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第一章 原作前
◆第20.5話 クリーク家の面々(次男ツヴァイ視点)
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モンスターハウスを出る。もちろんミラと芝居をしたままでだ。
「ふむ。言っておった通りおらんようだな」
「いえ。次の角を曲がったところの直線、その少し先に立ち止まっております。私たちがそこの角まで来るのを待っているようですね」
ふむ。そこで見極めようというのか。ならば存分に見てもらうとしよう。
「行くか」
「はい。お供いたします」
寄り添い歩く姿は見るものに苦戦したあとを想像させるであろうな。だが本当に私をつけ回し観察するよう命じたのは誰であろうか……。
「そうだミラよ。お主のストレージを私に教えてもらえぬか? 見ていて便利だと思ったのでな」
「貴族の方々は、荷物などお付きの者に持たせますし、生活魔法はお付きの者を雇えない民の魔法、そんなものは必要ないと聞きます」
「そうであるな。と、私も昨日までは思っていたのであろうな……」
実際のところ、初めはミラが『メイドのたしなみでございます』と言い、教えてくれなかったが、しつこく聞けば『生活魔法でございます』と、やっと教えてくれた。
それまでは本当にメイドの特殊スキルであろうと思っていたほどだ。
だが聞けば聞くほど生活魔法は素晴らしい。仮に戦争が起こったとしよう。さすれば日々屋敷に帰ることもままならない。
ならば野営が続き、湯浴みなどできようはずもなく、着の身着のまま数日……いや、数週間、数ヶ月と続くのだ。
そこに生活魔法のクリーニングがあるだけで劇的に変わろうものだ。ウォーターも必需品である水を確保でき、ファイアで火をおこし、ライトで夜の闇を照らす。
そこへストレージである。魔力の多さで入れておける容量が変わると言うが、些細なことだ。
「ふむ。何度考え直そうがストレージは良い。クリーニング、ファイア、ウォーター、ライト。全てが良い。貴族と言うだけで覚えぬなど、怠慢も甚だしい」
「素晴らしいお考えですツヴァイ様。そうであれば今夜より生活魔法をお教えにお部屋へ参りますね」
そう言うミラの笑みを見て、なぜか腰が引けた……生活魔法を習うだけである。……である。
「ツヴァイ様、角を出ます。お喋りはなるべく口を動かさぬように」
「う、うむ。先ほど言っておったな。唇の動きで何を言ったか分かる術があると」
「その通りでございます。では――」
「まいろうか」
口を閉ざし、角から一歩踏み出し、直線の先にこちらに向かって歩いてくる二人組が見て取れた。
『わたくしたちが角を出た瞬間に動き出しました。それにあの目の動き、間違いなく目的はツヴァイ様でしょう。見覚えはございますか?』
『ふむ。見たことのないものたちであるな。見たところ短剣とナイフ。近接が得意と見えるが』
『はい。ですが、短剣を持つものは魔法を使うようです。あの短剣は杖の代わりのようです。それと、気を付けなければならない手練れはナイフを持つ男にございます』
『ほう。で、あるならば魔法は私が受け持ち、ナイフの男を牽制すればよかろう』
『その必要はございません。もうあのものたちは詰んでいますので』
ぬ? どう言うことかと聞こうとした時だ。前から来る男たちが話しかけてきおった。
「こっぴどくヤられたようだなぁ~貴族様よお~」
ナイフの男が言う。なんとも間延びした話し方よ……。今少し滑舌よく話せないものか?
「こりゃ手間が省けていいじゃないっすか」
「手間が省けてとな? いったいなんの話をしておるのだ? 用件があるならさっさと言わんか」
「はぁ~、昔は剣と魔法が優秀で学園一と言われたお方がぁ~、たかだかぁ~、ゴブリンのモンスターハウスでぇ~、これじゃあなぁ~」
うむ。確かに学園では敵なしであったが、この者たちが知るほどであったか。まあそれは良い。良いが……話し方を注意をしても良いものか……。
「そっすね。こりゃアニキに出てもらわなくても俺だけでこの豚を殺せてたっすよ」
ほほう。やはり目的は私の命であったか。ならば単刀直入に聞くとしようか、教えてはくれまいがな。
「して、誰の差し金であるか?」
「本来ならぁ~、依頼人のことは喋らないのが鉄則だがよぉ~、特別に教えてやるぜえ~」
ぬ? 教えてくれるのであるか? なんとも親切な刺客であるが……それで良いのか?
「あ、俺が言ってもいっすか?」
「仕方ねえなぁ~」
「あざっす。おい! 豚貴族! その腹でよーく聞きやがれ! お前を殺せと命じたのはな!」
いくら太っていようが腹では聞けぬぞ。聞くのは耳である。
「てめえのアニキだ! 確かアインって言ってたな! しっかしよう、弟の暗殺をさせるたぁ貴族は怖いねぇ」
「ほほう。兄上であったか。それはまことであろうな?」
「ああ~、あんたと同じのぶよぶよ太った男だったぜぇ~。じゃあ~、疑問も答えてやったところでぇ~、死――」
「終わりました」
私に向けて短剣とナイフを向けようとした男たちの首は、胴体と離ればなれとなり、その場に崩れ落ちた。
「……う、うむ。い、いったいどうやったのだ?」
「……メイドのたしなみでございます」
……誓おう。ミラには生涯逆らわないと……。
「ふむ。言っておった通りおらんようだな」
「いえ。次の角を曲がったところの直線、その少し先に立ち止まっております。私たちがそこの角まで来るのを待っているようですね」
ふむ。そこで見極めようというのか。ならば存分に見てもらうとしよう。
「行くか」
「はい。お供いたします」
寄り添い歩く姿は見るものに苦戦したあとを想像させるであろうな。だが本当に私をつけ回し観察するよう命じたのは誰であろうか……。
「そうだミラよ。お主のストレージを私に教えてもらえぬか? 見ていて便利だと思ったのでな」
「貴族の方々は、荷物などお付きの者に持たせますし、生活魔法はお付きの者を雇えない民の魔法、そんなものは必要ないと聞きます」
「そうであるな。と、私も昨日までは思っていたのであろうな……」
実際のところ、初めはミラが『メイドのたしなみでございます』と言い、教えてくれなかったが、しつこく聞けば『生活魔法でございます』と、やっと教えてくれた。
それまでは本当にメイドの特殊スキルであろうと思っていたほどだ。
だが聞けば聞くほど生活魔法は素晴らしい。仮に戦争が起こったとしよう。さすれば日々屋敷に帰ることもままならない。
ならば野営が続き、湯浴みなどできようはずもなく、着の身着のまま数日……いや、数週間、数ヶ月と続くのだ。
そこに生活魔法のクリーニングがあるだけで劇的に変わろうものだ。ウォーターも必需品である水を確保でき、ファイアで火をおこし、ライトで夜の闇を照らす。
そこへストレージである。魔力の多さで入れておける容量が変わると言うが、些細なことだ。
「ふむ。何度考え直そうがストレージは良い。クリーニング、ファイア、ウォーター、ライト。全てが良い。貴族と言うだけで覚えぬなど、怠慢も甚だしい」
「素晴らしいお考えですツヴァイ様。そうであれば今夜より生活魔法をお教えにお部屋へ参りますね」
そう言うミラの笑みを見て、なぜか腰が引けた……生活魔法を習うだけである。……である。
「ツヴァイ様、角を出ます。お喋りはなるべく口を動かさぬように」
「う、うむ。先ほど言っておったな。唇の動きで何を言ったか分かる術があると」
「その通りでございます。では――」
「まいろうか」
口を閉ざし、角から一歩踏み出し、直線の先にこちらに向かって歩いてくる二人組が見て取れた。
『わたくしたちが角を出た瞬間に動き出しました。それにあの目の動き、間違いなく目的はツヴァイ様でしょう。見覚えはございますか?』
『ふむ。見たことのないものたちであるな。見たところ短剣とナイフ。近接が得意と見えるが』
『はい。ですが、短剣を持つものは魔法を使うようです。あの短剣は杖の代わりのようです。それと、気を付けなければならない手練れはナイフを持つ男にございます』
『ほう。で、あるならば魔法は私が受け持ち、ナイフの男を牽制すればよかろう』
『その必要はございません。もうあのものたちは詰んでいますので』
ぬ? どう言うことかと聞こうとした時だ。前から来る男たちが話しかけてきおった。
「こっぴどくヤられたようだなぁ~貴族様よお~」
ナイフの男が言う。なんとも間延びした話し方よ……。今少し滑舌よく話せないものか?
「こりゃ手間が省けていいじゃないっすか」
「手間が省けてとな? いったいなんの話をしておるのだ? 用件があるならさっさと言わんか」
「はぁ~、昔は剣と魔法が優秀で学園一と言われたお方がぁ~、たかだかぁ~、ゴブリンのモンスターハウスでぇ~、これじゃあなぁ~」
うむ。確かに学園では敵なしであったが、この者たちが知るほどであったか。まあそれは良い。良いが……話し方を注意をしても良いものか……。
「そっすね。こりゃアニキに出てもらわなくても俺だけでこの豚を殺せてたっすよ」
ほほう。やはり目的は私の命であったか。ならば単刀直入に聞くとしようか、教えてはくれまいがな。
「して、誰の差し金であるか?」
「本来ならぁ~、依頼人のことは喋らないのが鉄則だがよぉ~、特別に教えてやるぜえ~」
ぬ? 教えてくれるのであるか? なんとも親切な刺客であるが……それで良いのか?
「あ、俺が言ってもいっすか?」
「仕方ねえなぁ~」
「あざっす。おい! 豚貴族! その腹でよーく聞きやがれ! お前を殺せと命じたのはな!」
いくら太っていようが腹では聞けぬぞ。聞くのは耳である。
「てめえのアニキだ! 確かアインって言ってたな! しっかしよう、弟の暗殺をさせるたぁ貴族は怖いねぇ」
「ほほう。兄上であったか。それはまことであろうな?」
「ああ~、あんたと同じのぶよぶよ太った男だったぜぇ~。じゃあ~、疑問も答えてやったところでぇ~、死――」
「終わりました」
私に向けて短剣とナイフを向けようとした男たちの首は、胴体と離ればなれとなり、その場に崩れ落ちた。
「……う、うむ。い、いったいどうやったのだ?」
「……メイドのたしなみでございます」
……誓おう。ミラには生涯逆らわないと……。
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