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第1章

第25話 王座に座るものは ①

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「カネタニ様! ここから先は困ります! どうか――がっ!」

 ドガッと大きな扉の前で金谷を止めようとした騎士が蹴り飛ばされる。

 騎士は飛ばされた勢いで護っていた扉に当たり、その勢いで扉が片方だけ開いた。
 騎士はその勢いのまま、貴族達が立ち並ぶ間を抜けて部屋の中央にまで飛び、床に落ちたが何度かバウンドした後滑り、王様が座る王座前の階段のところに当たり止まった。

「な、何をしておる! その者を取り押さえよ! 王の御前だぞ! 近衛達は王を護れ!」

「やかましい! テメエらが渡したこの腕輪を取りたいだけだ! 王様に直接聞くからよ! ゴチャゴチャ言ってっと全員シバき倒すぞオラッ! ――ダリャッ! 逃げんじゃねえぞ王様!」

 金谷のやり方は乱暴すぎるけど、拳聖なだけあって、殴る蹴るの威力もそうだが捕まえようとする騎士達の事も余裕をもって躱し、強烈な一撃を入れて吹き飛ばしている。

 その吹き飛んだ騎士達は、貴族達にぶつかり巻き込んでこの広い部屋、三十メートル四方はある壁まで中央付近から飛ばされ動かなくなるほどだ。

 階段上の王様は騎士達に護られているが、表情さえ変えず、王座に座ったまま……。

 絶対におかしいよね……これは、鑑定!

 ――――――――――――――――――――

 王のホムンクルス 王の影武者。
 自我無し。

 傀儡の腕輪 傀儡の腕輪を嵌めたものは、傀儡のネックレスを装備した主により言動から体の動かし方まで全て操られる。

 ――――――――――――――――――――

 おいおい、この王様偽物じゃん。
 ホムンクルスって確か錬金術で造られる人造人間だったはず。
 それに傀儡の腕輪か、じゃあ操ってる人が傀儡のネックレスを持ってるはずだよね。

 ならまずは腕輪を取るのと、高いところからあたりを見て、ネックレスを探すのもありだ。

 動き回り騎士達を殴り飛ばしながら少しずつ前に進む金谷の体から飛び下り、素早く王様のところに移動する。

 途中何度か踏まれそうになったが、今の俺は一センチしかないのと、金谷が騒いでくれているから見付かることもなく階段を上り、ホムンクルスの王様に取り付いた。

 足を登り、王座のひじ掛けに乗せている腕に到達したが――っ!

 ――ネックレス!

 王座の斜め後ろに立っていて、フードを被ったおっちゃんが、首からかけたネックレスをカタカタ震えながら握っているのが見えた。

 あれだ! 鑑定! よし、やっぱりだ! それにどことなくホムンクルスと似てるなと思ったら、ホムンクルスとそっくり……ってか本物の王様がホムンクルスを操ってるじゃん!

「オラ! 王様よ、俺達に配った腕輪を外しやがれ!」

「ふむ。ここで生きていこうとするならば、必要なものだ」

「んなこと聞いてねえんだよ! 俺は外せと言ってるだろうが!」

 表情すら変えず、抑揚の無い言葉で金谷に答えるが、騎士達を倒してしまったから遮るものもなく、凄い勢いでこちらに向かってくる。
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