【完結】無自覚最強の僕は異世界でテンプレに憧れる

いな@

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第二章

第36話 護衛依頼を請けましょう♪

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「うわっ! おじさん大丈夫ですか! テラ、具合はどんな感じなのか見てくれる!」

 おじさんに走りより、テラにしっかり見て貰おうと走りよります。

「良いわよ! んん神眼~! ほっ、大丈夫よ。少しヒビが入っているだけだから、ライ! やっておしまい!」

「うん! おじさん、今から治すからね。回復! ほいっと!」

「んぐっ!」

 ちょっと痛がりましたが、優しくおじさんの背中に手を添え、辺りから魔力をぐるぐる集めておじさんに掛けていきます。

 鬱血うっけつしていた背中が徐々に肌色に戻って来ました。

「良いわよ、ヒビはちゃんと引っ付いたわ。後はその青くなったところだけね」

 まわりに人が集まっていましたが、取り敢えず怪我は治りそうです。

 そして五分もかからず鬱血の部分が小さくなり点になって、消えました。

「はい♪ 治りましたよ、他に痛いところありますか?」

「なんと! 痛みが完全に無くなったぞ!  坊主、助かった、あの痛みのまま馬車に乗るのは辛かったからな、感謝するありがとうな」

 怪我してたおじさんが、こちらを振り向きお礼を言ってくれました。

 ってか、それよりドワーフさんでした。

 髭もじゃで、立ち上がると僕より少し背が高いくらいですが、それはもう腕もですが全体的にゴツゴツマッチョさんです。

「あははは♪ いえいえ、骨にヒビが入っていてあの振動は辛いですからね♪ よし、商人さん、僕は乗り合い馬車のおじさんに護衛のお仕事を請けたって言ってから戻ってきますね」

 振り向くと、驚きで固まったのは、治ってましたが、なにやらぶつぶつ言ってますね。

「······ふむ、回復魔法が使えるのですね、素晴らしい! ······おっと、そ、そうですね、そちらの方に報告しておかないといけません。お待ちしながら馬車の修理を進めておきます」

「はい、ではのちほど」

 街道脇に馬車を寄せたので、後続の馬車が早速動きだし、追い抜いて行ってます。

 乗っていた乗り合い馬車も、こちらに進んで来ていたので、思ったより早く合流する事が出来ました。

「飛び乗るからこっちおいで。行くよ~、ほいっと!」

 馬車の後ろに回り込み、ぴょ~んと荷台に飛び乗りました。

 一緒に乗っていたお客さんに、ペコリとお辞儀しながら、荷台を前に進み、御者台にいるおじさんに、降りる事を話さないとね。

「おじさんただいま」

「あははは♪ 元気だな。前は何があったんだ?」

「商人さんの馬車で、馬車の車軸が折れて横倒しになってました。荷物を街道脇によせて、馬車もよせて、そして道を開けました」

「ほう、それにしては早かったな。てっきりここで夜営になるかと心配していたが」

「あははは、それは馬さん達が辛いですね、お水も調達が難しいですから。回避出来て良かったです。それでですね、その馬車の商人さんに護衛のお仕事を貰ったのでこの乗り合い馬車を降りることになりました」

「なんじゃ王都から一緒だったから寂しいな。まあ、明日に到着の所まで来ているからな。一日別れが早まっただけだが、だか料金は貰っておるし構わないのか?」

「その馬車なら僕が行きたいって言ってました東の森の手前まで行くそうなので、ちょうど良いかなって。残りの料金はおじさんのお小遣いにして下さい♪」

「うむ、それは良かったじゃないか、護衛の報酬も貰えるわけだ。ライ君、王都から十二日ほどだが楽しかったぞ。あははは♪ 子供にお小遣いを貰うとはな、到着した時の楽しみに酒でも飲む事にするよ」

「はい♪ 僕も楽しくさせて貰いました。では、ここで降りますね」

 ちょうど、倒れた馬車の所まで来たので飛び降り、おじさんに手をふります。

 おじさんも軽く手を上げ、「またな!」と声を掛けて遠ざかっていきました。

 その後、馬車の修理が終わって、荷物を積み、走り出した時にはもうお昼も過ぎて、今日中には夜営予定地には到着出来ない時間でしたので、この九十九折の登り唯一の夜営地に向かう事にしました。

 そこは元々徒歩の旅人や、この馬車のように今日中に山頂の夜営地にたどり着けない者達用で、湧き水がこんこんと湧き出る泉があり、馬さんも僕達も安心です。

 途中何人か徒歩の人達を追い抜き、ようやく今夜の夜営地に到着しました。

 僕達はテントを準備する者と、焚き火で夕ごはんの準備をする者に別れます。

 僕は自分のテントを張った後、夕ごはんのお手伝いに。

 暗くなる前にはテントが馬車を囲むように夜営準備が整い、僕が提供したオーク肉のシチューも完成しました。

「ライ君、シチューのオーク肉を提供していただいたようですね。ありがとうございます」

「商人さん。沢山あって僕だけでは食べきれませんので気にしないで下さい。それより僕は見張りをしなくて良いと聞いたのですが良いのかな?」

 ドワーフのおじさんが、『今日のお礼だ』と言ってくれたのですが、申し訳ない気持ちもあります。

 それにこの護衛依頼を請けている者達の護衛と兼ねて、試験官として付いてきているそうです。

 聞くとビックリ、何と護衛依頼を請けていないとCランクにアップ出来ない決まりがあるそうです。

 なのでやり方を教えながら今回の依頼を請けているんだとか。

 そしてそのランクアップのための護衛を請けているのが、異世界転移してきた男性、僕よりは年上で兄さん達よりは年下かな? その人達の五人組だそうです。

「はい。あの方はAランクで、他の五人の指導をしながら付いてきたのですよ。本来ならAランクの方を護衛に雇おうとすれば大金が掛かりますので。あの怪我も投げ出された子をかばって背中で落ちてきた木箱を受け止めたのですよ」

「おお! 名誉の負傷ですね♪」

「名誉でも何でもないぞ、俺達を護るのは当たり前の事だ」

 このお兄さんは何を言ってるのでしょうか?

「俺達は異世界転移者で、必ず強くなる事を約束された英雄! 勇者! 最初の成長を乗り越えるまではこの異世界のNPCどもは俺達を護るのが当たり前なんだよ!」

 えぬぴーしー? 何なのでしょうか? 僕もそうなのでしょうか?

「おい、ガキ! テメェアイテムボックス持ってるから俺達のパーティー専属にしてやるぜ、そうだな、一月ひとつき大銅貨で雇ってやるよ。ありがたく思いな!」

「えっと、嫌ですが」

 お兄さん達は僕の返事に驚いて、固まっています。

「僕はいろんな所に旅をしたいので、それには付いていけませんよ」

「何! NPCが口答えすんな!」

「おい! 貴様らその様な態度ではこの護衛依頼は無効だぞ! 異世界転移か何か知らないが、そんな事を続けていれば、一生Dランクから上がらんぞ!」

「何だと! クソジジイ! こんな長ったらしい依頼なんざ請けるのも嫌だったんだ! 明日の町で終わりだ、その後は好きにさせて貰うぞ! みんな行くぞ!」

「けっ! クソだな」「ギャハハ♪ テメエが言うなよ。護って貰ったのによ♪」「おらおら、あっちで酒でも飲んで寝ちまおうぜ」「クソガキは荷物持ち忘れんなよ!」「俺もアイテムボックスほすぃ~♪」

 何なのでしょうか? 護衛のお仕事を請けているのに夜営でお酒は駄目だと思うのですが。

「坊主すまないな。奴らはあれでもそこそこ強くてな、ギルドから頼まれているんだ。だが······あれではな」

「あはは♪ 大丈夫です。僕から見てもあれはダメダメです」

「う~む。往復の護衛のお仕事を頼み、この三日間を見てきましたが帰りは違う者をお願いしようと思います」

 じゃあ領境の町からなんだ。

 あんな態度ではよっぽど気の良い雇い主でもお断りするでしょうね。

「それが良いだろう。護衛中に酒なんぞ飲みおって、俺の事は最後まで雇って欲しいがな」

「はい。後数名追加で貴方と帰りの護衛を頼むことにします」

 しばらく、おじさんに護衛の仕事のやり方を教えて貰ったり、商人さんが計算を教えてやろうと言ってきて、問題を僕がすらすら答えて、商人に誘われたりしていたのですが、一時間ほどでお兄さん達はどんどん酒をあおり、焚き火の側で寝てしまいました。

 お酒弱いのにあんなに飲んじゃうし、それから見張りをしなくちゃダメなのに寝ちゃうなんて、本当に護衛の仕事を何だと思っているのか分かりませんね。

「おじさん僕も夜警しますね」

「はぁぁ、お礼に今晩だけはと思ったが、すまないが頼めるか? 俺が先にやるから、坊主は先に寝てくれ」

「はい、分かりました。では寝ちゃいますね」

 テントに入り、お布団に潜り込んで、一応ぐるぐるして近づくものがいたら気付けるようにして目を閉じました。



 どれくらい経ったのか分かりませんが、僕のテントに近付く気配で目が覚めました。交代かな?

 起き上がろうとした瞬間誰かがテントの入り口を開けた。

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