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精霊の秘密

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「あの、何かしら…?」

「あなたがあんな事をしようとした理由を話すまで、ずっと睨み続けてるんです!」

「はぁ…そう、好きにしてちょうだい」

 砂浜に座ってボーッと海を眺めるアイルを、リアスはじっと睨んでいた。あれから特に何も起こらず、ずっとこの状態を維持している。
 というのも、アイルは最近ナギサを避けていたので、契約者の魔力を貰っていなかった。今ここで転移でもすれば、精霊である自分の生命すら危ぶまれるのだ。

「そんなに見ても、私は何も言わないわよ」

「なら、言うまで見続けます」

「あっそ」

 ただでさえ魔力が少なくなっているせいで気怠いのに、リアスの事を構っている余裕などなかった。

「あの…」

「何?」

 ふと視線を向けると、リアスは先程とは一転して心配そうな表情になっていた。表情の変化が激しいな、とどこかで思ってしまうほどだ。

「大丈夫ですか?顔色が優れていないですし、汗もかいてますけど…」

「あぁ…汗じゃないわよ、コレ」

 額に浮かんでいる雫を指ですくい、リアスの目の前に差し出す。アイルの行動に、リアスは理解していないのか首を傾げた。

「えっと…?」

「舐めてみなさい」

「えぇ?!べ、別に私汗フェチとかでは…」

「何馬鹿な事言ってるのよ。いいから、ほら」

「んぐっ」

 アイルは半強制的に指をリアスの口に突っ込んだ。リアスは突然の事に苦しそうな表情をしたが、すぐに目を見開いた。

「これってもしかして…海水?」

「そう、私の体は殆ど海水で出来てる。それが蒸発しようとしてるだけよ」

「蒸発って…何故ですか?」

「もうすぐ消えるからよ」

「……えぇ?!」

 あっさりと言い放たれたその言葉に、リアスは思わず驚いて上体を仰け反らせた。



「アイルがいない?」

『ブモ…』

 俺の目の前で、アイルの飼っていた牛は悲しそうに頷いた。
 朝起きて扉を叩く奴がいると思ったら、牛が慌てた様子で扉の前にいた。そして器用に魔法やジェスチャーを使いながら、アイルがいなくなった事を伝えてくれた。

「あの洞窟に帰ってるんじゃなくてか?」

『ブモッ』

 サイはぶんぶんと首を振るあたり、どうやら本当にいなくなったらしい。
 とりあえずリアスに外出を伝えに行ったが、部屋に行くとリアスもいなくなっていた。

「どうなってるんだ…」

 一旦外に出てあちこちを走り回って探したが、2人の姿はどこにも見当たらない。アイルはともかく、リアスは人間なので海に出れるはずがない。

(2人で買い物か?いや、だとしても一声かけていくはず…)

 あのリアスが何も言わずにいなくなるなど考えられなかった。

「どうかしたんですか?」  

 なんだか嫌な予感がしていた所で、牛乳の入った樽を持った二葉が歩いてきた。

「アイルとリアスがいないんだ。心当たりないか?」

「う~ん…わかりませんけど、どこかにお出かけなんじゃないですか?」

「いや、リアスが俺に何も言わずに出て行くとは思えない。長い付き合いだからな」

「なるほど」

「どうなってるんだ、全く…」

「あの、ナギサさん!」

「ん?」

 二葉は樽を置き、何故かモジモジし始めた。トイレにでも行きたいのだろうか。

「その…最近、変わった事なんかありませんでした?例えば、ソフィ…誰かに睡眠薬を盛られたとか」

「は、はぁ?何言ってるんだ?」

「で、ですよね!気にしないでください!」

 やけに慌てた様子で俺の横を通り過ぎようとする二葉の手を掴み、その場に留まらせた。

「待て」

「な、なんでしょうか…?」

「何か隠してないか?」

「え、そ、そ、そんな事ないですよ~?」

 俺の問いに、二葉は目をキョロキョロさせ汗を流しながら答えた。ここまで隠し事が下手な奴は初めて見るかもしれない。

「そういえば、さっきソフィアって言いかけなかったか?」

「ま、まさか~…」

「この前、一姫にも聞かれたんだよな。『二葉がソフィアの何かを探ってる』って」

「え?!なんで一姫が?!」

「嘘だよ。で、本当はソフィアの何を探ろうとしてたんだ?」

「その…それは…」

「もう、あれほど上手くやってって言ったのに」

「「え?」」

 声のした方に2人で振り向くと、少し呆れたように笑う一姫がいた。
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