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蒼さん。
しおりを挟む泣きじゃくる僕を
翔センパイとヨシが抱き締める。
それでも僕の興奮は止まらない。
会場のスタッフが駆け寄る。
そのうちの一人が僕の頬に手を寄せた。
「美波くん、あっちに行こう?」
優しい声に目を向けると
水族館で出会った
お兄さんだった。
翔センパイに抱えられて
お兄さんの後を進んだ。
入った部屋は応接室のような所だった。
ソファに僕が真ん中で3人で並んで座った。
ヨシがぼくを抱き寄せてくれた。
僕は素直にヨシに身を預けた。
翔センパイが僕の頭を撫でてくれて
手を握った。
お兄さんはあの時と同じように
名刺を差し出してきた。
翔センパイが受け取る。
「蒼さん……お会いできて嬉しいです。
でも まず
スミマセン。迷惑かけちゃって。
ちょっと今、クスが……」
今まで僕を支えてくれていた翔センパイが
泣き出した。
僕の手を強く握る。
「蒼さん。
俺、
ゴールした3人のウチの1人で吉岡です。
キレイな写真嬉しいです。
ありがとうございます。」
「イヤ、こちらこそ ありがとう。
すまないね。
少し吉岡君の顔も入れてしまって……
君には承諾を得られてなかったから
でもどうしても、あの一枚は外せなかった。
今更だけど展示しても?」
「もちろんです。
蒼さん、混んでて時間をかけてしっかり
見れてないんですけど もしかして
全部、クスですか?」
「そうだよ。」
「あの小さい子供も?」
「そう。
あれは僕が初めて賞をとった作品で
偶然撮れたモノ。
今回、個展を開くのに悩んだんだ。
全部、義弥くんなのにアレだけって……
ちょうど打ち合わせに来た義弥くんが
『あっ なっちゃん』って大きな声を出して
駆け寄って来た。
義弥くんは、最近物静かだったから
スゴく驚いたよ。
『蒼さん、コレね 俺の初恋の子なんだ。
なっちゃんと俺だよ』
嬉しそうに瞳を輝かせてた。
僕の悩みは偶然にも解決。
だってアレも義弥くんだし。」
少し落ち着いた翔センパイが口を開いた。
「蒼さん、クスのこと聞いてますか?」
「ああ。栞菜さんから連絡もらった。」
「驚かないんですか?」
「うん。
何となく……
何となく様子おかしかったから。」
蒼さんは僕たちの前に
写真集を置いた。
「最後のページ見て。」
そこには蒼さんと義弥の
対談形式のコメントが載っていた。
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