彼女と出会ったその日から~なぜ俺は毎日写真や動画を撮られるのだろうか~

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一章

20話 買い物1

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あの朝からというものあの害虫のような一軍の男は息をひそめている。
すぐに桜さんに手を出すと思っていたが、桜さん曰くまだ出されていないそうだ。
思ったより大人しくて安心した。


さて、今日は日曜日という休日。
俺の休日の過ごし方は勉強漬けなのだが今日は違う。

桜さんと一緒に居ることで、カメラに興味を持ち始めた俺はついにカメラが欲しくなってしまった。
しかし俺はカメラの良し悪しがよくわからない。
フィルムやらなんやら調べても俺にはさっぱりで、半分諦めていたのだが
携帯でカメラについて調べていることが桜さんにバレたせいで桜さんと買い物をすることになった。
とても嬉しいのだが、異性と二人きりでの買い物というのが初めてなのでどうも緊張してしまう。

集合場所は近くのデパート前の入り口。
時間は朝9:00。
自分の家からは30分ほどで行けるのだが、現時刻は8:30。
あと10分ほどで着いてしまう。

ぐちゃぐちゃと考えていると、気づけばデパートの最寄駅に着いていた。
休日ということもあり通勤ラッシュレベルで人がごった返している。

人混みをかき分けて、やっとの思いで駅を出るとそのまま真っ直ぐデパートへと向かった。
デパート周辺には色々なお店があり、例えば百均ショップやテレビで見るような若者が食べる食品だったりと
大分都会だ。
周りを見る限り、若者ばかりなので「若者の街」と言ってもいいのかもしれない。
残念ながら俺はこういう場所とは無縁だったので、すでに目が回りそうで疲れきた。

やっとの思いでデパート前に着いた頃にはすでに9:00を過ぎていた。
桜さんはデパートの前のベンチに腰を掛けていた。
携帯でもいじっているのかと思ったが、桜さんの周りには囲むようにして男が立っている。
ナンパだろうか。
近づくにつれて会話がよく聞こえてくる。

「お姉さん、お金とか出してあげるから俺たちと遊ばない?」
「人を待っているので」
「そんなことを言わずにさ、楽しませてあげるから」
「結構です」

ナンパしているのは主に一人らしく、周りの3人はただニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべているだけだ。
こういう輩は年中発情期なのか、と思うほどに気色が悪い。
周りの人は見て見ぬふりだ。

「やっ、離して!」

ナンパしていた男が桜さんの手首を掴んだ。
それに抵抗しているようだが、力差がありすぎる。

…人が多くてなかなか辿り着けない。

「ほら、乗れ!」

男が手首を引っ張り近くの男の者だと思われる車へと押し込もうとした。

あと少し、あと少し…。

桜さんは扉を持ち、必死で抵抗しているがダメそうだ。
目には涙が溜まっている。

ちっ、他人と当たることを考えていると間に合わない。

俺は避けるのをやめ、重心を軽く落として主に向かってくる人を押し退けて進む。

「助けて!!」

桜さんの叫ぶ声が聞こえた。
白昼堂々とこんな誘拐じみたことをする方もおかしいが、それを見て見ぬふりする方も十分おかしい。
やはり若者の街に来慣れている若者は腐っている。

「そこのお兄さん、何をやっているんですか?」
「あ?お前には関係ねぇだろ」

うっ…。
酒臭い。相当酔っているな。
すでに警察は呼んであるから俺は時間を稼ぐだけでいい。

「おらっ!」

男は必死に抵抗している桜さんを思いっきり押した。
桜さんの目から涙が溢れる。

「…てめぇ、殺すぞ」

気づくと俺は男の手首を掴み静かにそう言っていた。
それに対して、男はヘラヘラとしている。
アイコンタクトでもしたのか男たちが俺を囲った。
必然的にここを通る人が少なくなった。

警察はまだなのか。
遅い。
まだ1,2分では来ないだろう。
なら大丈夫か。

俺は掴んでいる男の手首を離すと、相手が手をしまう前に指を掴み思いっきり反対に反らした。

「いっった!!!!」

男の悲鳴が響く。
野次馬が集まってきた。
俺と桜さんはその野次馬から逃げるようにして近くの路地裏へと入った。

「…ごめん」

俺の口から出たのはそんな情けない一言だった。
思うことはたくさんあるが、その言葉しか口からは出てこない。
優柔不断な自分がみっともない。
ナンパされているのなら他人のことなど気にせずに止めに入ればよかった。
そうすればこんなことにならずに済んだのに…。

桜さんはまだ何が起こったのかわかっていないのか、震えたまま動かない。
いつもの笑顔はどこにもない。

「おい、お前」

路地裏の奥から聞いたばかりの声がした。
振り向くと、さっきの男と男3人が突っ立っていた。
口の回る男はさっき思いきり反らした指を大事そうに包んでいる。
もしかして折れたのか?

「よくもやってくれたな。やっていいことと悪いことがあんだろ」
「…そちらこそ」

男3人が殴りかかってきた。
後ろの男は買ったと言わんばかりの笑みを浮かべている。

「これは正当防衛ですからね」

俺は家の方針でいろいろやってきた。
塾はもちろん、水泳や体操、サッカーの他にも空手、柔道など友達と遊ぶ暇などないぐらいに
息が詰まりそうになるぐらいにたくさんのことをやってきた。
それも中途半端で終わらせることは許されない。

だから、素人3人を無力化することぐらい簡単だ。
あっと言う間に無力化した俺は馬鹿みたいな顔をしている男に近づき

「次やったらわかってるな?」

と低い声で言った。

「桜さん、そこの喫茶店入ろうか」

俺は桜さんの腰に手を当て、路地裏をでてすぐの所の喫茶店に入った。
適当な席を見つけてそこに座らせると、俺は飲み物を買いに行く。
俺はコーヒーで、桜さんには一番おすすめと記されている飲み物を買ってあげた。

「その、飲むか?」

桜さんに差し出すと、それを恐る恐る受け取り飲み始めた。
ほっとした俺は話を進める。

「今日はどうする?帰る?」
「いやだ。その、一緒にいてほしい」
「ん、わかった」

そう言うと、桜さんは目を拭いて赤くなった目のまま俺に満面の笑みを向け

「ありがとう」

と言ってくれた。
その明るくあろうとする姿に俺に心はキュウッと締め付けられる。

自然に手が伸び、桜さんの手に自分の手を重ねる。
それに驚いたのだろう、俺の顔をまじまじと見てくる。
そしてニコリと笑うと、俺の手を握った。

桜さんの顔がりんごのように赤くなった。
きっと、今の俺もそれくらい赤いだろう。
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