48 / 139
第一章 原作前
第44話 孤児院
しおりを挟む
使用人用の屋敷で、熱を出し寝ていた人を鑑定で調べると、使用人さんの熱もやはり呪いだった。
速攻で浄化ポーションを飲んでもらい、状態異常を消せたんだけど、これで熱病の呪いが流行り始めている可能性が現実味をおびてきた。
クリーク辺境伯家の領地すべてをまずは調べてもらわないと駄目だ。
足掛かりとしてここ、クリークの街からだけど、すぐに治していることは気付かれるだろうな。
「ふむ。呪い、であるか……何かを触媒として呪いをかけてるのであろうな」
「そうでございますね。現状エリザベス様のお母様と、クリーク家の使用人が被害者ではありますが、あまりにも接点がありませんので推測もできません」
「わかることはクリーク辺境伯領だけでなく、イルミンスール伯爵妃も、熱病の呪いが発現している事実だけですもんね」
「あ、あの、私の熱が呪い? どうして私のようなものが……」
顔色が良くなった使用人さんは、ベッドからおりて、今度は心配そうな表情に変わった。
ただの熱だと思っていたのに、実は呪いでしたと言われたらそりゃ心配にもなるよな……。
「そうだ、熱が出たのはいつから?」
「三日前でしょうか、休んだ日から調子悪くなりました。休んだ日の次の日は頑張ったのですが、あまりにも熱が上がってきたので」
「三日前の休日、ですか……」
「はい。孤児院の炊き出しの手伝いに行ったので、その疲れで熱が出たものだと」
「孤児院?」
「はい。私は孤児院の出なので、休みの日はよく手伝いに行ってます」
「あ、そういえばお母様も孤児院に行った次の日から、起きあがれないほどの熱が出たのでしたわ」
「そうだったんだ……でもこれで繋がりますね」
「うむ。共通点が孤児院であるか。ならばそこをまず調べるのが良かろうな、孤児院はほぼすべての街や村にあったはずだ」
「ええ。それに孤児院は……」
「で、あるな。よし。お前は今日一日様子見で休むが良かろう」
言葉を濁したってことは、孤児院は教会が関わってるってことか。
「は、はい。治療していただきありがとうございました」
部屋を出て話をするために俺の部屋に移動する。
そして部屋に入る前、地下へ続く階段のところから、何か気付いているみたいに首をかしげていた。
階段も魔法陣で快適仕様にしてるからね、ホコリ一つ落ちていないし、カビが生えていたのも無くなりキレイなもんだ。
「階段からおかしいとは思っていたが……なんだこの部屋は……地下だというのにジメジメした感じがないのである」
「これは……魔法陣。ドライ様、もしかして魔法陣が書けるのでしょうか?」
「その通りですわ。ドライは優秀ですもの」
「はい、もし必要な魔法陣があれば書きますよ、それと魔法陣の本とかあれば嬉しいんですけど」
「魔法陣であるか……ドライ、後で色々と頼むことになるであろうから、魔法陣の書物も手配しておこう」
「わかりました。で、孤児院はやっぱり教会が絡んでるんでしょ?」
「うむ。先ほどの使用人が行ったという孤児院は教会が運営しておる」
「リズのお母さんが行った孤児院はどうなの?」
「教会ですわね。お母様が行ったところは、教会の敷地内にある孤児院でしたもの」
「なら、僕たちでその孤児院を見てきますよ。怪しそうな物を片っ端から鑑定すれば、何で呪いがかかったのかわかるかもしれませんしね」
「ですわね、私たちの今の格好でしたら冒険者にしか見えませんもの」
「ふむ。危険ではあるが、ドライの鑑定が頼みの綱。すまぬが頼む」
「ドライ様、孤児院に行くのでしたら、寄付金を持っていくと怪しまれません。ですので――銅貨が百枚、銀貨一枚分もあればいいでしょう」
ミラさんが小さな机の上に銅貨をストレージから出してくれた。
「冒険者でしたらこの程度の寄付はできると思いますので」
「ありがとう。このお金は今度返すから今は借りておくね。よし。ならさっそく行こうかリズ」
「行きましょう。うふふふ、教会の悪事を潰してやりますわ!」
教えてもらった孤児院に到着したんだけど……。
「お兄ちゃんたち冒険者なんだ! すげー!」
「ねえねえ、僕も冒険者になれるかな?」
「その剣本物だろ? スパッて魔物も切れちゃうんだよね?」
「ま、魔法は使えるんですか? わたし、魔法使いになりたいんです」
「俺も魔法バンバン魔物をやっつけたい!」
「お願い! 俺たちに剣と魔法教えてよ!」
敷地に入った途端に子供たちに囲まれた。十歳の俺たちより小さな子たちばかりだ。
孤児院は十歳までに文字と計算を教えてくれるらしく、冒険者になった時に役立つそうだ。
そうだよな、依頼書が読め、報酬額がわかれば請けやすいしな。
「わ、わかったから、教えてもいいけど、先に寄付金を渡しに行かせてね」
「おお! みんな聞いたか! 先生のところに案内するぞ!」
「おお!」「やったー!」「こっちこっち!」
と、大騒ぎだ。将来、冒険者になってダンジョンや魔の森での討伐や採取をしてくれるようになればクリーク辺境伯領の発展にも繋がる。
俺たちも教えられるほどの実力はないけど、少しでも怪我や命を失ったりしないよう簡単なことくらいは教えられると思うしな。
それに、チラっと鑑定したけど、色々とスキルを持っている子もいたし、期待大だ。
子供たちに案内され、孤児院に入ると真っ白なローブを着た男性がいた。
「先生! この人たちが寄付したいんだってさ」
速攻で浄化ポーションを飲んでもらい、状態異常を消せたんだけど、これで熱病の呪いが流行り始めている可能性が現実味をおびてきた。
クリーク辺境伯家の領地すべてをまずは調べてもらわないと駄目だ。
足掛かりとしてここ、クリークの街からだけど、すぐに治していることは気付かれるだろうな。
「ふむ。呪い、であるか……何かを触媒として呪いをかけてるのであろうな」
「そうでございますね。現状エリザベス様のお母様と、クリーク家の使用人が被害者ではありますが、あまりにも接点がありませんので推測もできません」
「わかることはクリーク辺境伯領だけでなく、イルミンスール伯爵妃も、熱病の呪いが発現している事実だけですもんね」
「あ、あの、私の熱が呪い? どうして私のようなものが……」
顔色が良くなった使用人さんは、ベッドからおりて、今度は心配そうな表情に変わった。
ただの熱だと思っていたのに、実は呪いでしたと言われたらそりゃ心配にもなるよな……。
「そうだ、熱が出たのはいつから?」
「三日前でしょうか、休んだ日から調子悪くなりました。休んだ日の次の日は頑張ったのですが、あまりにも熱が上がってきたので」
「三日前の休日、ですか……」
「はい。孤児院の炊き出しの手伝いに行ったので、その疲れで熱が出たものだと」
「孤児院?」
「はい。私は孤児院の出なので、休みの日はよく手伝いに行ってます」
「あ、そういえばお母様も孤児院に行った次の日から、起きあがれないほどの熱が出たのでしたわ」
「そうだったんだ……でもこれで繋がりますね」
「うむ。共通点が孤児院であるか。ならばそこをまず調べるのが良かろうな、孤児院はほぼすべての街や村にあったはずだ」
「ええ。それに孤児院は……」
「で、あるな。よし。お前は今日一日様子見で休むが良かろう」
言葉を濁したってことは、孤児院は教会が関わってるってことか。
「は、はい。治療していただきありがとうございました」
部屋を出て話をするために俺の部屋に移動する。
そして部屋に入る前、地下へ続く階段のところから、何か気付いているみたいに首をかしげていた。
階段も魔法陣で快適仕様にしてるからね、ホコリ一つ落ちていないし、カビが生えていたのも無くなりキレイなもんだ。
「階段からおかしいとは思っていたが……なんだこの部屋は……地下だというのにジメジメした感じがないのである」
「これは……魔法陣。ドライ様、もしかして魔法陣が書けるのでしょうか?」
「その通りですわ。ドライは優秀ですもの」
「はい、もし必要な魔法陣があれば書きますよ、それと魔法陣の本とかあれば嬉しいんですけど」
「魔法陣であるか……ドライ、後で色々と頼むことになるであろうから、魔法陣の書物も手配しておこう」
「わかりました。で、孤児院はやっぱり教会が絡んでるんでしょ?」
「うむ。先ほどの使用人が行ったという孤児院は教会が運営しておる」
「リズのお母さんが行った孤児院はどうなの?」
「教会ですわね。お母様が行ったところは、教会の敷地内にある孤児院でしたもの」
「なら、僕たちでその孤児院を見てきますよ。怪しそうな物を片っ端から鑑定すれば、何で呪いがかかったのかわかるかもしれませんしね」
「ですわね、私たちの今の格好でしたら冒険者にしか見えませんもの」
「ふむ。危険ではあるが、ドライの鑑定が頼みの綱。すまぬが頼む」
「ドライ様、孤児院に行くのでしたら、寄付金を持っていくと怪しまれません。ですので――銅貨が百枚、銀貨一枚分もあればいいでしょう」
ミラさんが小さな机の上に銅貨をストレージから出してくれた。
「冒険者でしたらこの程度の寄付はできると思いますので」
「ありがとう。このお金は今度返すから今は借りておくね。よし。ならさっそく行こうかリズ」
「行きましょう。うふふふ、教会の悪事を潰してやりますわ!」
教えてもらった孤児院に到着したんだけど……。
「お兄ちゃんたち冒険者なんだ! すげー!」
「ねえねえ、僕も冒険者になれるかな?」
「その剣本物だろ? スパッて魔物も切れちゃうんだよね?」
「ま、魔法は使えるんですか? わたし、魔法使いになりたいんです」
「俺も魔法バンバン魔物をやっつけたい!」
「お願い! 俺たちに剣と魔法教えてよ!」
敷地に入った途端に子供たちに囲まれた。十歳の俺たちより小さな子たちばかりだ。
孤児院は十歳までに文字と計算を教えてくれるらしく、冒険者になった時に役立つそうだ。
そうだよな、依頼書が読め、報酬額がわかれば請けやすいしな。
「わ、わかったから、教えてもいいけど、先に寄付金を渡しに行かせてね」
「おお! みんな聞いたか! 先生のところに案内するぞ!」
「おお!」「やったー!」「こっちこっち!」
と、大騒ぎだ。将来、冒険者になってダンジョンや魔の森での討伐や採取をしてくれるようになればクリーク辺境伯領の発展にも繋がる。
俺たちも教えられるほどの実力はないけど、少しでも怪我や命を失ったりしないよう簡単なことくらいは教えられると思うしな。
それに、チラっと鑑定したけど、色々とスキルを持っている子もいたし、期待大だ。
子供たちに案内され、孤児院に入ると真っ白なローブを着た男性がいた。
「先生! この人たちが寄付したいんだってさ」
118
あなたにおすすめの小説
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
転生したみたいなので異世界生活を楽しみます
さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。
誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。
感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
社畜をクビになった俺のスキルは「根回し」だけど、異世界では世界最強の裏方でした
cotonoha garden
ファンタジー
派手な攻撃魔法も、伝説級のチートもない。
社畜生活で身につけたのは、会議前の根回しと、空気を読みながら人と人をつなぐ段取り力――そして異世界で手に入れたスキルもまた、「根回し」だけだった。
『社畜の俺がもらったスキルは「根回し」だけど、なぜか世界最強らしい』は、
・追放・異世界転移ものが好き
・けれどただのざまぁで終わる話では物足りない
・裏方の仕事や調整役のしんどさに心当たりがある
そんな読者に向けた、“裏方最強”系ファンタジーです。
主人公は最初から最強ではありません。
「自分なんて代わりがきく」と思い込み、表舞台に立つ勇気を持てないままクビになった男が、異世界で「人と人をつなぐこと」の価値に向き合い、自分の仕事と存在を肯定していく物語です。
ギルド、ステータス、各国の思惑――テンプレ的な異世界要素の裏側で、
一言の声かけや、さりげない段取りが誰かの人生と戦争の行方を変えていく。
最後には、主人公が「もう誰かの歯車ではなく、自分で選んだ居場所」に立つ姿を、少しじんわりしながら見届けられるはずです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる