彼女と出会ったその日から~なぜ俺は毎日写真や動画を撮られるのだろうか~

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一章

16話 仮入部2

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授業がすべて終わり、放課後にあたる時間。
俺は学校指定の体操服に着替え、校庭へと急いだ。

すでに部活は始まっており部員がそれぞれの練習をしていた。
その中に俺と同じ体操着を着ている一年生がいる。
上級生と混じって練習をしているようだ。

俺が入りずらそうにしていると見たことのある男がボールを蹴ってきた。

「一緒にやろ」
「はい」

俺はそのボールを蹴り返しながらそう返した。
それからは無言でパスを回した。
足元に返したり、胸に返したりと、いろいろなパスの練習をした。
20分ぐらいしただろうか。しばらくして顧問の先生が来た。
それに合わせて部員は急いで先生の前に並び、「お願いします」といいミーティングを始めた。

「一年生はドリブルとパスの練習をするように」

1年生に向けてはそれだけだった。
並んで分かったのだが、一年生は8人だ。
初日にしてはなかなかの人数ではないだろうか。

「では各々始めてくれ」

先生がそう言うなり、部活開始時のルーティーンだと思われるボールを使った走り込みを始めた。
対して我々1年生は校庭の隅に置かれているマーカーを避けながらボールを蹴るという地味でつまらない練習だ。
俺はすでにパスもドリブルも先輩より数倍上手くできる。
他の1年生は一生懸命頑張っているが、上手いというわけではない。

「つまらないなぁ」


それから部活が終わる30分前まで、つまり2時間弱つまらない時間が続いた。
しかし最後の30分は違った。

「1年生対2年生で4対4の試合を15分に分けて始める」

先生はそういうと、1年生を適当に振り分け2年生はスタメンから選んだ。
俺は後半15分に振り分けられたので前半15分はになる。

やはり1年生と2年生。それもスタメンとやり合うと目が当てられないほどボコボコにされる。
それは0対6という、ボコボコにされすぎて逆に清々しいほどに。
しかし、2年生のスタメンは強いというわけではなく所々に欠点が見られた。
それは多分、1年生を舐めているからだろう。

次は俺の番だ。
何が何でも勝ってやる。
相手はキャプテン率いるスタメンの中でも強い先輩たちだろう。
0対6からのスタート。
顧問の先生は何をしたいのだろうか。
それに何故か満足したような表情でこちらを見ている。

「ボールは一年生からでいいぞ」
「ありがとうございます」

俺は先輩の言葉に甘え、ボールを仲間に渡した。


試合開始のホイッスルが鳴り、味方が横にいる俺にパスをする。
先輩たちは舐めている。
動きが遅い。

俺は1人でゴールに向かおうとしたが、無防備だったので少し行ったところで思いきりボールをゴールめがけて蹴った。
当然、外すことなどなくシュートが決まった。
1年生に1点決められたのに驚いたのか開いた口が塞がっていない。

次は先輩からのボールだ。
ホイッスルがなり、先輩たちがボールを回し始めた。
やはり1年やってきただけある。
が、穴が多い。
俺はボールを持っているキャプテンに張り付き、少し押して体幹が崩した。
その瞬間を逃さずにボールを奪いゴールへと向かう。
その間に何人かの先輩が邪魔をしようと上がってきたが、体を軽く反転させるだけで避けれた。
難しいドリブルなどしなくても簡単に避けることができる。


そんな感じであっという間に逆転し、9対6になった。
そして先輩たちは点数を取り返せないまま部活は終わった。

制服に着替え、帰ろうとするとキャプテンから呼び出された。
「お願いだからうちに入ってくれ」という頼みだろうか。
きっとそうだろう。
俺は呼び出し先の校舎裏へと向かった。

校舎裏に着くと、キャプテンは虫の居所が悪そうにしていた。
俺が来たことに気づくといきなり距離を詰めてきて胸倉を掴んだ。
これは、予想外だ。

「おい調子にのんなよ。1年坊が」

ここは言い返さない方が得策だろう。

「すみません」

途端、右頬に痛みが走った。
どうやら殴られたらしい。

「どうしてくれんだよ!面子丸つぶれじゃねぇか!」
「…弱いのが悪いんだろ」
「は?」

拳を振り上げ、俺を殴ろうとする。
しかしまぁ何というか。
プレーと同じでとても雑だ。
喧嘩慣れはしていないように感じる。

俺は殴られる前にその振りかぶっている手を抑え、股を蹴り上げた。
股を蹴るのは卑怯と言われるが男にはこれが1番効くのだから仕方がない。
しかし、声が出ないぐらい苦しみながらもどこかに向かって這っている。
角に着いたところで、どこからか携帯を取り出して今の一部始終を再生した。

「お前みたいのはこの学校にいらないんだよ」

ふむ。随分とやり慣れているな。
これまでに何回もやってきたのだろう。

「で?」

俺は突き出している手を踏みつけ、携帯を無理やり奪い取った。
そしてそのまま流れるようにして真っ二つにへし折った。
それから地面にたたきつけ、踏みにじる。
仕上げに、バックから水を取り出してそのボロボロの携帯にかけた。

「二度と関わるな」

何が起こっているか理解できていない固まっているキャプテンにそう言い、俺は学校を出た。

たく、無駄な時間を使わせやがって。

「流石にやりすぎじゃないですか?」

校門を出たところで桜さんにそう言われた。
どうやら見ていたようだ。
その証拠として携帯で写真を見せてきた。
桜さんは口では「やりすぎ」と言ったが、表情は笑顔でいっぱいだ。

「写真部を期間限定で作ったのですが、入りませんか?」
「仮入部ですが、明日から入ろうと思います」

その言葉を聞くなり、桜さんは背景に花々が描写されそうな笑みを浮かべ

「ありがとうございます!!」

と言ってくれた。



家に着くと、桜さんから自分の試合中の写真がたくさん送られてきた。
その写真と一緒に一言だけメッセージも送られてきた。

かっこよかったです!!

とそれだけ。
それだけのはずだが、俺は自信の顔が赤くなっていくのを確かに感じた。
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