【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@

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第一章 原作前

第33話 大通りの大捕物

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 派手な到着をした馬車から飛び出すと、積み込み作業をしていた人たちから注目を浴びる。

 う、こんな注目の仕方はやだな……。気持ちは分かるけどね。

 突然大きな音を立てて馬車が止まり、そこから子供二人と貴族服に身を包んだツヴァイ兄さんとメイドが降りてくるんだよ?

 誰でも見ちゃうよな。

 そして間も無く騎士たちがどこからともなく現れ商会を包囲して、大通りのど真ん中が騒然となった。

 そうこうしているとき、商会の中から一人の男が出てきた。

 荷物を積み込んでいる者たちとは違い、着ている服が高級そうだ。もしかして……鑑定。

「ガイツ・ボッタクリーノであるな」

 鑑定する間も無くツヴァイ兄さんが正体をあかしてしまった。まあいいけど、この人で間違いなさそうだ。

 洗脳もされてないし、精神支配もされていない。

「これはこれはクリーク辺境伯家のツヴァイ様。ようこそボッタクリーノ商会へ。少々騒がしくしておりますが、本日は何をお求めですかな?」

 さすが商人ってところか、ツヴァイ兄さんを見て焦った顔をしたけどそれは一瞬だけだった。

 すぐにニコニコな笑顔になって、揉み手をしながら話しかけてきた。

 この人、役者もできるかも、ここまで一瞬で表情が作れるの羨ましい……俺は凄く集中して役が入らないと無理だったもんな。

「ドライ。どうであるか?」

 雑踏の中で俺たちだけに聞こえるよう小声で聞いてくる。

 そうだった。鑑定したのにどうでもいいことに意識が持っていかれてた。反省。

「洗脳も精神支配もありません。見たところ持っている魔道具もなさそうです」

「うむ。ミラ、暗殺者の気配はどうであるか?」

「ガイツの斜め後ろ、大樽を担いだ、顔に傷がある男だけ気配がありません。お気をつけを」

 傷の男? そんなやつ……あ、いた。あれだな。言われるまで全然気づかなかった。

 あんな大きな樽を持っている人に気がつかないなんて、特殊なスキルを持っているのかもしれないな。

 鑑定だ。……やっぱり名前が消されてる。イン・ズィードラーが消される前の名前だな。

 スキルは、隠密かな? そういえばゲヒルンを殺したベオ・バッタードも同じ隠密スキルを持ってた。

 でもインって人の方は、人が余裕で入れるほどの大きさがある樽なのに、あんなに簡単に持ってるなんて……力はありそうだ。

 ベオ・バッタードは俺と戦いながらリズを狙うって陰湿な戦い方だったけど、この人はパワーで押し切るタイプかもしれない……。

「ツヴァイ様、いかがなさいましたか?」

 俺たちがこそこそしているからしびれを切らせて話しかけてくるガイツ。

 その額にピキリと筋が入り、ピクピクとほっぺたがひくついている。

 突然訪ねてきて挨拶したらあとは無視。そりゃそうなるよね。

「うむ。身に覚えがあると思うが、ガイツ・ボッタクリーノよ、貴様を捕らえに来た。大人しくついてくるなら乱暴にはせんぞ」

「な、なんのことでしょうか? わたくしめにはなんのことだかさっぱり」

「分からんと? では教えてやろう。我が家におったゲヒルンのことは知っているだろう、そのものがガイツ、キサマの精神支配下になっておった」

「……そ、そのようなことが? わ、わたくしには身に覚えのないことで……」

「精神支配の魔道具は支配者の魔力が登録されておるのだ。鑑定をすれば一目瞭然である。何か申し開きはあるか?」

「鑑定を持っている者がクリーク家にいるとは聞いてませんよ! なにをやっていたのですかゲヒルンは!」

「ゲヒルンならば死んだ。ガイツ、キサマもそうなりたくはなかろう? だから大人しく捕まるがよい」

「ゲヒルンが死んだと? それで納得できました。今朝からおかしなことが立て続けに起こりましたので」

「で、あろうな」

「ツヴァイ様、あの運ばれている大樽から血の臭いがします。恐らくですが……」

「ふむ。殺して詰めた。としか考えられぬな。なんてことを……」

 嘘だろ! そんなこと許されることじゃない! いや、鑑定すればいいんだ、鑑定! くそ!

「チッ。そちらのメイド様はお鼻がよろしいようで。いかにもこの大樽の中は肉、でございますが、オークの肉でございますので――」

「違う! そこの顔に傷がある人が担いでいる大樽の中身は人です! 鑑定ではっきり名前までわかりましたよ!」

「くっ、その子供が鑑定持ちでしたか、おい、わかっていますね」

「チッ、わかってるさ、てめえを連れて逃げればいいんだろ? 報酬はいつもの倍な」

 ドンと大樽を地面に下ろしてコキコキと首を鳴らし、肩を回すイン・ズィードラー。

いたし方ありませんね。良いでしょう」

 そしてこの状況なのに笑うガイツ・ボッタクリーノ。イン・ズィードラーの強さをそれだけ信じているってことだ。

 イン・ズィードラーのレベルは45。ベオ・バッタード32だったのにさらに上……めちゃくちゃ強いじゃないか。

「なんてことを……ガイツ、もう言い逃れはできんぞ! キサマを捕らえる! ガイツと傷がある男は私たちで押さえる! 抵抗するものは切ってよい! かかれ!」

 それにガイツも商人の癖にレベルは29と、俺と比べたら倍以上、絶望しかないほど強いことになる。

 だけど――逃がさない!

「リズは援護をお願い! イスもリズを守ってね!」

「はいですわ! わたくしの魔法が火を吹きますわよ!」

『ほ~い。そっちは手伝わなくても大丈夫? ま、危なくなったらでいっか。がんばれー、リズは守っとくよー』

 はは、どんな状況でも気の抜けるようなイスの応援で肩の力が抜けた。やれる――
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