【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@

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第二章 原作開始

第82話 追い詰められた枢機卿は――

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「モラークス枢機卿。私の娘を従者にせよと?」

「え? あ……そ、それは、せ、聖女としての責務を果たしてもらうと言う意味で……」

 やっと自分がなにを言ったのか理解したようだ。だけど今さら顔を青くしても遅いよな。

 ミレニアム女王の魔力が纏まり始めている。早く謝らないとヤバいですよ枢機卿さん……。

「責務? いいですか? 私の娘は勇者に全身に火傷を負わされたあと、聖女の称号を剥奪され、奴隷として売られたと聞きました。事実ですよね?」

「それは……その、通りなのですが、怪我を負い、まともに歩けなくなりましたので仕方なくそうしたまでで、本来ならキャロラインの魔力量は他の聖女たちははるかに超えていまして、勇者の従者になるべきなのです」

「枢機卿ごときが私の娘を敬称無しで呼ぶとは何事ですか!」

「あ、も、申し訳ありません! こ、今後はキ、キャロライン王女殿下とお呼びします!」

 ここでやっと頭を下げた。……遅すぎだよ、ほらもう魔力が目に見えるほど手のひらに集まってるし……。

「……カサブランカ王。私は大変不快です。この不敬なものを即座に捕まえてはもらえませんか? でなければ――」

「……腹をくくるか。わかった、どちらにしても、同じことを思っていたからな」

「カ、カサブランカ王、わ、私を捕まえると言うのですか! 私は枢機卿ですぞ!」

「モラークス。我が国に常駐している枢機卿とはいえ、ここまで不敬なことをして無罪放免とはいかんのはわかるだろう」

 まあ、そうだろうな。完全にこっちのことを舐めた態度に話し方だったし。

「このことは教皇へ正式に抗議文を送らせてもらう。もっとまともな枢機卿を寄越せとな」

「くっ! それは教国への宣戦布告と、そう受け取られても良いのですか!」

「モラークス。お前は数多くいる枢機卿のひとりでしかないのだぞ? それも教皇候補にすら上がらないと自分でも知っているだろう」

 そうだよな。次期教皇候補は教国からは出てこない。まあ、外務大臣の代わりに各国へ派遣されている職員と同じだ。

 そんな職員が王や他の貴族たちに取っていい言動ではない。

「くっ! し、しかし勇者は解放してもらわねばなりません!」

「お前も勇者も教皇本人が頭を下げに来るまでは地下牢で生活してもらおう」

「そ、そのようなことが許されるはずがない! 魔王を倒せる唯一無二の勇者と、その任命者たる我々アザゼル神の使徒を牢に入れるなど本来あってはならないのです!」

「仕方なかろう。神の使徒でも罪を犯せば罰を受けねばならない。当然のことだ」

「こうなればっ! 勇者を解放して脱出するのみ! あなた方のことは全て教皇猊下に報告します! 覚えておきなさい!」

 モラークス枢機卿がいきなり走り出し、地下牢の入口を守る兵士に体当たりして倒した。

 速い! マジかよ! 身体強化を使ったぞ!

 そのまま兵士と縺れ会うように石造りの床を滑り、止まったところで兵士の腰にあった鍵束を手に取ると――

「モラークスを捕らえよ!」

「捕まるものですか!」

 地下牢に下りる階段に走り込むモラークス枢機卿。

 ヤバい。モラークスのスキルに時空魔法の転移があった。このまま行かせれば勇者を連れ出し転移で逃げてしまう。

 慌ててカサブランカ王が命じ、王たちを護衛していた内の二人が地下牢に飛び込んで行く。

 一瞬の出来事に、よく王は声を出せたなと、感心だ。まさかこんなことをするなんて、誰にも想像できなかった。

「緊急事態だ! 手の空いている騎士、兵士は地下牢に集まれ!」

 カサブランカ王は胸元のブローチに向かって叫ぶ。これで城内放送ができるみたいだ。

 詰所からも王様の声が聞こえ、中にいた兵士が駆け出してくる。

「モラークス枢機卿が地下牢の鍵を奪い地下へ逃げ込んだ! 絶対逃がすな! もし他の囚人たちが外へ出ていたならやむを得ん、殺すことも許可する!」

「俺も行きます! リズたちはここで待ってて!」

「ドライ! せめてイス様をお連れして! えい! ですわ!」

 首元から手を突っ込み、むんずとイスを掴み出し、走りはじめた俺に向けて投げてくれた。

『面白くなってきたわね! 行くわよドライ!』

「急ごう!」

 投げられた勢いのまま飛び続けるイスと同じく飛行スキルを使い、文字通り下り階段を飛び下りていく。

 走り下りる兵士たちの頭上を飛び越し追い抜いて長い下りの先にたどり着いた。

『あっちよドライ! ついてきなさい!』

「うん!」

 飛行スキルをやめ、少し前を飛ぶイスのあとを追いかける。

 両側に鉄格子の部屋があり、中には囚人がパラパラと入っている。

 どの囚人を見ても、ひと癖もふた癖も有りそうな顔つきで走り抜ける俺たちに視線を向けられ、中には――

「あら、可愛い子がこんなところに。お姉さんといいことしなぁ~い」
「ガキ! この鉄格子を開ける鍵を持ってきやがれ!」
「くひゅひゅひゅ。お、美味しそうな子供だ。くひっ」
「さっきからやかましいんだよ! 脱獄用の穴掘ってんだから静かにしやがれ!」

 ――と、声をかけられてるが全部無視して、先をみると、鉄扉の前で最初にモラークス枢機卿を追いかけた二人の騎士が扉を開けようとしていた。

 見たところ、扉には鍵がかかっていて開けられないように見える。

『ドライ! 扉をぶち抜くのよ!』

「それしかないよね! 騎士さんたち退いてください! 扉をぶち抜きます!」

 走る速度は落とさず極々小さな複合魔法の爆裂魔法を用意する。

「モラークスはこの奥です!」

「よろしくお願いします!」

「行きますよ! そーれっ!」

 ピンポン玉ほどの爆裂魔法を放つ。

「熱いので耐えてくださいよ!」

 騎士の二人は危険を察知したのか、扉から遠ざかり、石畳の通路に飛び込むように体を投げ出した。

 ドゴォォォォォン!
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