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第1章

第18話 冒険者見習い ①

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 跳ね橋を渡り、橋の下の堀を眺めたり、後ろを振り返り出てきた門を見上たりしながら俺達はお城を出た。

「君達二人には大変申し訳ないと、王や、この国全ての民に代わり謝罪する。本当に申し訳ない」

「私達にはこの程度しかできないが、しばらくはなにもしなくても生活できる程度は入っているはずだ」

 城の外まで案内してくれた騎士さんは、ちょっと重そうな革袋を差し出してきた。

『イル、受け取ってくれる?』

『はいですの! お任せ……パンで手がふさがってますの……アカネ、お願いしますの』

『あはは。うん、イルちゃん』

 茜ちゃんが騎士の一人から革袋を受け取ると、その人は回れ右をして跳ね橋を城に向かって渡り始めた。

「冒険者ギルドで身分証を作れば身分は保証されます。まずは大通りをまっすぐ行けば王都から出る門があり、そこの門前広場にギルドがあります……どうかご無事で、頑張ってください」

 もう一人もそう言った後、俺達に背を向け跳ね橋を渡っていった。

「ふう。とりあえず王城からは無事に出れたね。この後――」

「そ・れ・よ・り! 友里くんなぜスライムさんなのですか!」

 ここに来るまで念話でお話して、イルの事や俺の事を話してなんとか納得してくれたと思っていたんだけど……まだ納得はしてなかったようです。

「ユウリは凄いスライムなのですよ? だめなのです?」

『あ、茜ちゃん、イル、あまり声を出してこんなところで喋ることじゃないし、冒険者ギルドに向けて歩きながら念話にしようか』

 俺が念話でそう言うと、二人は手を繋ぎ、歩き出してくれた。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 王城を離れてそろそろ一時間。
 遠くに街を取り囲むようにある壁が見え、道の先にその壁がくりぬかれたような門が見えてきた。

 茜ちゃんとイルに召喚される前、ロリっ子のところから一つずつ説明していくと。

『クラス全員と言ってましたから、やっぱりあの時いたのですね』
『ロリっ子? 私には光の玉にしか見えませんでした』
『召喚されたら大人しくそこの人達について行くように言われてました』

 と、話と途中でつっこまれながら分かった事は、茜ちゃんと俺とはロリっ子の見た目から、話の内容までまったく違うという事が分かった。

 そして俺の妄想したスキルなんかを面白がって全部詰め込まれ、体がスライムかドラゴンしか無理だと言われ、種族選択がスライムしかなかった事を話した時、剣が✕の形をした絵が描かれている看板を見付けた。

 そこで不味いことに気が付いた。

『イル、はイルで登録した方が良いよね? そうじゃないと身分証がないのと同じだし』

『おお! 冒険者になりますの! 冒険者がどんなのか分からないですがアカネと一緒ですの!』

『ん~、そうだね、友里くんがくっついてないとその姿になれないのですよね? それじゃイルちゃんも不便だし良いと思う』

 賛同を得られたと言うことで大通りから少しだけ路地に入り、人がいない事を確かめてから幻影ミラージュを解除したんだけど――!

 ほとんど体を隠す布がない、悪の女幹部が着るような黒い水着らしき姿になったイルが現れた。

『忘れてたぁ! あ、茜ちゃん、とりあえずえとえとこれとこれきせてあげて!』

『友里くんこれはオマワリさん呼ぶ案件! ギルティですよ! 早く服を寄越してください!』

 よく考えたら靴も掃いてないじゃん!
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