃ」
それに対して俺はああ、と無愛想な返事しかしなかった。
結局近くに行っても連絡せず、それが最後の会話となった。
今日のこの時間、兄の命日の日に花を一輪携え階段の上で目を閉じて黙祷を捧げていた。
あれから何度か足を運んでいるが今だに死んだことに実感が湧かない。
葬儀のときも涙は出てこなかった。
胸にポッカリと穴が空いたようで何をしても心が満たされることはなかった。
その穴を埋めようとして朝方まで遊び歩く事もよくあった。
黙祷を捧げていると急に周囲がうるさくなった。
それでも目を開けず黙祷を続ける。
「おい!てめえ邪魔だよ!」
近くで声が聞こえドン、と肩に衝撃を受けて浮遊感が体を包んだ。
驚いて目を開けたときにはもう地面が間近にせまっていた。
うわ、死んだ。
思ったよりも冷静で死んでもいいか、とまで思っていたのかもしれない。
咄嗟に手を出す事もしなかった。
両親もすでに心が壊れているし他に悲しむ人も居ないだろう。
ドンっという鈍い音と共に体に衝撃を感じたが不思議と痛みはなかった。
周りの声が遠くに響く中、俺は意識を手放した。
サークルには所属しておらずバイトと勉強の毎日。
もちろんそれなりに遊んではいるが2年前に兄が死んで一人暮らしをしてから、少し荒れた生活を送っている。
兄が死んでから両親は心を病んだ。
誰にでも優しく、賢い兄は両親の自慢の息子であり、俺の自慢の兄貴でもあった。
が、俺がいくら慰めた所で意味はなかった。
いっそ俺が死んだ方が良かったのではと思ったこともあるくらいだ。
今は施設で暮らしている。
当時は思春期だったこともあり、鬱陶しく感じ遠ざけていた事をひどく後悔した。
大学に受かったことすら自分では伝えず、親から聞いた兄はすぐに電話をくれた。
その言葉を今でも忘れていない。
「大学合格おめでとう。さすが樹。ほんと、自慢の弟だよ。近くに寄った時には連絡ちょうだいね。お祝いしなきゃ」
それに対して俺はああ、と無愛想な返事しかしなかった。
結局近くに行っても連絡せず、それが最後の会話となった。
今日のこの時間、兄の命日の日に花を一輪携え階段の上で目を閉じて黙祷を捧げていた。
あれから何度か足を運んでいるが今だに死んだことに実感が湧かない。
葬儀のときも涙は出てこなかった。
胸にポッカリと穴が空いたようで何をしても心が満たされることはなかった。
その穴を埋めようとして朝方まで遊び歩く事もよくあった。
黙祷を捧げていると急に周囲がうるさくなった。
それでも目を開けず黙祷を続ける。
「おい!てめえ邪魔だよ!」
近くで声が聞こえドン、と肩に衝撃を受けて浮遊感が体を包んだ。
驚いて目を開けたときにはもう地面が間近にせまっていた。
うわ、死んだ。
思ったよりも冷静で死んでもいいか、とまで思っていたのかもしれない。
咄嗟に手を出す事もしなかった。
両親もすでに心が壊れているし他に悲しむ人も居ないだろう。
ドンっという鈍い音と共に体に衝撃を感じたが不思議と痛みはなかった。
周りの声が遠くに響く中、俺は意識を手放した。
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