彼女と出会ったその日から~なぜ俺は毎日写真や動画を撮られるのだろうか~

文字の大きさ
71 / 74
三章

坂ノ宮の過去①

しおりを挟む
坂ノ宮さんはいつも笑顔だ。

自分がどんなに不幸に落とされようとも、笑顔は崩さない。

感情がないと思わせるぐらい笑顔ばかりで他の感情を表にださない。



「坂ノ宮さんは、笑顔を崩さないよね」

「さん、はいいよ。もう結構経つんだし」

「じゃあ、坂ノ宮。なんでいつもそんなに笑顔なんだ?」



俺は昼休みにお弁当を食べながらそう聞く。



「そうだねー、なんでだろう?」



いつもこうやってお茶を濁す。



「何かあるんだったら相談してくれよ。別に俺じゃなくても皆月や美智もいるし。坂ノ宮とどういう関係かよくわからないが御崎さんもいる」

「相談ね~。まぁ、その時がきたらするよ」



いつ切り込もうか。

「恋」を題材にした話をするときはいつも会話に入ってこないうえに、どこか暗い顔をする。

俺の思い込みかもしれないが、そうでないとしたら力になってあげないと思う。

人間らしく、そう思う。



「そういえば、今日の部活は何をするんだろう」

「多分だが文化祭に向けてだと思うぞ。美智のことだからみんなで撮りたいと思ってるだろうし」

「確かに。流石だね」

「何が」

「何でもー」



坂ノ宮はたまにわからないことを言う。

なんか見据えられているというか、大人びいているというか。



「桜さんと、上手くいって良かったね」

「ありがとう。坂ノ宮はなんか、そういうのないの?」



自然に、聞く。



「ない、かな。まぁ自分の場合はなくなったの方が正しいかもしれないけど」

「それはどういう?」

「そうだな、簡単に言えば恋愛が怖いんだよね。僕は」



恋愛が怖い。

それはトラウマのせいなのだろうか。

それとも家のせいなのだろうか。



「話してくれることはできるか?それで少しでも変わるのなら」

「別にいいけど、面白くないし。なんなら結構暗い話だよ」

「構わない」

「ならいいけど」



そう言い、坂ノ宮は重たそうに口を動かす。



「話すとしたら中学校から、かな。僕には好きな人がいたんだよ。小学校から仲の良かった子なんだけど」



トーンを低くして話始める。

感情のない声が俺の耳に入ってくる。



「でも好きになった人が、そういうのをあまり良しとしなかったんだよ。なんていうか、感情を人と共有しようとしない静かな人だった。そんな性格だったからか、女子の間では気持ちが悪いだの言われていじめられていたんだよ」

「……」



思わず黙ってしまう。

なんて言えばいいかわからない。



「そこから、女子に毒されて男子も一緒になっていじめるようになって…。受験期だからストレスのはけ口にされていたんだろうね。どんどん過激になっていったんだ。で、小学校の頃はあんなに仲良かったのにだんだんと距離が離れていったんだよ」



なんだか聞いたことのある話だ、と思った。

小学校の頃は仲が良く、今は距離が離れてしまった友達。

俺はその話を知っている。

聞いてことがある



「僕はそんな女子たちを見て勝手に女という生き物が怖くなったんだよ。別に関わるのは構わないけど、自分の話をすることはないし、できない」

「そう、なのか」

「それに助けてあげられなかった自分が惨めでね。もう、ぐちゃぐちゃだよ」



あはは、と感情のない乾いた笑い声をあげて坂ノ宮は窓の外を見る。

チャイムが鳴り、先生が入ってくる。



俺は御崎さんと話をするために、こっそりとメールを打った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

処理中です...