彼女と出会ったその日から~なぜ俺は毎日写真や動画を撮られるのだろうか~

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二章

52話 姉と会う午後①

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「ここか」

俺は姉から送られてきたホテルに入った。
とても豪華な和風のホテルで、何泊もできるようなところではない。

「ほ、本当にお姉さんがこのホテルに泊まっているの?」
「そのはずだが」

桜さんには、休んでいてくれ、と言ったんだが
「挨拶がしたい」の一点張りだったので一緒にホテルを訪ねた。

「えっと、403、403…」
「こっちだよ?」
「あ、ああ」

角を曲がり、突き当りの部屋をノックする。

はーい

部屋の中から姉の声がする。
ガチャリと音がして扉が開く。

「大きくなったわね!箕六!」
「姉さん、久しぶり」
「で、横にいる可愛い子は?」
「えと、桜美智です」
「もしかしなくても、彼女?」
「えっと、はい…」

桜さんが顔を真っ赤にして固くなるのに対して、姉さんはニマリと笑い部屋に入れた。

「私は蔭西叶。まさか久しぶりに帰ってきたら箕六に彼女ができていたなんてねぇ。で、どこまでいったの?」
「どこまでって?」

横に座っている桜さんはさらに顔を赤くした。
この部屋に入ってからまだ一回も喋っていない。

「流石にハグぐらいはした?」
「「………」」

二人して顔を赤く染める。

「え、嘘でしょ。あっちではハグなんて挨拶よ」
「仕方ないでしょ…」
「ふーん、へー。そんな顔するようになったんだ」
「え?」

俺は思わず聞き返す。
そんな顔、とはどのような顔だろうか。
確かに姉が家から出る前よりは桜さんのおかげで、いろいろと自分に素直になれるようになった。
しかし、特別変わるところはあまりないだろう。
自分は姉の前では『自分』でいられた、と思っている。

「ほら、ちょっとお風呂入ってきなよ。美智ちゃんと積もる話もあるし」
「でも俺、このホテル泊ってないよ?」
「ここ四人部屋」

全く…。
俺は自然と笑顔になり、

「節約しろよ」

とだけ言って渡されたお風呂セットを持って部屋を出た。

姉と久しぶりに話せた。
やっぱり留学する前の姉と何も変わっていなかった。
自分の欲望のままに生きている。
そんな姉が羨ましかった。

「ここか」

いかにも、このお風呂はすごいです、みたいな入り口だった。
一生で泊ることなんてあまりなさそうなホテルだ。
一体どんなお風呂なのだろうか。
俺は期待に胸を膨らまして中に入る。

服を脱ぎ、いよいよ銭湯だ。
ガラガラと扉を開ける。

「すごっ」

開けた先に広がっていたのは、いろいろな種類の温泉だ。
一つ一つ噛みしめるように浸かっていたら二時間でも足りないぐらいの種類。
俺は先に体を洗い、まず一番手前にある一般的なお風呂に入る。

「ふぅ」

とても気持ちいい。
そういえば、姉の言っていた積もる話とは何だろう。
しかしあの姉のことだ。
桜さんを質問攻めにするとしか考えられない。
迷惑はかけるなよ、と注意するのを忘れてしまった。

嬉しいんだな、俺は

と思ってしまう。
でも、何だろうか。
姉と少し話して桜さんが俺の彼女ということを再認識させられた。
明るくて、優しくて、可愛くて、朗らかな子が、理想のような子が…。

「夢みたいだ」

そういえば、まだ俺も桜さんもお互いにお互いの苗字で呼んでいるな。
ハグするよりも前に名前で呼び合う方が先決ではないだろうか。

「み、み…」

あぁ、恥ずかしくて言えない…。

俺はそれからもお風呂の中で、名前で呼ぶ練習をしては恥ずかしくなりお風呂を出るを繰り返していた。
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