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二章
断章
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その時、心臓が口から飛び出そうなぐらいドキッとした。
襲い掛かる罪悪感。
自分のことを隠していたことに対して、蔭西くんを騙していたことに対して。
「…久しぶりだね、蔭西くん」
私は素直に書類に書かれていることを認める。
それでもまだ罪悪感は消えない。
中学生の時、一人にしてしまった。
苦しそうな蔭西くんを見てるだけだった。
「それと、あの時はごめんね。1人にして、救えなくて」
息が詰まりそうだ。
ちらりと蔭西くんを見る。
なんで蔭西くんがそんな顔をしているの?
嘘をついていたのは私なのに…。
悪いのはこっちなのに…。
なんでそんな浮かない顔をしているの?
あぁ、そうか。
怖かったのは私だけじゃないのか。
「別にバレたところで、私の思いは変わらない」
「で、でも」
私は彼を包み込んだ。
「いつか話すつもりだったし、蔭西くんがそんな背負うものなんてないよ」
「けど、すまない。桜さんの心の準備ができていなかったのに…」
「そりゃ、最初はびっくりしたし怖かったけど、なんか蔭西くんならいいやって思って」
「…………」
「それにしても急展開だね。こんなすぐにバレるなんて思わなかったよ」
「…………」
「気にしなくていいよ。私が大丈夫って言ってるんだから」
「そ、っか。ありがとう」
蔭西くんは安心したのか、いつもの感じに戻った。
「じゃあ今日は帰ろうか」
「別にいいけど、お昼ご飯ぐらい一緒にどう?」
「ああ、うん。いいよ」
しかし、まだ浮かない表情をしている。
私は元気でいなければいけない。
だから蔭西くんにも元気でいて欲しい。
「ここ蔭西くんのおごりね。これで罪悪感無くせなかったら明日もだよ!」
私は高そうなレストランに入った。
罪悪感を消すには、それなりの代償を払わなければいけない
と何かの本で読んだことがあるからだ。
「わかったよ。これでちゃらね」
「そうそう。距離ができたままなんて嫌だから」
そのレストランで楽しく会話をしながら、美味しいごはんを食べる。
夢のような時間だった。
箕六くんは金額を見せてくれなかったが、その顔はいつもよりも幸せそうな笑みに満ちていた。
「うーん、美味しかった」
「それは良かった」
駅までの間に会話はあまり生まれなかったが、箕六くんといれるだけでとても幸せだった。
「手、繋ご?」
私はいつの間にかそんなことを言っていた。
「いいよ」
そう言いながら、差し出した私の右手に箕六くんの左手が絡む。
胸がドキリとして、顔が赤くなっていくのが自分でもよくわかった。
駅までの短い時間だったが、その時間はいい意味でとても長く感じることができた。
その日の夜。
初めて蔭西家について調べた。
そしてその日の夜に病院から呼び出され、おばあちゃんにガンがあることを告げられた。
うちに手術できるぐらいのお金はないし、どうすれば…。
脳裏をよぎったのは箕六くんだった。
頭を振る。
私は馬鹿かっ。
今度はまた別に意味で胸が苦しくなる。
でも、おばあちゃんにはまだ生きていて欲しい。
次の日、私は箕六くんを家に呼んだ。
そしておばあちゃんのことを話した。
「ガンが見つかったの。手術しないとダメなぐらいに進行したのが」
机の上に置いた拳に力が入る。
「大丈夫なの?」
「大丈夫じゃない。でも、家にそんなお金はない。だから…」
「いいよ」
「え!?」
罪悪感と緊張でおかしくなりそうな私とは正反対に、落ち着いた声色で快く承諾してくれた。
「その代わりなんだけど、この家に少しの間住まわせてくれない?」
「えっ」
一瞬理解が出来なかった。
「俺、家を出たんだ。あてもないから…。でも、全然断ってもらっても構わない」
いよいよ意味がわからなくなった。
しかしでも、箕六くんは私の彼氏だ。
「いいよ」
「…本当に?」
「困ってる人は助けないと」
お互いにだ。
すると突然手を掴まれた。
「ありがとう…。ありがとう」
「こちらこそ、ありがとう。お金を貸してくれるんだもん。こんなことでいいならしてあげるよ」
箕六くんはお金のことなどどうでもいいのか、全くもって気にしていなかった。
「それに、私の彼氏だし」
「…ありがとう」
少し湿っぽい空気が流れる。
本当に自分は幸せ者だな、と同時に思う。
「えっと、じゃあ、夜ご飯作るかな!」
私はそう言って立ち上がり、台所でエプロンをした。
白色のエプロンで、お母さんのお下がり。
こうやって彼氏の前でご飯を作っていると、なんだか新婚感あるなぁ。
などと勝手に思い、勝手に恥ずかしくなってしまった。
襲い掛かる罪悪感。
自分のことを隠していたことに対して、蔭西くんを騙していたことに対して。
「…久しぶりだね、蔭西くん」
私は素直に書類に書かれていることを認める。
それでもまだ罪悪感は消えない。
中学生の時、一人にしてしまった。
苦しそうな蔭西くんを見てるだけだった。
「それと、あの時はごめんね。1人にして、救えなくて」
息が詰まりそうだ。
ちらりと蔭西くんを見る。
なんで蔭西くんがそんな顔をしているの?
嘘をついていたのは私なのに…。
悪いのはこっちなのに…。
なんでそんな浮かない顔をしているの?
あぁ、そうか。
怖かったのは私だけじゃないのか。
「別にバレたところで、私の思いは変わらない」
「で、でも」
私は彼を包み込んだ。
「いつか話すつもりだったし、蔭西くんがそんな背負うものなんてないよ」
「けど、すまない。桜さんの心の準備ができていなかったのに…」
「そりゃ、最初はびっくりしたし怖かったけど、なんか蔭西くんならいいやって思って」
「…………」
「それにしても急展開だね。こんなすぐにバレるなんて思わなかったよ」
「…………」
「気にしなくていいよ。私が大丈夫って言ってるんだから」
「そ、っか。ありがとう」
蔭西くんは安心したのか、いつもの感じに戻った。
「じゃあ今日は帰ろうか」
「別にいいけど、お昼ご飯ぐらい一緒にどう?」
「ああ、うん。いいよ」
しかし、まだ浮かない表情をしている。
私は元気でいなければいけない。
だから蔭西くんにも元気でいて欲しい。
「ここ蔭西くんのおごりね。これで罪悪感無くせなかったら明日もだよ!」
私は高そうなレストランに入った。
罪悪感を消すには、それなりの代償を払わなければいけない
と何かの本で読んだことがあるからだ。
「わかったよ。これでちゃらね」
「そうそう。距離ができたままなんて嫌だから」
そのレストランで楽しく会話をしながら、美味しいごはんを食べる。
夢のような時間だった。
箕六くんは金額を見せてくれなかったが、その顔はいつもよりも幸せそうな笑みに満ちていた。
「うーん、美味しかった」
「それは良かった」
駅までの間に会話はあまり生まれなかったが、箕六くんといれるだけでとても幸せだった。
「手、繋ご?」
私はいつの間にかそんなことを言っていた。
「いいよ」
そう言いながら、差し出した私の右手に箕六くんの左手が絡む。
胸がドキリとして、顔が赤くなっていくのが自分でもよくわかった。
駅までの短い時間だったが、その時間はいい意味でとても長く感じることができた。
その日の夜。
初めて蔭西家について調べた。
そしてその日の夜に病院から呼び出され、おばあちゃんにガンがあることを告げられた。
うちに手術できるぐらいのお金はないし、どうすれば…。
脳裏をよぎったのは箕六くんだった。
頭を振る。
私は馬鹿かっ。
今度はまた別に意味で胸が苦しくなる。
でも、おばあちゃんにはまだ生きていて欲しい。
次の日、私は箕六くんを家に呼んだ。
そしておばあちゃんのことを話した。
「ガンが見つかったの。手術しないとダメなぐらいに進行したのが」
机の上に置いた拳に力が入る。
「大丈夫なの?」
「大丈夫じゃない。でも、家にそんなお金はない。だから…」
「いいよ」
「え!?」
罪悪感と緊張でおかしくなりそうな私とは正反対に、落ち着いた声色で快く承諾してくれた。
「その代わりなんだけど、この家に少しの間住まわせてくれない?」
「えっ」
一瞬理解が出来なかった。
「俺、家を出たんだ。あてもないから…。でも、全然断ってもらっても構わない」
いよいよ意味がわからなくなった。
しかしでも、箕六くんは私の彼氏だ。
「いいよ」
「…本当に?」
「困ってる人は助けないと」
お互いにだ。
すると突然手を掴まれた。
「ありがとう…。ありがとう」
「こちらこそ、ありがとう。お金を貸してくれるんだもん。こんなことでいいならしてあげるよ」
箕六くんはお金のことなどどうでもいいのか、全くもって気にしていなかった。
「それに、私の彼氏だし」
「…ありがとう」
少し湿っぽい空気が流れる。
本当に自分は幸せ者だな、と同時に思う。
「えっと、じゃあ、夜ご飯作るかな!」
私はそう言って立ち上がり、台所でエプロンをした。
白色のエプロンで、お母さんのお下がり。
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などと勝手に思い、勝手に恥ずかしくなってしまった。
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