【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@

文字の大きさ
112 / 139
第三章 原作崩壊

◆第106.5話 王子のしでかしたこと

しおりを挟む
「で、殿下!」

「なんだドルーアか。どうした、そのように慌てて」

 尖塔を走り上って来たのか、酷く息を切らせている。まさか、もうドライが依頼を失敗した知らせが来たとでも?

 その事に思い当たり思わず笑みを浮かべてしまった。

 いかんいかん。今は謹慎中だ。身の回りの世話をするものだけしかこの塔にはおらぬが、すべて父上の手の者。

 ニヤニヤしていては、なにを報告されるかわかったものではない。

 ここは自重して、真剣な顔を作っておくか。

「はぁ、はぁ、はあ。殿下、あなたはなにをなさったのですか」

「なにを、だと?」

 なんだ、雲行きが怪しい。険しい顔のドルーアが私が責められていると物語っている。

 ……まさか、魔牛の嫌がらせが失敗し、それがバレたと言うのか?

 ……いや、失敗もバレることもあるわけない。

 事前にドライたちが請けると仕入れた情報。あのチーズが絶品のフェリル村の魔牛捕獲依頼だ。

 ほんの少し邪魔をするだけで、依頼が失敗する可能性が高いものだからな。

 魔牛のことはチーズのことを調べ把握している。攻撃を加えれば簡単に暴走する魔物だ。

 ドライが魔牛の高原へつく前に、ありったけの魔牛に怪我を負わせるという簡単な仕事。

 失敗などするわけがない。それも信頼のおける勇者アーシュとパーティーを組んだこともある冒険者たちだ。

 そのような腕もたしかで優秀な配下に任せたのだからな。

「今、殿下の派閥の貴族たちが集められております。それも強制召喚命令ですよ殿下! 私に黙ってなにをなさったのですか!」

「なん、だと……私の派閥の貴族たちが……強制召喚……」

「もちろん殿下の派閥だけではありません。王都はもちろん、他の領地にいる貴族たちにも任意での召喚命令が出されました」

 どう言うことだ……。なにがあった……ドライの邪魔をしただけだぞ。

 最悪失敗した時のために、もったいないが配下の口封じについて、慰問に来た馴染みの司教に頼んだのだ。

 ならば喋るものもいないなら、派閥のものが呼び出されることはない。

「ドルーア。私には身に覚えが――」

 いや、もしや配下の冒険者の中に貴族の令息がいたのか?

 ……だが冒険者をするような三男、四男の令息の失敗で貴族当主が呼び出されることなどないだろう。

「――うむ。どう考えてもないぞ。ドルーア」

「はぁ、それを聞いて安心いたしました。またドライ様たちに派閥の貴族たちを使い何かしでかしたのかと」

「は? ド、ドライのことなのか?」

「で、殿下……ま、さか何か……」

「……いや、その、だな……ほらっ、ちょっと恥をかかせてやろうと依頼を、だ、な……お、おい、ドルーア、な、なぜ怒っている」

 顔を真っ赤にして、震えるドルーア。ドルーアのこのような怒りを露にした顔などはじめてだ。

 バンッ! とローテーブルを両手で叩くドルーア。

 その衝撃で置いてあったティーセットがカチャガチャと音を立てた。

「……殿下……誰に何を依頼したのかすべてお話しください。良いですか。すべてです」

 ドルーアの怒りのこもった目に圧倒され、すべてを話す。

 今回の魔牛のことだけでなく、おそらく貴族たちが呼び出された原因。ドライを貶める噂を流すように派閥の貴族たちに依頼していたことも。

 暗殺をほのめかせていたことは、さすがに口には出せないが……。

「なんと言うことを……ドライ様について、あれほど陛下に手を出すなと、ご注意いただいておりましたのに……」

「い、いや、だが、な、あのものは妹や、ミレニアム女王国の王女までだな――」

「そちらも手を出すなとご注意くださいと何度も! まさか……」

 震えるドルーアに合わせてローテーブルのティーセットがカチャカチャと鳴り続ける。

 これは駄目だ。本気で本気の本気だ。

「何をなさったのです?」

 コテリと首をかしげ、笑顔なのに目が先日深夜、密かに会った『首狩り』と同じ目をしていた。

「ファ、ファラフェル王女とエリザベス嬢に、ドライと婚約破棄を進めるよう手紙を送り、ました。あと、その二人とカイラ嬢にも求婚状、を……」

「……そう、ですか。殿下、お仕えさせていただくのもここまでのようです。では、失礼いたします」

「ま、待てドルーア! それはどう言うこと――」

 ドルーアは振り返りもせず、部屋を出て、扉を閉めた。

「お、おい! 待たぬかドルーア!」

 ソファーから立ち上がり、扉の前まで行くと、ガチャンと開けっぱなしであった扉の鍵がかかる音がした。

 そしてドルーアの――

『鍵をかけました。陛下の許しがない限り誰も通してはいけません! お世話係もです! 良いですね!』

 ――扉の前を護る騎士にそう言い残して、遠ざかる足音が聞こえた。

 まずいぞ。これでは最悪幽閉後に廃嫡も……駄目だ。私はこの様なところで終わって良いようなものではない!

 なにか、なにかないか、ここから逆転できるような秘策はないのか!

 考えろ、私は王子だぞ。廃嫡で平民になどななってたまるか! なんとか逃げ出さねば!

 ……っ! そ、そうだ、司教が持ってきたアレがあるではないか!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

処理中です...