彼女と出会ったその日から~なぜ俺は毎日写真や動画を撮られるのだろうか~

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一章

39話 御崎家②

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「まず縁談の話なのですが、なかったことにしてください」
「…なぜです?」

父が噛みつく。
どちらも表情は穏やかだが、どこか物々しい。

「話をいただいた時に私は娘に確認を取らず、私の独断で決めてしまいました」
「そう、ですか。ですが、今の気持ちはわかりませんよ」

大分大きく出たな。
慎重な父がこんなに攻めるだなんて、珍しい。
俺には何故かわからないが、何か焦っているように見える。

「それがですね、私の娘には好きな人がいると、言われまして」
「それは…。それは良かったですね。娘さんが成長されている証拠ですから」
「嬉しい限りです。娘には長らく友達ができませんでしたから…」
「…心中お察しします」
「ありがとうございます」

どうやら父が折れたようだ。
流石に相手側を無理な理論で攻めるわけにはいかなかったように思える。
しかし御崎杏は、本当に自分の事を隠しもせずに父に話しているものだ。
そんな父を持っている彼女が羨ましく思う。

「では、今日はこれで失礼して」

父がそう言い立ち上がると、御崎洲は合わせるように立ち上がり

「どうせなら夕ご飯を一緒に食べませんか?」

と引き留めるように言った。
数秒の沈黙が流れる。

「いいですよ。今日はこの後の予定がありませんから」
「ありがとうございます。では、私の部屋で雑談でもしませんか?」
「そうですね。御崎家のことも聞きたいですし」
「では、案内します」

大人たちは勝手に決めて俺と御崎杏を置いて客室を出た。
全くなんて身勝手な人達なんだ、と思いつつ、どこか救われた気がしている。

「蔭西さん、私の部屋に来てください」

静かにそう言うと御崎さんは、先に客室を出た。
俺はその後を追うように客室を出る。
前と同じような通路を渡り、御崎さんの部屋へと入る。

相変らずこの空間だけ洋風で和が見られないオシャレな部屋だ。
外と中の差がすごすぎて眩暈が起こりそうなぐらいに。

「そろそろ望くんの誕生日じゃないですか」
「そうなんですか?」
「そうですよ。私が忘れるはずがないわ」

御崎さんはそう言いながら厚めのコートを羽織る。
やはり普通の服では寒いのだろうか。

「それでお願いがあります」
「なんでしょうか」

向かい合い、真面目に

「望くんに何が欲しいか聞いてください」

そうお願いしてきた。
別に俺には断る理由もなかったのでそれを了承した。

「ありがとうございます!」
「いえいえ。それより自分では聞かないのですか?」
「は、恥ずかしいでしょう!そんなこと!」

わっ、と照れ隠しなのか大きな声で言った。

「た、確かに…」

俺も桜さんに直接聞くのには少し抵抗がある。
だからか御崎さんの言ったことが納得できた。

「そういうことなので、お願いします」
「ええ。ところで友達ができなかったのは本当ですか?」
「うっ…。いきなりぶっこんできますね」

流石にいきなりすぎたか?
しかし気になりすぎて、聞かずにはいられなかった。

「そうですね。私にはこれまで、というより今もあまり友達はいません」
「それは、家柄のせいですか?」
「それもあるかもしれませんが、多分私にも…」

御崎さんは本棚からアルバムを取り出すと、それを俺に見えるように開いた。

「少し、私の昔話をしましょう」
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