【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@

文字の大きさ
101 / 139
第二章 原作開始

第96話 魔牛とたわむれる

しおりを挟む
「こ、こら、舐めるな、ぶっ飛ばすぞこのやろう」

「アンジー、魔牛も助けてもらって感謝してるだけだし、殴ったら駄目だからね」

 □□□□□□□
 □□□□□□□
 □□□■□□□
 □□□□□□□
 □□□□□□□ □=魔牛 ■=俺たち

 怪我を治した魔牛に囲まれた俺たちは、顔をこすり付けられ、舐め回されている。

「これじゃあ身動きとれないわね。ドライどうするの?」

 そう言うファラもペロペロと舐められている。

「捕獲するにしても、子魔牛と母魔牛を一緒にだろ? さすがにこの子たちを全員連れて行くわけにもいけないし」

「それより先ほど捕まえたものたちのことを、まずは王都に連行するのがよいかと」

「そうか、すっかり忘れてたよ。でも、あの人たちなにが目的なんだ?」

 刺客にしたら弱すぎだし、中途半端すぎる。鑑定でも教会関係者では無いとわかっているし……何者なんだろ。

「わかりかねます、が、知らなかったとはいえ、三王女を含む貴族の子女である私たちに剣を向けたのですから、軽い罰では済まないでしょう」

 カイラさん、いつも通りすました顔してますけど……髪の毛をムシャムシャされてますよ。

「……だよな。転移で王都に連れていってくるよ。ギルドでいいよな」

「はい。冒険者ですので、ギルドで采配してもらったあと、衛兵に引き渡され、罰を下される流れでよいかと」

 今度は両サイドから舐められてるし……。

「……わかった。じゃあちょっと行ってくるね」

 あっ、キャルは頭に顎乗せられてる……。

 リズはなぜか魔牛に乗ってるし……。

 魔牛ってこんなに人懐っこい魔物だったのか、そりゃ飼ってミルクを取ろうとするわけだ。

 転移で魔牛の囲いから脱出した俺は、気絶している男たちを連れて王都の冒険者ギルドに転移で移動した。

 突然現れた俺と、拘束された男たちを見て、冒険者ギルド内が騒然となったけど、騒ぎのお陰でギルドマスターを呼ぶ手間が省けた。

「なんの騒ぎだ英雄ドライ」

 冒険者ギルドのマスター、中々強そうな人だな。というか、暗殺ギルドのマスターでもあるのか。

「依頼途中で襲われたので、捕まえて連れてきたところです。って英雄ドライってなんですか?」

「カサブランカどころか大陸全土を救った英雄だからな。というか、英雄ドライを襲うとか、なにを考えてるんだコイツらは……」

「はぁ、そうなんですね」

「コイツらはとりあえず冒険者ギルドの資格停止だな。衛兵も呼んで調べてから処分の最終決定を決める。それでいいか?」

 ギルドマスターは爪先で拘束されて床に転がされてる男たちをつんつんと蹴っている。

 うん。妥当かな。犯罪奴隷で強制労働何年になるかわからないけど、しっかり罪を償ってもらおう。

「いや……英雄ドライが襲われたとなると、アンジェラ王女殿下も一緒にいたのか?」

「はい。いましたね」

 あと、グリフィンとミレニアムの王女もいたけど、言っちゃうと、極刑まっしぐらだよな。

 アンジーがいただけでもほぼ確定でギロチンだと思うけど。

「……こりゃ、資格停止どころか除名処分だな。王族に剣を向けた罪は重い」

「ううっ……なっ! ここはどこだ! あ、お前は!」

 ずっとギルドマスターが蹴っていた人が起きた。

「やっと起きたか。ギルドカードはどこだ……」

「ギルド、マスター? え? ここ、冒険者ギルド……どうなってんだ……」

 男の体をまさぐり、ギルドカードを探す人がギルドマスターだと気づいたようだ。

「ふむ。Cランクのザバネロか、とりあえずお前たちの冒険者資格は今をもって無くなった。除名だ」

「は? なんのことだよギルマス、俺たちが除名? ちょっとなに言ってるかわからないんだが」

「ああ、除名だ。アンジェラ王女殿下がいるパーティー超越者を襲うなんてな。なにを考えてんだお前ら」

「アンジェラ王女殿下? え?」

「先日パーティー超越者に絡んでいた報告も受けてる。良くて極刑だな」

「え? 極刑? いや、ちょっとドライってヤツを脅して依頼を失敗させろって……」

 ん? どう言うことだ? 依頼を失敗させる?

「お前、この王都にいて英雄ドライを知らないのか? 建国祭で陛下が紹介していただろ」

「英雄ドライ……まさか、だが、ヒ――」

 トスッ――

「ケフッ――」

 男の首に矢が刺さり、ゆっくりと倒れていく。

「なに! 矢を放ったヤツを捕まえろ!」

 あわただしくギルドにいた冒険者たちが武器を手にギルドを出ていく。

 矢の角度的に入口の正面から矢を放ったと思う。

 それも野次馬でごった返している中をピンポイントでこの男を狙える腕の持ち主だ。

 簡単ではない。おそらく捕まらないだろうな。くそ、イスがいれば追ってもらえたのに……。

 それよりこの男を、まだ生きている。回復させてさっきの続きを聞き出さないと駄目だと思う。

 おそらくこの男に依頼したものの名前を言おうとしていたはずだ。

 それに、『ヒ』から始まる名前……まさか……。

 考えるのはあとだ。今はこの男を回復させなきゃな。

 ナイフを取り出し、突き抜けている矢じりを――

 スパッ――

「英雄ドライ、お前なにを――」

 切り落とし、矢羽を握り、一気に引き抜いた。

 ブシュと血が吹き出して来たが、回復魔法と再生を同時にかける。

「回復魔法か! なら、残ってるものは追撃があるかもしれん! そこのお前とお前! それとそっちのお前らも手伝え! この転がってる奴らを奥の解体場に運ぶぞ!」

「この人も傷は治しました! 運んでください!」

 男たちが運ばれていくのを視界の端で見ながら追撃の警戒をしておく。

 その場にまだ残っている人たちも盾を構えたり、食堂のテーブルを倒して盾の代わりに身を隠し、警戒している。

 ……おそらく依頼したのは俺に恨みに近い感情を持っているヒエン王子。

 謹慎中だと思っていたけど、これはいくらなんでもマズいよね……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました

竹桜
ファンタジー
 誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。  その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。  男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。   自らの憧れを叶える為に。

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

処理中です...