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7… 人魚の木
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人魚の木・・・
世界に一本しかないと言われている、不思議な木。高さは10メートルほどだが、木の幹の太さがそれ以上ある。
人魚の村に住む子供が13歳になった日、この木になる赤い実を食べれば男に、白い実を食べれば女になる。
実は赤いのも白いのも年中なっているのだが、なぜか”花”を見たものはいなかった。
その木の下でアスカは、ひどい絶望感を感じている。
男として生きていきたいのに、継母には強く女になることを勧められ、青い騎士には触れられたくないところを触れられた。
そしてそれを親友レオンに見られてしまった・・・。
「サイアクだな・・・ボク・・・」
レオンは情けないボクをどう思ったんだろう。もう一緒に旅に出ようなんて言ってくれないかもしれない。
アスカは今まで支えにしてきたものがガラガラと音を立てて崩れていく気がしていた。
もう、何もかもどうでもいいよ・・・。どうでもいい・・・。
次第に雨が激しくなり、雨粒が木の葉の間から落ちてアスカの頬を濡らす。
このまま雨が自分を流してくれて、本当の母のところに連れて行ってくれたらいいのにと思う。
ふと、目の前の枝を見ると、ピンク色の小さな花が
ポワッ
と咲いた。
「花が・・・」
アスカが見惚れていると、花は開いた後解けるように一瞬で消えてしまった。
「ああ・・・。これじゃあ、今まで誰も花を見たことないはずだね。こんなにすぐ消えてしまうなんて。
」
アスカは、その儚さに泣いてしまった。
(もう、ボクは・・・)
13歳まで後10日。でも待てなかった。
アスカは小さな赤い実を一つ枝からもぎる。赤い汁が指先に着いた。
(ボクは男になりたい・・・!どうしても・・・!)
夜、降りしきる雨の中、アスカは赤い実を食べた。
まだ13歳にはなっていなかったが、そんなのはどうでもいいと思った。
赤い実を飲み込んだ瞬間、体中がひどく熱くなってアスカはうずくまる。
「あつい、あつい・・・!」
内臓が燃えて喉まで炎が上がっているようだ。
「助けて・・・熱い・・・息が出来ない・・・レオン・・・母さん・・・・・」
アスカはそのまま、人魚の木の下に倒れてしまった。
翌朝アスカは、木の下の泥の中から双子の兄によって発見された。
噂は小さな村にすぐに広まったが、思春期の子供が一晩家出して熱を出しただけとされて、たいして大きく扱われることはなかった。
それよりも話題は船を襲った怪物と、中央から来た立派な騎士団でもちきりだったのだ。
とりわけ騎士団の隊長、青のジェイドは注目の的だった。
美しい立ち姿、凛々しい声、何より大陸の端にあるこんな片田舎の漁村では考えられないような洗練された立ち居振る舞い。
女たちだけではなく、男たちにとってもあこがれの的となっていた。
立ち直るのが不可能としか思えないこの小さな村を捨てて、騎士団と一緒に北の大陸の中央へ連れて行ってもらおうと考えるものも少なくない。
ジェイドは数名の部下と共に、滞在中は村長の村で寝泊まりすることになった。
レオンの父である村長は、屋敷の中でも一番良い部屋を用意して出来る限りもてなし、レオンも1日中手伝っていた。
そんな中、アスカが人魚の木の下で倒れていて、熱を出して寝てるという噂を聞き、レオンは無理に時間を作りアスカの家にやって来た。
アスカが倒れて2日目のこと。
継母は村長の息子レオンを愛想笑いで歓迎してくれた。レオンはお見舞いと言って多めの食料を手渡す。
継母はアスカを心配していると言っていたが、アスカは粗末な部屋の粗末なベッドに寝かされているだけだった。
かろうじて水差しがあるが、それも双子が用意したものだ。
「アスカ・・・」
熱い額を撫でながらレオンが呼ぶ。
アスカは目を覚まし。レオンを見た。
そのとたんに、美しい瞳から涙が溢れだす。
「どうしたんだ、アスカ!」
「レオン・・・。どうしよう・・・ボク、どうしよう・・・」
世界に一本しかないと言われている、不思議な木。高さは10メートルほどだが、木の幹の太さがそれ以上ある。
人魚の村に住む子供が13歳になった日、この木になる赤い実を食べれば男に、白い実を食べれば女になる。
実は赤いのも白いのも年中なっているのだが、なぜか”花”を見たものはいなかった。
その木の下でアスカは、ひどい絶望感を感じている。
男として生きていきたいのに、継母には強く女になることを勧められ、青い騎士には触れられたくないところを触れられた。
そしてそれを親友レオンに見られてしまった・・・。
「サイアクだな・・・ボク・・・」
レオンは情けないボクをどう思ったんだろう。もう一緒に旅に出ようなんて言ってくれないかもしれない。
アスカは今まで支えにしてきたものがガラガラと音を立てて崩れていく気がしていた。
もう、何もかもどうでもいいよ・・・。どうでもいい・・・。
次第に雨が激しくなり、雨粒が木の葉の間から落ちてアスカの頬を濡らす。
このまま雨が自分を流してくれて、本当の母のところに連れて行ってくれたらいいのにと思う。
ふと、目の前の枝を見ると、ピンク色の小さな花が
ポワッ
と咲いた。
「花が・・・」
アスカが見惚れていると、花は開いた後解けるように一瞬で消えてしまった。
「ああ・・・。これじゃあ、今まで誰も花を見たことないはずだね。こんなにすぐ消えてしまうなんて。
」
アスカは、その儚さに泣いてしまった。
(もう、ボクは・・・)
13歳まで後10日。でも待てなかった。
アスカは小さな赤い実を一つ枝からもぎる。赤い汁が指先に着いた。
(ボクは男になりたい・・・!どうしても・・・!)
夜、降りしきる雨の中、アスカは赤い実を食べた。
まだ13歳にはなっていなかったが、そんなのはどうでもいいと思った。
赤い実を飲み込んだ瞬間、体中がひどく熱くなってアスカはうずくまる。
「あつい、あつい・・・!」
内臓が燃えて喉まで炎が上がっているようだ。
「助けて・・・熱い・・・息が出来ない・・・レオン・・・母さん・・・・・」
アスカはそのまま、人魚の木の下に倒れてしまった。
翌朝アスカは、木の下の泥の中から双子の兄によって発見された。
噂は小さな村にすぐに広まったが、思春期の子供が一晩家出して熱を出しただけとされて、たいして大きく扱われることはなかった。
それよりも話題は船を襲った怪物と、中央から来た立派な騎士団でもちきりだったのだ。
とりわけ騎士団の隊長、青のジェイドは注目の的だった。
美しい立ち姿、凛々しい声、何より大陸の端にあるこんな片田舎の漁村では考えられないような洗練された立ち居振る舞い。
女たちだけではなく、男たちにとってもあこがれの的となっていた。
立ち直るのが不可能としか思えないこの小さな村を捨てて、騎士団と一緒に北の大陸の中央へ連れて行ってもらおうと考えるものも少なくない。
ジェイドは数名の部下と共に、滞在中は村長の村で寝泊まりすることになった。
レオンの父である村長は、屋敷の中でも一番良い部屋を用意して出来る限りもてなし、レオンも1日中手伝っていた。
そんな中、アスカが人魚の木の下で倒れていて、熱を出して寝てるという噂を聞き、レオンは無理に時間を作りアスカの家にやって来た。
アスカが倒れて2日目のこと。
継母は村長の息子レオンを愛想笑いで歓迎してくれた。レオンはお見舞いと言って多めの食料を手渡す。
継母はアスカを心配していると言っていたが、アスカは粗末な部屋の粗末なベッドに寝かされているだけだった。
かろうじて水差しがあるが、それも双子が用意したものだ。
「アスカ・・・」
熱い額を撫でながらレオンが呼ぶ。
アスカは目を覚まし。レオンを見た。
そのとたんに、美しい瞳から涙が溢れだす。
「どうしたんだ、アスカ!」
「レオン・・・。どうしよう・・・ボク、どうしよう・・・」
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