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第五章 獣人国編
第90話 獣人の友達
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ジュベル国ネリア村はヒュドラの宣教部隊によって、壊滅的打撃を受けていた。
多くの若者が殺され、働き手もなく、食料も無かった。
ルチアの情報が欲しくてネリア村に立ち寄った俺は、その窮状を見るに見かねて、キノクニから大量の食料などを運び込んだ。
村の広場で炊き出しを行い、村人に飯と酒をふるまった。
そして子供達の為にキノクニから用意してきたものがある。
ニクグシの屋台だ。
ニクグシだけを持ってきても良かったが、やはりそこは雰囲気も大事。
お祭りに並ぶ屋台は子供達にとって大きな娯楽だ。
俺が屋台を広げてニクグシを焼くと香ばしい匂いが広場中に広がる。
その匂いにつられて大人も子供も屋台を囲む。
「さぁ子供達が先だ。大人達は、後から自分で好きなだけ焼いて食べればいい。」
俺は焼けた肉串を幼い子供から順番に手渡した。
幼い子供がニクグシと兄弟であろう男の子の顔交互に見比べる。
「食べていいんだよ。皆の分があるからね。一人で全部食べていいよ。」
その言葉を聞いて幼い子は肉串にかぶりついた。
順次、子供達にニクグシを渡すと、街頭の灯りが順に灯るように子供達の顔に笑顔が灯った。
そしてそれまでは無口だった子供達がはしゃぎ始めた。
子供本来の姿に戻ってきているのだろう。
俺はその子供たちの姿を見て、ピンターとルチアの笑顔を思い出した。
「村長さん。」
「なんだでや?」
「ここへ俺の弟を連れてきてもいいか?見掛けは人族だが、中身は俺と同じ人狼だ。」
「もちろんええがに。あんたさんの弟さんなら大歓迎だによ。」
俺はドルムさんに留守番をお願いしてピンターを村の広場まで連れてきた。
「ピンター遊んで来いよ。」
ピンターは戸惑っているようだ。
「兄ちゃん、この人達の言葉は、わからないよ。」
俺はマジックバッグから、竹馬と竹とんぼをいくつか取り出してピンターに渡した。
「言葉なんていらないさ。ピンターは竹馬マスターだろ。アハハ」
「うん。」
ピンターが竹馬にまたがり周囲を走ると子供たちが群がって来た。
もう一対の竹馬を年長の子供に渡すと、ピンターが身振り手振りで乗り方を指導している。
年長の子が竹馬に乗れるようになるとピンターは自分の乗っていた竹馬を他の子供に譲り、今度は竹とんぼを飛ばして見せた。
小さな子が追いかける。
驚いたことに狂暴な顔をした村長宅の番犬ケルベロスもその竹とんぼを追いかけている。
ケルベロスが竹とんぼを咥えてピンターの所まで戻ると、ピンターはケルベロスの頭を撫でた。
ケルベロスは地面に転がり腹をさらけ出して服従の意を表す。
ピンターがその腹を撫でている。
「こりゃー驚いただによ。あの犬がワシ以外に体を触らせるなんて。初めて見たがや。」
村長が目をまん丸にしている。
「あの子は特別な子だ。俺の血を別けた兄弟だよ。」
ピンターはルチアが去ってから少し元気がなかったが、同世代の子供と遊ぶうちに明るさを少し取り戻した。
「ところで、村長、来春に撒く種も用意してあるが、人手をどうする?」
「ああ、それなら、この先にこの村と同じような目に遭った村がいくつかあるから、そこと合同して農作業にあたることにするだによ。人口も少なくなっているから合併の協議をするだでや。」
「それなら、もう少し食料と種苗を追加しておこうか?」
「本当だにか?それはとても助かるが、大丈夫かね?そこまでしてもらって。」
「大丈夫だ。困ってるときにはお互い様だよ。」
「見ず知らずのワシらになんで、そこまでしてくれるんかね?正直に言うと少し不安だがや。その親切が。いや、けっしてあんたさんを疑ったり、敵意をもってるわけではないだにが、やっぱりあんたさん。神様みたいな行いをなさるから・・・」
「神様か・・・俺は神様じゃないが、他の場所では神様の使徒、龍神の使徒とよばれたりはしている。
でも神の使いをしているつもりはない。俺の故郷はとても遠くだ。家族にも会うことは無い。だから、こちらで知り合った家族同然の仲間、その仲間や仲間の家族が困っていれば助けたい。ただそれだけなんだ。
ここはルチアの生まれ故郷。助ける理由はそれだけで十分だよ。」
村長は、平伏した。
「やっぱり、あんたさんは、神様だがに。ワシらにとっては神様そのものだがに。」
それに合わせて村長の周囲に居た村人も俺に平伏した。
村人たちが俺に手を合わせた時、俺の心のどこかに温かい何かが生まれたような気がした。
『お知らせします。ソウ様に神の種が宿りました。』
(ん?マザー?久しぶりだな。元気してたか?)
『はい。相変わらずです。久しぶりの出番で少し高揚しておりますが。』
(で、神の種って何よ?)
『文字通り、神様になるための種。神格化するための第一条件が揃ったということです。』
(第一条件って何よ?)
『生命力、体力、精神力、魔力が一定数値に達した後、人々の信仰心(ソウ様への敬愛心)が一定数値に達したという事です。』
(俺は神になるのか?)
『今はまだわかりません。これから先それぞれの数値が向上すれば、神の領域に達するかもしれません。』
(神になるとどうなる?)
『詳しくは判りませんが、他の神と対等の力を得ることになります。ソウ様独自の神の加護を発動する可能性もあります。』
(わかった。ありがとう。)
『はい。・・・たまには私を呼び出してくださいね。ではまた。』
今はまだおぼろげにしか感じていないが、この世界にはアウラ様以外の神様がいることは間違いない。
具体的に言えば『神族』神の眷属がいるのだから、神そのものもいるだろう。
今の俺達にとっての最大の脅威、『ヒュドラ』も実際に存在するかもしれない。
いや存在するだろう。
そう感じている。
いつかヒュドラと戦う羽目になるかもしれない。
その時にヒュドラと同じか、それ以上の力を持っていたいものだ。
村の復興を手伝った後、村長達を引き連れ、ネリア村近くのネリア村と同じように宣教部隊に襲撃された村々を周って復興の手助けをした。
ネリア村と同じように食料と種苗を提供し、怪我人を治療した。
8つの村を周るのに10日を費やした。
ルチアの事も気がかりだったが、この冬を餓死者なしに過ごさせるため、最低限の援助をしたかったのだ。
現状を見て、このままでは子供の餓死者が出かねないとわかり、いてもたってもいられなかたのだ。
各村では、ネリア村長が俺の事を神の使徒、いやいずれ神になるお方だ。
と大げさに説明したが、怪我人の治療や、短時間で大量の食料を出現させたことなどから、村人の多くはネリア村長の言葉を信じたようだ。
不思議なことに、俺を崇める人が増えるにつれて、俺の気力体力、精神力がUPしていくように感じた。
(もしかしたら、本当に神様になるかもしれないな。アハハ)
「それじゃ、村長、これから俺達はオラベルへ向かう。春まで生き延びろよ。」
「ソウ様、ありがとうございました。この御恩は村人一同、一生わすれることはないだがに。
ジュベル国は何を信仰してもかまわない掟。これからはソウ様を信仰して生きてゆくだがや。」
「信仰だなんて大げさだよ。」
「いんや。大げさではないだがに。村の滅亡を救ってくれた人を神とあがめるのはあたりまえだがに。村の主立った者と話たけんどもが、これから先はソウ様のご恩を忘れねぇよう、ソウ様の銅像を造りたいが、ええにか?」
俺はキャラバン途中に立ち寄ったレグラ村の事を思い出した。
龍神川を復活させたことで村に俺の銅像を建てると村長達が言い出したのだ。
今頃は俺の銅像がレグラ村に建立されているかもしれないと思うと少し恥ずかしい。
「いいけど、あんまり派手にしないでくれよ。」
ありがとうございます。立派な物を各村に立てさせますで。そりゃそうとソウ様。次の街ライベルまでの道案内はいらんかに?」
ナビがあるので道に迷うことはないが、現地人の案内があるのなら、それにこしたことはない。
「誰か道案内してくれるのなら、助かるには助かるが・・・」
「そんなら、この子を使ってくだされや。ライチという子だがに。人語も話せるし、頭もいい子だで、役に立つと思うがに。」
見た目は12歳くらいの猫人の男の子が進み出た。
「ライチ・セダルといいます。ライベルまで案内させてください。」
ピンターが竹馬を教えてあげていた猫人だ。
「それはありがたいが、帰りはどうする?」
「僕はいずれライベルで鍛冶の修行をする予定でした。ライベルには鍛冶屋を営む叔父がいるので、一緒に連れて行ってもらえれば僕も助かります。」
ピンターが俺の袖を引く。
ピンターの目は一緒に連れていこうと言っている。
道案内というよりはピンターの旅の連れ合いとしてライチを同伴させることにした。
「そうか、じゃあ、道案内を頼むよ。」
「はい。ありがとうございます。」
村長たちの見送りの中には獣人の子供達もまじっていた。
特にピンターと竹馬で一緒に遊んだ兄弟がピンターの手を握り、ケルベロスが足元にまとわりついて名残おしそうにしている。
「ケンちゃん。コウちゃん。またね。ハチもまたあそぼうね。」
「うん。またね。ピンター」
『バウワウ』
ピンターは片言ながら獣人語をしゃべっている。
ケルベロスには名前がなかったが、ピンターが『ハチ』と命名したようだ。
ピンターに「日本の犬で有名な名前は?」と尋ねられたので、俺が「ハチ公」と答えた結果だ。
村長達は俺達の姿が見えなくなるまで見送ってくれた。
村を出てすぐの丘に隠してあったウルフへ戻った。
「おかえり。ピンター楽しそうだな。」
ドルムさんが出迎えた。
「うん。クチル島を出てからルチア以外の友達ができたよ。」
「ほう。それは良かったな。」
ドルムさんも、俺も笑顔だ。
ピンターの元気が少し戻ったのが嬉しい。
ライチは、ウルフを見て目を丸くしている。
「じゃぁ出発しよう。」
「ああ、いこうぜ。」
「ルチアまってて。」
俺達はネリア村を後にして要塞都市ライベルへ向かった。
多くの若者が殺され、働き手もなく、食料も無かった。
ルチアの情報が欲しくてネリア村に立ち寄った俺は、その窮状を見るに見かねて、キノクニから大量の食料などを運び込んだ。
村の広場で炊き出しを行い、村人に飯と酒をふるまった。
そして子供達の為にキノクニから用意してきたものがある。
ニクグシの屋台だ。
ニクグシだけを持ってきても良かったが、やはりそこは雰囲気も大事。
お祭りに並ぶ屋台は子供達にとって大きな娯楽だ。
俺が屋台を広げてニクグシを焼くと香ばしい匂いが広場中に広がる。
その匂いにつられて大人も子供も屋台を囲む。
「さぁ子供達が先だ。大人達は、後から自分で好きなだけ焼いて食べればいい。」
俺は焼けた肉串を幼い子供から順番に手渡した。
幼い子供がニクグシと兄弟であろう男の子の顔交互に見比べる。
「食べていいんだよ。皆の分があるからね。一人で全部食べていいよ。」
その言葉を聞いて幼い子は肉串にかぶりついた。
順次、子供達にニクグシを渡すと、街頭の灯りが順に灯るように子供達の顔に笑顔が灯った。
そしてそれまでは無口だった子供達がはしゃぎ始めた。
子供本来の姿に戻ってきているのだろう。
俺はその子供たちの姿を見て、ピンターとルチアの笑顔を思い出した。
「村長さん。」
「なんだでや?」
「ここへ俺の弟を連れてきてもいいか?見掛けは人族だが、中身は俺と同じ人狼だ。」
「もちろんええがに。あんたさんの弟さんなら大歓迎だによ。」
俺はドルムさんに留守番をお願いしてピンターを村の広場まで連れてきた。
「ピンター遊んで来いよ。」
ピンターは戸惑っているようだ。
「兄ちゃん、この人達の言葉は、わからないよ。」
俺はマジックバッグから、竹馬と竹とんぼをいくつか取り出してピンターに渡した。
「言葉なんていらないさ。ピンターは竹馬マスターだろ。アハハ」
「うん。」
ピンターが竹馬にまたがり周囲を走ると子供たちが群がって来た。
もう一対の竹馬を年長の子供に渡すと、ピンターが身振り手振りで乗り方を指導している。
年長の子が竹馬に乗れるようになるとピンターは自分の乗っていた竹馬を他の子供に譲り、今度は竹とんぼを飛ばして見せた。
小さな子が追いかける。
驚いたことに狂暴な顔をした村長宅の番犬ケルベロスもその竹とんぼを追いかけている。
ケルベロスが竹とんぼを咥えてピンターの所まで戻ると、ピンターはケルベロスの頭を撫でた。
ケルベロスは地面に転がり腹をさらけ出して服従の意を表す。
ピンターがその腹を撫でている。
「こりゃー驚いただによ。あの犬がワシ以外に体を触らせるなんて。初めて見たがや。」
村長が目をまん丸にしている。
「あの子は特別な子だ。俺の血を別けた兄弟だよ。」
ピンターはルチアが去ってから少し元気がなかったが、同世代の子供と遊ぶうちに明るさを少し取り戻した。
「ところで、村長、来春に撒く種も用意してあるが、人手をどうする?」
「ああ、それなら、この先にこの村と同じような目に遭った村がいくつかあるから、そこと合同して農作業にあたることにするだによ。人口も少なくなっているから合併の協議をするだでや。」
「それなら、もう少し食料と種苗を追加しておこうか?」
「本当だにか?それはとても助かるが、大丈夫かね?そこまでしてもらって。」
「大丈夫だ。困ってるときにはお互い様だよ。」
「見ず知らずのワシらになんで、そこまでしてくれるんかね?正直に言うと少し不安だがや。その親切が。いや、けっしてあんたさんを疑ったり、敵意をもってるわけではないだにが、やっぱりあんたさん。神様みたいな行いをなさるから・・・」
「神様か・・・俺は神様じゃないが、他の場所では神様の使徒、龍神の使徒とよばれたりはしている。
でも神の使いをしているつもりはない。俺の故郷はとても遠くだ。家族にも会うことは無い。だから、こちらで知り合った家族同然の仲間、その仲間や仲間の家族が困っていれば助けたい。ただそれだけなんだ。
ここはルチアの生まれ故郷。助ける理由はそれだけで十分だよ。」
村長は、平伏した。
「やっぱり、あんたさんは、神様だがに。ワシらにとっては神様そのものだがに。」
それに合わせて村長の周囲に居た村人も俺に平伏した。
村人たちが俺に手を合わせた時、俺の心のどこかに温かい何かが生まれたような気がした。
『お知らせします。ソウ様に神の種が宿りました。』
(ん?マザー?久しぶりだな。元気してたか?)
『はい。相変わらずです。久しぶりの出番で少し高揚しておりますが。』
(で、神の種って何よ?)
『文字通り、神様になるための種。神格化するための第一条件が揃ったということです。』
(第一条件って何よ?)
『生命力、体力、精神力、魔力が一定数値に達した後、人々の信仰心(ソウ様への敬愛心)が一定数値に達したという事です。』
(俺は神になるのか?)
『今はまだわかりません。これから先それぞれの数値が向上すれば、神の領域に達するかもしれません。』
(神になるとどうなる?)
『詳しくは判りませんが、他の神と対等の力を得ることになります。ソウ様独自の神の加護を発動する可能性もあります。』
(わかった。ありがとう。)
『はい。・・・たまには私を呼び出してくださいね。ではまた。』
今はまだおぼろげにしか感じていないが、この世界にはアウラ様以外の神様がいることは間違いない。
具体的に言えば『神族』神の眷属がいるのだから、神そのものもいるだろう。
今の俺達にとっての最大の脅威、『ヒュドラ』も実際に存在するかもしれない。
いや存在するだろう。
そう感じている。
いつかヒュドラと戦う羽目になるかもしれない。
その時にヒュドラと同じか、それ以上の力を持っていたいものだ。
村の復興を手伝った後、村長達を引き連れ、ネリア村近くのネリア村と同じように宣教部隊に襲撃された村々を周って復興の手助けをした。
ネリア村と同じように食料と種苗を提供し、怪我人を治療した。
8つの村を周るのに10日を費やした。
ルチアの事も気がかりだったが、この冬を餓死者なしに過ごさせるため、最低限の援助をしたかったのだ。
現状を見て、このままでは子供の餓死者が出かねないとわかり、いてもたってもいられなかたのだ。
各村では、ネリア村長が俺の事を神の使徒、いやいずれ神になるお方だ。
と大げさに説明したが、怪我人の治療や、短時間で大量の食料を出現させたことなどから、村人の多くはネリア村長の言葉を信じたようだ。
不思議なことに、俺を崇める人が増えるにつれて、俺の気力体力、精神力がUPしていくように感じた。
(もしかしたら、本当に神様になるかもしれないな。アハハ)
「それじゃ、村長、これから俺達はオラベルへ向かう。春まで生き延びろよ。」
「ソウ様、ありがとうございました。この御恩は村人一同、一生わすれることはないだがに。
ジュベル国は何を信仰してもかまわない掟。これからはソウ様を信仰して生きてゆくだがや。」
「信仰だなんて大げさだよ。」
「いんや。大げさではないだがに。村の滅亡を救ってくれた人を神とあがめるのはあたりまえだがに。村の主立った者と話たけんどもが、これから先はソウ様のご恩を忘れねぇよう、ソウ様の銅像を造りたいが、ええにか?」
俺はキャラバン途中に立ち寄ったレグラ村の事を思い出した。
龍神川を復活させたことで村に俺の銅像を建てると村長達が言い出したのだ。
今頃は俺の銅像がレグラ村に建立されているかもしれないと思うと少し恥ずかしい。
「いいけど、あんまり派手にしないでくれよ。」
ありがとうございます。立派な物を各村に立てさせますで。そりゃそうとソウ様。次の街ライベルまでの道案内はいらんかに?」
ナビがあるので道に迷うことはないが、現地人の案内があるのなら、それにこしたことはない。
「誰か道案内してくれるのなら、助かるには助かるが・・・」
「そんなら、この子を使ってくだされや。ライチという子だがに。人語も話せるし、頭もいい子だで、役に立つと思うがに。」
見た目は12歳くらいの猫人の男の子が進み出た。
「ライチ・セダルといいます。ライベルまで案内させてください。」
ピンターが竹馬を教えてあげていた猫人だ。
「それはありがたいが、帰りはどうする?」
「僕はいずれライベルで鍛冶の修行をする予定でした。ライベルには鍛冶屋を営む叔父がいるので、一緒に連れて行ってもらえれば僕も助かります。」
ピンターが俺の袖を引く。
ピンターの目は一緒に連れていこうと言っている。
道案内というよりはピンターの旅の連れ合いとしてライチを同伴させることにした。
「そうか、じゃあ、道案内を頼むよ。」
「はい。ありがとうございます。」
村長たちの見送りの中には獣人の子供達もまじっていた。
特にピンターと竹馬で一緒に遊んだ兄弟がピンターの手を握り、ケルベロスが足元にまとわりついて名残おしそうにしている。
「ケンちゃん。コウちゃん。またね。ハチもまたあそぼうね。」
「うん。またね。ピンター」
『バウワウ』
ピンターは片言ながら獣人語をしゃべっている。
ケルベロスには名前がなかったが、ピンターが『ハチ』と命名したようだ。
ピンターに「日本の犬で有名な名前は?」と尋ねられたので、俺が「ハチ公」と答えた結果だ。
村長達は俺達の姿が見えなくなるまで見送ってくれた。
村を出てすぐの丘に隠してあったウルフへ戻った。
「おかえり。ピンター楽しそうだな。」
ドルムさんが出迎えた。
「うん。クチル島を出てからルチア以外の友達ができたよ。」
「ほう。それは良かったな。」
ドルムさんも、俺も笑顔だ。
ピンターの元気が少し戻ったのが嬉しい。
ライチは、ウルフを見て目を丸くしている。
「じゃぁ出発しよう。」
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