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第9章
第152話
しおりを挟む「ゔぁ……あっ……!」
「んーーー!!んん!!」
深夜、研究室の一室でサナは椅子に縛られ、口にタオルを詰め込まれていた。目の前では、妹のナナが椅子に縛られ体に電流を流されている。
サナが泣きながら呻くと、スナッチは装置の電源を落とした。
「もう、陛下から副団長君を見張っておくよう指示があったはずよ?なんで見失ったりしたのかしらぁ…。」
スナッチはぼやきながら、再び装置の電源を入れた。ナナの体が痙攣し、サナはその光景に目を閉じた。
「ダメよ、サナちゃんには精神的な拷問をしてるんだからちゃんと見ないと。」
そう言って、スナッチがサナの方に近づいた時だった。
部屋の扉が勢いよく蹴飛ばされ、大きな音が辺りに響いた。部屋の前には、ウサピョンが立っている。
「あら、ウサギちゃんどうしたの?今この娘達が任務に失敗したから、拷問してる所なんだけど?」
「その必要はないぴょん。」
ウサピョンはスナッチを押しのけ、椅子の電線を切り裂き2人を解放して両脇に抱えた。
「まぁいいけどね。そういえばウサギちゃん、あなたの手術だけ終わってないのだけれど明日でもいいかしら?」
「…わかったぴょん。」
「そう。」
スナッチは飽きたのか椅子に座り、ウサピョンは2人を連れて部屋を出て行った。
2人を王城の部屋に寝かせ、ウサピョンは部屋を出て行こうとした。が、サナがその腕を掴んで止めたので、ウサピョンは椅子に静かに腰かけた。
「なんで、助けてくれたずら…?」
「たまたま通りかかっただけだぴょん。大丈夫?」
「おらは別に…ナナが…。」
「大丈夫だぴょん、明日には元気になってると思うよ。」
「うん、ありがとう。…うさぴょんは…皇国の敵ずら?」
「…どうだろう。でも、お嬢ちゃんは今のままでいいの?」
「わからない、私達は拾われた身だから、コレしかないと思ってるずら…。ナナと一緒にいれるなら、おらはそれでいい。」
「お嬢ちゃん、世界は思っているよりも広い。自分の選択が必ずも正しいわけでもないし、間違ってるわけでもない…状況に応じて、よく考えて行動できるようにね。何か困った事があったら、お…私に伝えるぴょん。」
うさぴょんの言葉に、サナは安心したように笑って小さく寝息を立て始めた。うさぴょんは2人の頭を撫で、立ち上がった。
「すまないな、お嬢ちゃんたち…。」
部屋を出て行く時に洩れたその声は、普段の女性の声とはかけ離れた男の声だった。
「そんな事が…。」
陛下が滞在している部屋で、俺は今日聞いた事を報告した。陛下とカイザーはその内容に、目を見開いている。
あの後、ヨシノにベルベットの事を話しその日は解散となった。あくまでだが、可能性の話をした時、ヨシノは今までにないくらい怒りを露わにしていた。
スサノオ達は図書館である程度調べられたようだが、特に新情報はなかった。
「それより、その分隊長は今どこに?」
「先程部屋を訪ねましたが、どこにもいませんでした。」
「そうか…。」
カイザーは何かを考えているようで、陛下も困ったような表情をしている。
「やはり、皇帝陛下に直接話をつけたほうがいいのでしょうか?」
「それで聞くような人とはあまり思えんな。ここ数日一緒に過ごす機会が多いが、あの青年はなんというか…危うい。今にも崩れそうだ。」
とりあえず陛下が明日話をするという事になり、報告は終わった。
「陛下、王国の方が地下街であの人と接触したようです。」
同日、王城の一室でフロストはテオスの部屋にいた。テオスはワインを飲み、城下を見下ろしている。
「確かその仕事は、うさぴょんとサナ達に頼んでたはずだけど…。」
「うさぴょんさんは地下で取り逃がし、サナさん達は地上で会う事も出来なかったと。」
「そっか、まぁいいけどね。」
テオスはグラスを置き、デスクの資料を眺めた。
「全員の手術はどうかな?」
「誰も異常は無いとの事です。明日うさぴょんさんの手術を終え、準備完了かと。」
「複製戦士の製造はどうなってる?」
「各将神に20体ずつ、計160体の製造は既に完了しています。」
「じゃあ少し早いけど、明日始めようか…。」
テオスの提案に、フロストは少しだけ眉をひそめた。
「ですが、 まだうさぴょんさんの手術が終わっていませんし、何より王国の方達が…」
「だからこそだよ。亜人族と似てるけど魔法の使える種族…それを初戦闘で倒して、世界にボクらの存在を示そうよ。」
「…かしこまりました。他の方達にも、そのように伝えておきます。」
「ありがとう。」
フロストが出て行き、テオスはベットに背中から倒れた。そしてロザリオを握り、目を閉じた。
地上から遠い、遥か上空に大きな島があった。島の周りにはふかふかの雲があり、その端っこで1人の女性が横になってタロット占いをしていた。
女性はカードをめくり少し驚いたが、すぐに嬉しそうな顔になった。
「…そろそろですわね。頑張ってください、レイ様。」
女性はそばに置いていた神獣鏡の縁を、愛おしそうに撫でた。女性が撫でると、鏡は少しだけ虹色に光ったがすぐに光は消えていった。
「フリーエル様、こんな所にいらしたのですね。」
いつの間にか、女性の後ろには大きな翼を持つ男性が控えていた。
「あら、見つかってしまいましたね。」
「また占いを?」
「えぇ、少し気になる事があって。」
「小さい頃から相変わらず、変わった趣味をお持ちで。」
「むー…いいじゃない、私の占いは結構当たるんですよ?ほら、随分前の世界会議でも当てた事覚えてる?」
「ありましたな…今と同じくらいやんちゃだった貴方が、城を抜け出してー」
「その話はもういいの!もう…」
フリーエルは頬を赤らめながらカードと鏡をしまい、男性と島の中心へと飛んでいった。
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