【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@

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第二章 原作開始

第91話 夜空の花を見る余裕

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 花火の本を読んで、発火ミスでの火事なら、落下した花火玉が窯などに飛び込んだからだとしか思えない。

 あとはただの火事だったか、考えたくないけど、誰かが火をつけたことになる。

 ならどうやるのが正解か……。やっぱり花火玉発火ミスを見つけたら回収するしかないよな。

 放火はさすがにないか。場所がわかればなぁ……原作でもどこが燃えたかは書いてなかったし、地道にやるしかないか。

 勇者は王都全域に瀑布魔法で水を降らせ消火したとしか書かれていなかったし……。

 消化後の復興でスラムの住民に仕事ができたからよかったんだけど……スラム民の仕事か……それも考えなきゃな。

 クリーク辺境伯領のスラムは上手く護岸工事とかで仕事ができたけど、王都だもんな、桁が違うし難しい問題だと思う。

 上手く大がかりな公共工事なんかがあれば仕事はいくらでもできるのに……。

 っと、それより今は花火の方に集中しなきゃ。

 ……上空から見るのもいいけど、やはり横から見る方が失敗を見つけやすいと思う。

 真上からだと、上がってきているのか、落下しているのか判断が難しいもんな。

 だからアンジーに一番高い場所で花火を見たいからとお願いして、良い場所を教えてもらった。

「いい眺めですわ。ドライの提案は正解ですの」

「そのようだな。城に住む俺でも下のバルコニーで見ていたのだからな」

 そう言いながら眼下で王様たちが優雅に酒を交わしながら談笑しているのが見える。

「この眺めを内緒にしていた屋上警備の責任者にはキツい罰を与えてもいいくらいだぞ」

 アンジー。そこは穏便にね。ほら、屋上警備の兵士さんたちが気まずそうにしているし、ね。

「ほら、あそこから上がるんだぞ。おっ、そろそろか? 動き出したぞ」

 アンジーが指差して言う通りあと少しで花火が始まるようだ。

 王都を見下ろす形で見る街並みは、屋台と街灯の灯りが綺麗で、露店で賑わう人々が見える。

 花火が上がるのは王都で二番目、王城の次に高い建物、中央広場にある時計塔だ。

 その屋上から打ち上がるんだが、打ち上げ場所に関しては少し街中過ぎないかなとは思うけど、例年通りらしい。

 生前で見た花火大会は河川敷や海岸、運動公園が会場だった気がする。

 前世の花火と違って、火が着いて打ち上がるんじゃないから、不発で落ちても、大丈夫だからなのかもしれないけど、中々のチャレンジャーだと思う。

 失敗したら石が落ちてくるんだろ? 人に当たらなければいいだろうけど、そのあたりどうしてるのか気になるな。

「アンジー、街の真ん中から打ち上げてさ、失敗して街中に落ちたらどうするんだ?」

「ドライ、良いところに気がついたな。花火玉が直撃した家にはその年の税が無料になるのだ」

 ん? 当たったら税金が無料?

「当然人にも当たることがあるが、その場合は十年の税が無料になる」

 えっと……もしかして当たることを期待してる人もいるってことか?

「ま、家は当たっても多少壊れることはあるが、当然補修代が出る。人の場合も治療費は出るぞ」

「ん~と、当たって死んだ人はいないの? 土魔法で固めたカチカチの玉だよね?」

「死者はずっと昔には出たらしいが、ここ十五年は確実出ていない。俺が知ってる建国祭の花火が失敗したのは十年前に王城の庭に落ちたくらいだからな」

「それだけ失敗は少ないってこと?」

「そりゃそうだ。打ち上げは1ヵ所だが、発火させる火魔法使いは王都中に配置しているからな」

「そうか、たくさんの人が発火させているから落ちるのはほぼ無いってことか」

「そうだぞ。王城の庭に落ちたときは時計塔に配置していただけで、広範囲に配置していなかったからな」

 アンジーの話を聞いていると、ドンドンドンドンと大きな太鼓の音が拡声の魔道具で王都に鳴り響いた。

「十年前に配置を見直してから落下したこともないから安心しろドライ。それより始まるぞ!」

 そうだ、集中しよう。なんと言っても、時計塔は教会所有らしい……怪しいよなぁ……。

 プシュ! プシュプシュ!

 空気の抜けるような音のあと――

 バーン! バンバーン!

 ――花火が始まったようだ。

「始まりましたわ! ふわあああ!」
「綺麗。こんなに連続で上がるのね」
「うんうん、今年も綺麗なのだ」
「ふえぇええええ……花火がほとんど真横に見えます」
「皆さま飲み物をお持ちしました」

 リズ、ファラ、アンジー、キャルが感嘆の声を出す横で、冷静に飲み物を配るカイラさん。

 でもやっぱり気になるのか、ちらちらと花火の方に顔が向く。

 俺は何発も連続で打ち上る、花火玉を追い、弾けるのを確めながら飲み物を受け取った。

 開始から数秒に一発から三発の花火が打ち上がる。このペースなら見落とすことはないだろう。

 だいたい三時間打ち上がり続けるそうだから、目が疲れそうだ。

 発火の担当がそんなに多く配置されたいると言っても、気は抜かないでおこう。

 みんな口数も少なく、夜空に打ち上がり、花が咲く様子をキラキラとした笑顔で見続けている。

 プシュプシュプシュ! プシュプシュプシュ!

 数が多くなったぞ! 今度は六発――

 プシュプシュプシュ! プシュプシュプシュ!

 ――どころじゃない! って!

 プシュ!

 一発、上ではなく、真横! それもこっちにくる!

 上空に上がり一度止まってから自然落下で落ちてくる花火玉とは違い、発射された勢いのまま貴族街に向かっている。

 行くぞ! 転移!

 最近覚えた時空魔法の転移で横向きに飛んでいく花火玉の前に出てストレージに収納。

「よし! 成功だ! って今度はあっち! 転移!」

 時計塔から横向きに、四方八方へ飛んでいく花火玉を、夜空の花を見る余裕もなく、回収作業が始まった。
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